上 下
38 / 57

精霊の里

しおりを挟む
 青く輝く星を眼下に見据えた精霊の里……

 その昔、人によって精霊達が乱獲される事件が起こった。

 精霊達は次々に魔道具の原動力として利用された。それを見かねた神が一度、人間に罰を与え、滅ぼし、こんにちの魔石を利用した魔道具文化が出来上がった。
 
 それに伴い、神はダンジョンを作り、精霊に人間の目が向かないようにし、精霊王によって精霊達は灰色の星へと移り住んだ。
 
 「って、精霊王のじいちゃんに聞かされたことあったけど……あってる?」

 私は、ドールハウス並みの小さな家の中を覗き込み、中にいる人物に聞く。

 「ああ。よく覚えていたな……偉いぞ!乳揉み聖女!」

 ベッドで寝ている、頭に包帯を巻いた妖精王……仙人みたいな。おじいちゃん……小人だから、人形みたいで可愛いんだよね。見るのはこれが初めてだけど、声は昔からずっと聞いてたから、なぜか緊張しない。

 「だからさぁ……元!聖女だよ。やめてきたんだって!」

 精霊の里についてから2時間、何度も何度も説明しているが、

 「いや。聖女になれるのは神とわしに認められた奴しかなれんからな!称号じゃからな。職業と勘違いしとる奴がいるが……辞めるとかないから!……たく、聖女になれるのは神候補の人間じゃと言うのに」
 
 と、髭を撫でて諭すように話すじいちゃんに何度も言われた。

 「いや、神とかいいんで辞退します!それに私が神になったら世界がめちゃくちゃになると思うぞ?……例えば、金に飢えたゾンビのような奴しかいない世界とか?」
 
 自分が神になり、世界を管理する所をリアルに想像してみたが……

 世紀末だ!待っているのは、やばい未来しかない!

 「……ああ、確かにぃぃ……マジやべぇ……うん。認めるわ。聖女やめていいわ。今から神にもそのことを伝えるから待ってろ……あ、神ぃ?もっしー、今、暇?」

 念話を始めたと思ったら、威厳ある態度から、一気に落下してなんかよくわからん喋り方になるじいちゃん……
  
 「さすがは精霊王だ!これが神に並ぶ存在……皆から敬われる存在かぁ!」

 私の体の中心を電気が突き抜ける。

 そうか!これが人から敬われる存在!

 メモとペンを取り出して気づいたことを書いていく。

 こう言う所からアイデアの種が生まれんだよなぁ……上に立つ人間は、親近感が大事と!

 「ええ!ま!で、お!……あいつ彼氏できたの!」

 途中の言葉を省略する精霊王

 ふむふむ……ま!で、お!……って!意味わからねえわ!ちゃんと略さずに話しなさい!

 私は、7万年だったか?生きていると言う精霊王にツッコんでしまう。

 ちなみにま!は「まじで!」、お!は
「驚きだわ!」だそうです。

 神達の間で流行ってるからか知らんけど、進化しすぎると言葉まで略称すんのか?
もはや暗号だわ……

 「ま!お!ひ!け!ねぇ……」
 →(マジで驚きだわ!火の神が結婚するって、ねぇ……)

 意味わかんねぇ!どんな会話してんのか気になるぅぅぅ!

 なんか私のことを話してるはずなのに蚊帳の外に追い出された感じがしてイライラする!私、13歳!
 
 最先端!をじいちゃんが使いこなしてると若い身としては、

 「自分も使いこなさなくちゃ!」

 と、なんか焦りも出てきたし。

 「り!じゃ!……ああ……だりぃわぁ」

 神との念話を終えた、じいちゃんはベッドから起き上がって化粧台に座る。

 「うわぁ……マジ最悪だわぁ……包帯を頭に巻けば髪がサラサラになるとか言ってたのデマじゃん……あ、ごほん!」

 ん?と一度、私をみてからしばらくして咳払いする精霊王の……じいちゃんなのか?
なんか若くね?

 「神は了承したと言っとったぞ……さあて……寝ようっと……21時から2時の間はゴールデンタイム。これを逃すと肌荒れがマジヤバぁ……zzz」

 帽子をかぶって寝巻きに着替えた妖精王はベッドに横になり夢の世界へ。

 ああ……めっちゃ気持ちよさそうに眠るなぁ……うとうと、

 「ムニャーー……って、しとる場合か!……あ、やべ……よだれが」

 私は妖精王の帽子を借りて綺麗に口の周りを拭く。

 えっ……め、めちゃくちゃ……

 「ふれぐら~んす!な香り……女子力たけぇぇ!」

 星々に向かって叫ぶ。

 それから、7万年生きていると言うじいちゃんを驚きの目で見る。

 女より女だ……私も、もっと頑張らないと、

 「とりあえず、あの宇宙語から始めるか……と言うか、おーい!起きろ!ジジィ」

 フレグランスな帽子を完眠寸前のじいちゃんに向けて投げる。

 「……な!な!……お、び、さ!」
 →(なんだ!何が起こった!……お前かよ!びっくりさせるなよ!)

 慌てて起き上がる、じいちゃんは、宇宙語を話す。

 「何を言ってるか全くわからん。普通に喋れ……私を呼ぶ程の原因って、なんなんだ?」

 私は、いまだに、若干、寝ぼけ眼のじいちゃんに尋ねる。

 「ん?ああ……ゴールデンタイムが近づいていたから忘れたわ……実は、」

 妖精王のじいちゃんは片目が二重のまま、真剣な顔で切り出す。
 
 じいちゃんの緊張が伝わり、私も真剣な顔で身構えて聞く。

 「……神龍が攻めてきおった」

 ……な、なんだってぇぇぇ!

 じいちゃんの言葉に我が耳を疑う。

 「……もう一回、言ってくれ」

 私は、もう一度、確認の意味も込めて聞き返す。

 「じゃからな……神龍が攻めてきたんじゃ!……まあ、あの龍達の神だからな。ほぼ、神と言っても良い実力のお前でも驚くのは」
 「ふ……てる」
 「あ?声が小さくてよく聞こえんかった!もう一度言ってくれ」

 妖精王はベッドに座ったまま、こちらに耳を向けてくる。

 「普通に喋んじゃねぇ!そこは流れ的に宇宙語で話してこいよ!……やり直し!テイク2!もう一回、理由を聞く所から始めるからちゃんと宇宙語で答えろよ!いいか?」

 じいちゃんに伝わるように優しく話す。

 物事には流れというものがあるのだよ?それを無視してはいけないよ。じいちゃん。
こっちは宇宙語を期待していたんだからね!

 「はーい!それじゃ、テイク2!準備はいいですかぁ!……本番!用意!…3、2、1!」

 わたしの視線がじいちゃんへと向く。

 「……いや、メンドくせぇぇ!」

 と、じいちゃんが叫ぶ。

 おおい!……やっぱりか!私もそう感じてたぜ!じいちゃん!宇宙語で話してた時の仕返しじゃあ!置いてけぼり感…

 「辛いだろ?」

 私はじいちゃんに聞く。

 「……」

 じいちゃんはキョトンとした顔で頷く。

 はい!素直!……でも、気持ちが伝わってよかったぁぁ!
 
 と、一安心の私だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。 ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま! 目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。 公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。 命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。 身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!

婚約破棄された聖女がモフモフな相棒と辺境地で自堕落生活! ~いまさら国に戻れと言われても遅いのです~

銀灰
ファンタジー
生まれながらに、その身に聖なる女神の力を宿した現人神、聖女。 人生に酷烈たる天命を負った、神と人に献身の奉じを約束した存在――聖女ルールゥは、己の存在意義をそのようなものであると固く信じていたのだが……。 ある日ルールゥは、婚約を結んでいた皇子から婚約破棄を言い渡されてしまう。 曰く、昨今の技術発展に伴い聖女の力が必要とされなくなり、その権威が失墜の一途を辿っているからだという。 罵詈雑言と共に婚約破棄を言い渡されただけではなく――近く、聖女としての責務も解かれると宣告される。 人々に忘れ去られ、天命の意味を失い――ルールゥは追われるように国を後にする。 聖女に寄り添う神獣のミハクを旅の共に、艱難辛苦を乗り越え、住み良い辺境の地を発見し、そこで新たな生活が始まろうとしていたのだが――。 その地で待っていたのは、もふもふな相棒と過ごす、自堕落な生活だった!? 与えられた天命を捨て、心を取り戻し、新たな天命の意味を見出す物語。 働くって、クソです!?

俺達ダン!ジョン!創作隊

霧ちゃん→霧聖羅
ファンタジー
憧れの冒険者。 冒険者になったら、魔物をガンガンぶっ倒して。 そうして成り上がって綺麗な姉ちゃん達にラブラブもてもて! …そんな夢、みたっていいよな? そんな俺を襲う悲しいチート。 モンスターホイホイってなんなのさ!? ハーレムの一つも作れない、そんな俺の冒険譚。 こちらの作品は隔日更新になります。

魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました

うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。 そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。 魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。 その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。 魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。 手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。 いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。

最強幼女のお助け道中〜聖女ですが、自己強化の秘法の副作用で幼女化してしまいました。神器破城槌を振り回しながら、もふもふと一緒に旅を続けます〜

黄舞
ファンタジー
 勇者パーティの支援職だった私は、自己を超々強化する秘法と言われた魔法を使い、幼女になってしまった。  そんな私の姿を見て、パーティメンバーが決めたのは…… 「アリシアちゃん。いい子だからお留守番しててね」  見た目は幼女でも、最強の肉体を手に入れた私は、付いてくるなと言われた手前、こっそりひっそりと陰から元仲間を支援することに決めた。  戦神の愛用していたという神器破城槌を振り回し、神の乗り物だと言うもふもふ神獣と旅を続ける珍道中! 主人公は元は立派な大人ですが、心も体も知能も子供です 基本的にコメディ色が強いです

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。 その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。 本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。 リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。 しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。 なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。 竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

処理中です...