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猫盾

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○第二章「一人目」

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 一週間後、人形の納品日。
 僕はそわそわして落ち着かず、普段はしないような場所まで掃除したりして、彼女との再会を待った。

 ああ、どんな顔で出迎えればいいんだろう。何て声を掛ければいいんだろう。
 緊張と、不安と……そして、期待感。もうすぐ、ここに彼女が……

 と、その時、僕が住んでいるアパートの外階段を、誰かが上る音が聞こえてきた。
 き、来た? 来たのか!?

 ――ピンポーン!

 来た!

「は、はい!」

 僕は逸る気持ちを抑えつつ、玄関を開ける。
 すると、そこに立っていたのは……

「えへへ、来たよ」

 屈託無く笑う、高校の制服に身を包んだ、響。

「あ、ど、どうぞ! どうぞ入って!」

 す、すごい……本当に、響だ! 本当に響が来たんだ!

「わぁ、結構キレイにしてるんだね~」
「そ、そうで、す、か? そうか、な?」

 僕は後ろ手に玄関を閉めながら、テンパったような感じで言葉に迷う。
 響……響なんだけど、えっと、でも、どう接すればいいんだろう!?

「なぁにぃ? 何をキョドってんの~? あ、女の子家に上げたことないんだぁ?」
「そ、そんなことないよ、うん」
「ほんとかな~」

 意地悪そうな顔で笑う響に、慌てて応えるけど……はい、正直キョドってます。

「あ、ねえ、漫画読んでもいい?」

 と、目ざとく、室内にあった棚に並ぶ漫画を見つける響。

「あ、はい、うん」

 ああ……それにしても、可愛いなぁ……高校生の頃の響は、こんなだったんだ。
 なんて思いつつ、まじまじと響の様子を眺める僕。
 何かもう、それだけで幸せで――

「っ!?」

 その時、僕の目にあるものが飛び込んできた。
 彼女の、お尻と、白い下着……
 響は膝をつき、こちらに尻を向けた形で棚の下段の漫画を選んでいた。その体勢のせいか、短いスカートの裾から覗くお尻と下着が、丸見えだったのだ。

「これにしよっと……ん、どうしたの?」

 漫画を取り、僕の方に向き直る響。
 一方の僕は、何て言うか……胸の中に、どす黒い何かが湧き上がってくる感じがして、それに逆らえなくて……

「ちょ、ちょっと?」

 響は僕の様子がおかしいと気づいたのか、座ったままで少し、後退りした。

「ま……ちょ、待って。まだこんな、昼間だしさ、ね?」

 僕がどういうつもりなのか、何となく察したらしい響は、後退りしながらも僕を宥めようとしてきた。

 けど、僕はもう、自分の劣情を制御できなくて、とにかく、響を……響を!

「きゃっ……」

 響! 響! 響ぃ!!

 ――――
 ――

 どれくらい経っただろうか……陽はすっかり落ちきって、寝室は殆ど真っ暗になっていた。
 ベッドには、半裸の響がぐったりと横たわっている。
 そして僕はその傍で、彼女に背を向けて座っている。
 辺りには、僕が無理矢理脱がせた彼女の服や下着が散らばっている。
 
 僕は……自己嫌悪に陥っていた。
 今度こそ、大切にしようって思っていたのに、僕は自分の欲望に勝てなかった。本能に突き動かされるように、それこそサルのように、何度も、何度も……
 後半などは、彼女も殆ど声をあげず、ただ、僕のされるがままで……

 何を……やってるんだ、僕は……

「………」

 と、その時背後で、響がゆっくりと体を起こしたのを感じた。そして響は、少しフラフラしながらベッドを降りて、寝室を出て行こうとした。

「……どこ……へ?」
「シャワー……」

 僕の方に振り返る事無く、疲れたような声でそう呟いた響。

 シャワー……シャワー? 本当に?

 もしかしたら、僕が酷い事をしたから、怒ってるのかも。
 もしかしたら、もう付き合ってられないと思ったのかも。
 もしかしたら、逃げようと思ってるのかも。

 もしかしたら……もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら!

「……だめだ、僕から離れるなっ」

 僕は思わず、声を張り上げた。

「シャワーだけだって……」
「行くな!!」

 止めなくちゃ……止めなくちゃ!

「や、ちょっ 休ませて……!」

 気がつけば僕は、また彼女を押し倒していた。

「な、何するの!? そんなのやだ!」

 彼女が纏っていた最後の布を剥ぎ取り、いつか使おうとか思っていた玩具を取り出す。
 振動するそれが、彼女に恐怖心を与えている事に気付かないまま、僕は、それこそが彼女を繋ぎ止める唯一の方法だとか思い込んで……

「いやあああぁあぁあああぁあぁ!!」

 何度も、何度も、僕は、彼女は、堕ちて、達して、上り詰めて、そして……
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