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第一章 序章
14話 グラッドの力は推し量れない
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「まずは試験の申請をしましょう」
ティアナに連れられて申請場所へと移動する。
申請場所といっても広場に設けられた小さなテント小屋だ。そこに長テーブルがあり、受付が三人。
試験の申請書に記入していく。
名前の他に住所や記載項目は多岐にわたる。
名前だけを埋める。後は隣で黙々と申請書に記入しているティアナのものを、丸写しだ。
ほどなくして受付が締め切られると、入学希望者は広場に集められた。
同年代ぐらいの男女が二百人ほどはいるだろう。
親たちは石段調の観覧席から、我が子を応援している。
さながら体育祭の様相だ。
「グラッドさんは何番ですか?」
「ん?」
「受験番号ですよ?」
試験申請の際に割り振られた受験番号。
虚偽だらけの申請書の写しには、
「60番だ」
「じゃあ、離れ離れですね。私は206番なので。それではお互い頑張りましょ!」
ティアナはそう言って、自分が受ける試験場所へと駆け出した。
陸上競技場ほどの広い広場の四隅には、色分けした旗を掲げたテントが4つある。
なにせ受験生の人数が多い。4つのグループに分かれて試験が行われるようだ。
俺は『1番から60番』と、記された赤旗のテントに移動した。
「大丈夫かな?」
俺は心配になって、観覧場となっている石段に目をやった。
石段の最下部。タームはちゃんと大人しく座っている。
少女は案の定、紙袋を大事そうに両手に抱えていた。買ったばかりの洋服を奪われないかと、警戒でもしているのだろう。
大鐘が鳴らされる。ゴーンという重低音が大気を伝わって腹に響く。
その合図をもって試験は始まった──。
†
†
「次、55番」
番号が近づいてくる。
「では、始めなさい!」
試験官の合図。
当該番号の受験生は重心を整えて構えた。
大柄の少年だ。
少年は気合の掛け声とともに拳による打撃を繰り出した。
「55番、魔力値128」
試験官がそう告げると、周りの受験生たちはざわついた。
どんな仕掛けなのか、魔法なのかは分からない。大きな鏡が一枚あり、打撃を与えると魔力値というものが測れるらしい。
大柄の少年は、このグループで一番高い数値を叩きだした。
俺は考える。
自身の魔力値などてんで知らない。だが、直感的にわかる。──俺が全力で殴れば大鏡は壊れる、と。
壊して弁償だけは勘弁願いたいところだ。
あれこれと考えていると、
「次、60番」
俺の番となった。
平均値は80ぐらいだろう。
どれぐらい加減すればいいのだろうか?
その前に……。
「なあ? この鏡ってどれぐらいまでの数値が測れるんだ?」
耐久性を確認しておく必要がある。
「私語は慎しんで早く始めなさい」
試験官はさっさと終わらせて、次の試験へ移りたいようだ。
「壊れても文句言うなよ」
「壊れる? ハハハッ、面白い事言うね君。大丈夫だ。この大鏡は、魔力値上限1000まで測れるから」
「後で弁償しろとか言うなよ」
「分かったわかった。言わないから早く始めて」
試験官は呆れた様子で話を切った。
まあ。これで言質は取れた。
俺は大鏡をとやらの前に立ち、軽く拳を打ち出した。
ティアナに連れられて申請場所へと移動する。
申請場所といっても広場に設けられた小さなテント小屋だ。そこに長テーブルがあり、受付が三人。
試験の申請書に記入していく。
名前の他に住所や記載項目は多岐にわたる。
名前だけを埋める。後は隣で黙々と申請書に記入しているティアナのものを、丸写しだ。
ほどなくして受付が締め切られると、入学希望者は広場に集められた。
同年代ぐらいの男女が二百人ほどはいるだろう。
親たちは石段調の観覧席から、我が子を応援している。
さながら体育祭の様相だ。
「グラッドさんは何番ですか?」
「ん?」
「受験番号ですよ?」
試験申請の際に割り振られた受験番号。
虚偽だらけの申請書の写しには、
「60番だ」
「じゃあ、離れ離れですね。私は206番なので。それではお互い頑張りましょ!」
ティアナはそう言って、自分が受ける試験場所へと駆け出した。
陸上競技場ほどの広い広場の四隅には、色分けした旗を掲げたテントが4つある。
なにせ受験生の人数が多い。4つのグループに分かれて試験が行われるようだ。
俺は『1番から60番』と、記された赤旗のテントに移動した。
「大丈夫かな?」
俺は心配になって、観覧場となっている石段に目をやった。
石段の最下部。タームはちゃんと大人しく座っている。
少女は案の定、紙袋を大事そうに両手に抱えていた。買ったばかりの洋服を奪われないかと、警戒でもしているのだろう。
大鐘が鳴らされる。ゴーンという重低音が大気を伝わって腹に響く。
その合図をもって試験は始まった──。
†
†
「次、55番」
番号が近づいてくる。
「では、始めなさい!」
試験官の合図。
当該番号の受験生は重心を整えて構えた。
大柄の少年だ。
少年は気合の掛け声とともに拳による打撃を繰り出した。
「55番、魔力値128」
試験官がそう告げると、周りの受験生たちはざわついた。
どんな仕掛けなのか、魔法なのかは分からない。大きな鏡が一枚あり、打撃を与えると魔力値というものが測れるらしい。
大柄の少年は、このグループで一番高い数値を叩きだした。
俺は考える。
自身の魔力値などてんで知らない。だが、直感的にわかる。──俺が全力で殴れば大鏡は壊れる、と。
壊して弁償だけは勘弁願いたいところだ。
あれこれと考えていると、
「次、60番」
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平均値は80ぐらいだろう。
どれぐらい加減すればいいのだろうか?
その前に……。
「なあ? この鏡ってどれぐらいまでの数値が測れるんだ?」
耐久性を確認しておく必要がある。
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「壊れても文句言うなよ」
「壊れる? ハハハッ、面白い事言うね君。大丈夫だ。この大鏡は、魔力値上限1000まで測れるから」
「後で弁償しろとか言うなよ」
「分かったわかった。言わないから早く始めて」
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まあ。これで言質は取れた。
俺は大鏡をとやらの前に立ち、軽く拳を打ち出した。
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