2 / 57
第一章 戦いの合図は教会の鐘で
第一章 戦いの合図は教会の鐘で2
しおりを挟む
「特におかしなものはないな」
あれから部屋中の確認をし終え、何もないことを確認し終えたカメリアはベッドに腰を降ろした。
(そもそも、どうしてこんなところに私はいるのかが問題だ……)
カメリアは自分の記憶をたどっていく。
昨日は普段ととくに変わったことは何もなかった。
いつものように仕事を終えて、屋敷に帰ってきた後は日課でもある鍛錬を屋敷の庭でおこない、その後は身体を清めてから夕食を食べて自分の部屋に戻った。
(その後は……)
しかし、夕食を終えて自分の部屋に戻ってから記憶がどういうわけかカメリアからは抜け落ちている。そうなると、事が起きたのは夕食が終わってからということになる。
「でも、どうしてこんな部屋にいるんだ……?」
何の拘束もされずにベッドに眠らされていたことから、カメリアを傷つける意図は恐らくないのだろう。そのような意図があるならば、カメリアが眠っている間になにかされているはずだ。
誘拐ということも考えられるが、カメリアが眠らされていた部屋は高価な家具が置かれており、攫ってきた人間を閉じ込めておくような部屋ではない。
むしろ客をもてなすための部屋といった方が近いだろう。
だとすれば、カメリアをこの部屋まで連れてきた人物は一体誰なのか。
(それに一体なにが目的なんだ?)
そんなことを考えていたカメリアは部屋に自分以外の気配があることに気付いた。
気配のする方へと視線を向ければ、そこには浴室へと通じるドアがあった。
カメリアは先程浴室の扉を開けて何もないことを確認していたが、その時には人の気配などまったく感じなかった。
(まさか、ずっと気配を消して隠れていたというのか……!?)
カメリアはとっさに腰に手を伸ばすが、そこにあるはずの剣はない。
普段は剣をそばに置いて眠っているが、十六の娘がするようなことではなく、このようなベッドのそばに剣が置かれているはずもない。
武器になりそうなものはないかと探していたカメリアはサイドテーブルに置かれていた燭台に目をとめた。
「なにもないよりはマシだ……」
カメリアは燭台を手にすると、緊張のせいか冷える素足をゆっくりと床の上を滑らせるようにして足音と気配を消して、ゆっくりと浴室へつながるドアへと近付いていく。
(落ち着くんだ……相手は、恐らくひとりだ)
このような部屋の中で気配をここまで完全に消すとなると、相手は単独である可能性が非常に高い。相手が複数の場合、ここまで完全に気配を消すことはできないはずだ。
しかし相手のことがなにもわからない状態で対峙しなければならないのは痛手だった。それもカメリアにとっては慣れない部屋で、手にしている武器は燭台とひどく心もとない。地の利も武器も恐らく相手の方が上と考えていいだろう。
相手のことがわからず、自分が不利な場合、勝敗を決めるのは自分のタイミングを取った方。
つまり相手の呼吸にまどわされることなく、いかに自分の呼吸を正確に計れるかにすべてがかかってくる。
扉の向こう側にいる相手もそのことを理解しているのか。一向に動く気配はない。カメリアが扉越しいることは既にわかっているはずだ。
(だったら……)
カメリアは呼吸を整えると、ドアノブへと手を伸ばした。
自分の行動を相手に読まれていることを理解した上で、それを逆手に取っての行動だったのだが、内側から扉が勢いよく開くのは同時のことだった。
あれから部屋中の確認をし終え、何もないことを確認し終えたカメリアはベッドに腰を降ろした。
(そもそも、どうしてこんなところに私はいるのかが問題だ……)
カメリアは自分の記憶をたどっていく。
昨日は普段ととくに変わったことは何もなかった。
いつものように仕事を終えて、屋敷に帰ってきた後は日課でもある鍛錬を屋敷の庭でおこない、その後は身体を清めてから夕食を食べて自分の部屋に戻った。
(その後は……)
しかし、夕食を終えて自分の部屋に戻ってから記憶がどういうわけかカメリアからは抜け落ちている。そうなると、事が起きたのは夕食が終わってからということになる。
「でも、どうしてこんな部屋にいるんだ……?」
何の拘束もされずにベッドに眠らされていたことから、カメリアを傷つける意図は恐らくないのだろう。そのような意図があるならば、カメリアが眠っている間になにかされているはずだ。
誘拐ということも考えられるが、カメリアが眠らされていた部屋は高価な家具が置かれており、攫ってきた人間を閉じ込めておくような部屋ではない。
むしろ客をもてなすための部屋といった方が近いだろう。
だとすれば、カメリアをこの部屋まで連れてきた人物は一体誰なのか。
(それに一体なにが目的なんだ?)
そんなことを考えていたカメリアは部屋に自分以外の気配があることに気付いた。
気配のする方へと視線を向ければ、そこには浴室へと通じるドアがあった。
カメリアは先程浴室の扉を開けて何もないことを確認していたが、その時には人の気配などまったく感じなかった。
(まさか、ずっと気配を消して隠れていたというのか……!?)
カメリアはとっさに腰に手を伸ばすが、そこにあるはずの剣はない。
普段は剣をそばに置いて眠っているが、十六の娘がするようなことではなく、このようなベッドのそばに剣が置かれているはずもない。
武器になりそうなものはないかと探していたカメリアはサイドテーブルに置かれていた燭台に目をとめた。
「なにもないよりはマシだ……」
カメリアは燭台を手にすると、緊張のせいか冷える素足をゆっくりと床の上を滑らせるようにして足音と気配を消して、ゆっくりと浴室へつながるドアへと近付いていく。
(落ち着くんだ……相手は、恐らくひとりだ)
このような部屋の中で気配をここまで完全に消すとなると、相手は単独である可能性が非常に高い。相手が複数の場合、ここまで完全に気配を消すことはできないはずだ。
しかし相手のことがなにもわからない状態で対峙しなければならないのは痛手だった。それもカメリアにとっては慣れない部屋で、手にしている武器は燭台とひどく心もとない。地の利も武器も恐らく相手の方が上と考えていいだろう。
相手のことがわからず、自分が不利な場合、勝敗を決めるのは自分のタイミングを取った方。
つまり相手の呼吸にまどわされることなく、いかに自分の呼吸を正確に計れるかにすべてがかかってくる。
扉の向こう側にいる相手もそのことを理解しているのか。一向に動く気配はない。カメリアが扉越しいることは既にわかっているはずだ。
(だったら……)
カメリアは呼吸を整えると、ドアノブへと手を伸ばした。
自分の行動を相手に読まれていることを理解した上で、それを逆手に取っての行動だったのだが、内側から扉が勢いよく開くのは同時のことだった。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
優しい微笑をください~上司の誤解をとく方法
栗原さとみ
恋愛
仕事のできる上司に、誤解され嫌われている私。どうやら会長の愛人でコネ入社だと思われているらしい…。その上浮気っぽいと思われているようで。上司はイケメンだし、仕事ぶりは素敵過ぎて、片想いを拗らせていくばかり。甘々オフィスラブ、王道のほっこり系恋愛話。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
花婿が差し替えられました
凛江
恋愛
伯爵令嬢アリスの結婚式当日、突然花婿が相手の弟クロードに差し替えられた。
元々結婚相手など誰でもよかったアリスにはどうでもいいが、クロードは相当不満らしい。
その不満が花嫁に向かい、初夜の晩に爆発!二人はそのまま白い結婚に突入するのだった。
ラブコメ風(?)西洋ファンタジーの予定です。
※『お転婆令嬢』と『さげわたし』読んでくださっている方、話がなかなか完結せず申し訳ありません。
ゆっくりでも完結させるつもりなので長い目で見ていただけると嬉しいです。
こちらの話は、早めに(80000字くらい?)完結させる予定です。
出来るだけ休まず突っ走りたいと思いますので、読んでいただけたら嬉しいです!
※すみません、100000字くらいになりそうです…。
天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする
カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m
リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。
王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる