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初めての洗礼
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長さ600m、幅200mと横長の大きな校舎……
そんな校舎の面積の三分の一を占める大講堂で行われた生徒1500人、教員と職員合わせて100人、来賓と思われる学校関係者と共産者50人、中には斧をタオルのように振り回して、歓迎の意を表す奴がいる中行われた入学式は筒がなく終わった。
「退場!なお、冒険者コースの者達は別校舎へ案内するので最後まで待機していてください!」
教頭と名乗っていたハゲのおっちゃんがアナウンスする。
「逃げろー!!」
アナウンスが終わると来賓が出終わったタイミングで他のコース選択者達は一斉に講堂から逃げ出して行く。
大講堂に残ったのは、冒険者コースのA組からD組の一年生と斧を振り回して、歓迎してくれていたたモヒカン刈り上げ、肩パッドと世紀末スタイルの男女10人。
「おい!一年!」
その中でも一番体格がデカくて強面な男が人の間をかき分けて前に出てくる。
「おおーでかいねー
オーガみたいだー」
いつの間にか亜空間から出てきたシルフィが私ではなくエマの谷間の中から顔を出していた。
おーおー気づかれないことをいいことにー変態だねー
「俺はな!冒険者コース2年D組で頭はってるサトウってもんだ!Death!と呼べ!いいな!お前達は今日から俺のチーム「透流遁(スケルトン)」の一員だ!」
サトウは、自身の体と変わらない大きさの斧を軽く持ち上げて舐め回す。
「男も女も関係なしに世紀末スタイルになってもらう!拒否は認めねぇ!嫌だって奴は前に出ろ!この場で半殺しにして校内に吊るす!ーーこれぞ!冒険者コース名物「洗礼」だ!」
その言葉で一斉に斧やら指に鉄の輪を嵌めたり戦闘態勢を取るサトウと手下達……
「洗礼……ああ!リサが言ってたやつ」
「洗礼」とは……
毎年入学式後に冒険者コースの頭を狙う一つ上の学年チームが、新入生が舐めた態度を取らないように心をへし折るイベント。
授業料無料、学園管理の比較的安全なダンジョンなど冒険者となる上でかなりの待遇を受けることのできるこの学園では、卒業後に実際の現場でD級になるとB級に上がれずに燻っているC級冒険者から嫌がらせを受けるケースがあることを受けて学生のうちから「現実」を体験できるように、と学生達のこうした行為を見逃している。
冒険者とは現実にこうした場面なんかが多い。
最悪は冒険者仲間に殺されることだってある。
この程度で揺らぐ程度の精神ならやめるという選択を取らせるのは早いほうがいい。
「話には聞いてたけど本当にあんのかよ……」
「理不尽すぎるだろ。強制とか」
入学試験で好成績を出し、一学年のトップに君臨しチヤホヤされると思っていたA組の生徒ほど及び腰になり戦意を失い、その場に座り込む。
「ほーそんなこともある学校なのかー」
鼻をホジホジ……うお!でっけぇな!
「どんくらい持ってると思う?」
ダガーを2本構えるエマ。
「うーん?金貨とかはなさそうだなぁ……ユリはどう思う?」
「え!こいつらからも取る気満々なの!……やめといた方がいいんじゃない?理事長さんに怒られるよ?」
「う……でも、今月の借金の支払いがあるし……」
ユリの言葉で私の頭にリサの顔が浮かぶ。
確かになぁ、迷惑かけすぎてるみたいだったからなぁ……
どうするか迷っていると……
「いかねぇの?なら、私が全部いただくよー」
ダガーを構えたエマがサトウに向かって走り出す。
って、おい!
「待ってよー!行く行く!半分残しといて!」
どうするか迷っていた私は、エマに釣られて駆け出す。
まあ、動き出してしまったものはしょうがない……気がついたら財布を持っていたことにしとこう。
「う、動きやがった!?怖くねえのかよ!……てめぇら!俺のこの斧が怖くねぇのか!ものすごーくでかいぞ!斬られたら痛いぞぅ!」
サトウは慌てた様子で舐め回していた斧を私たちに見せつけるように構える。
何やってんだ?あいつ……
私たちは関係なく向かう。
すると、さらに慌て出し、
「く、くるんじゃねえ!本当に切るぞ!やっちゃうぞぅぅ!」
プルプル震えながら斧を振る上げる。
その様子は斧が重いというよりも斧を振るうことを躊躇っているような感じだった。
「いや。怖いんだったらなんで不良なんてやってんだよ……」
「まあまあ……さあ!稼ぐよぅ!」
そんなサトウを見て呆れるエマとやる気満々のクミ。
よっしゃ!臨時収入!臨時収入!チビ達に何買って帰るかぁ……
「……!うわぁぁぁ!」
振り上げた斧をエマに向かって振るう。目を瞑って。
「ほい!」
索敵などの支援が専門の盗賊とは思えない前衛ばりの素早い動きで一気に懐へ飛び込みピッチリしたズボンのポケットから財布を取る。
「とう!」
取った財布をポケットにしまいこみ、サトウのガラ空きの顎に掌底を打ち込む。
「…がっ」
天井を見上げ白目をむき、膝から崩れ落ちるサトウ、通称「Death!」
「さあ!次々!」
エマは崩れ落ちるサトウの脇を通り抜ける。
「持ってそうな奴にしよう……て、終わってるし」
サトウの脇を通り抜けた先ではすでにクミが手下達を気絶させて懐から財布を取り出している所だった。
「ふひひ!こいつらも意外と持ってんなぁ!大漁!大漁!」
クミは満面の笑みで亜空間へと奪った財布を放り込んでいく。
そんな校舎の面積の三分の一を占める大講堂で行われた生徒1500人、教員と職員合わせて100人、来賓と思われる学校関係者と共産者50人、中には斧をタオルのように振り回して、歓迎の意を表す奴がいる中行われた入学式は筒がなく終わった。
「退場!なお、冒険者コースの者達は別校舎へ案内するので最後まで待機していてください!」
教頭と名乗っていたハゲのおっちゃんがアナウンスする。
「逃げろー!!」
アナウンスが終わると来賓が出終わったタイミングで他のコース選択者達は一斉に講堂から逃げ出して行く。
大講堂に残ったのは、冒険者コースのA組からD組の一年生と斧を振り回して、歓迎してくれていたたモヒカン刈り上げ、肩パッドと世紀末スタイルの男女10人。
「おい!一年!」
その中でも一番体格がデカくて強面な男が人の間をかき分けて前に出てくる。
「おおーでかいねー
オーガみたいだー」
いつの間にか亜空間から出てきたシルフィが私ではなくエマの谷間の中から顔を出していた。
おーおー気づかれないことをいいことにー変態だねー
「俺はな!冒険者コース2年D組で頭はってるサトウってもんだ!Death!と呼べ!いいな!お前達は今日から俺のチーム「透流遁(スケルトン)」の一員だ!」
サトウは、自身の体と変わらない大きさの斧を軽く持ち上げて舐め回す。
「男も女も関係なしに世紀末スタイルになってもらう!拒否は認めねぇ!嫌だって奴は前に出ろ!この場で半殺しにして校内に吊るす!ーーこれぞ!冒険者コース名物「洗礼」だ!」
その言葉で一斉に斧やら指に鉄の輪を嵌めたり戦闘態勢を取るサトウと手下達……
「洗礼……ああ!リサが言ってたやつ」
「洗礼」とは……
毎年入学式後に冒険者コースの頭を狙う一つ上の学年チームが、新入生が舐めた態度を取らないように心をへし折るイベント。
授業料無料、学園管理の比較的安全なダンジョンなど冒険者となる上でかなりの待遇を受けることのできるこの学園では、卒業後に実際の現場でD級になるとB級に上がれずに燻っているC級冒険者から嫌がらせを受けるケースがあることを受けて学生のうちから「現実」を体験できるように、と学生達のこうした行為を見逃している。
冒険者とは現実にこうした場面なんかが多い。
最悪は冒険者仲間に殺されることだってある。
この程度で揺らぐ程度の精神ならやめるという選択を取らせるのは早いほうがいい。
「話には聞いてたけど本当にあんのかよ……」
「理不尽すぎるだろ。強制とか」
入学試験で好成績を出し、一学年のトップに君臨しチヤホヤされると思っていたA組の生徒ほど及び腰になり戦意を失い、その場に座り込む。
「ほーそんなこともある学校なのかー」
鼻をホジホジ……うお!でっけぇな!
「どんくらい持ってると思う?」
ダガーを2本構えるエマ。
「うーん?金貨とかはなさそうだなぁ……ユリはどう思う?」
「え!こいつらからも取る気満々なの!……やめといた方がいいんじゃない?理事長さんに怒られるよ?」
「う……でも、今月の借金の支払いがあるし……」
ユリの言葉で私の頭にリサの顔が浮かぶ。
確かになぁ、迷惑かけすぎてるみたいだったからなぁ……
どうするか迷っていると……
「いかねぇの?なら、私が全部いただくよー」
ダガーを構えたエマがサトウに向かって走り出す。
って、おい!
「待ってよー!行く行く!半分残しといて!」
どうするか迷っていた私は、エマに釣られて駆け出す。
まあ、動き出してしまったものはしょうがない……気がついたら財布を持っていたことにしとこう。
「う、動きやがった!?怖くねえのかよ!……てめぇら!俺のこの斧が怖くねぇのか!ものすごーくでかいぞ!斬られたら痛いぞぅ!」
サトウは慌てた様子で舐め回していた斧を私たちに見せつけるように構える。
何やってんだ?あいつ……
私たちは関係なく向かう。
すると、さらに慌て出し、
「く、くるんじゃねえ!本当に切るぞ!やっちゃうぞぅぅ!」
プルプル震えながら斧を振る上げる。
その様子は斧が重いというよりも斧を振るうことを躊躇っているような感じだった。
「いや。怖いんだったらなんで不良なんてやってんだよ……」
「まあまあ……さあ!稼ぐよぅ!」
そんなサトウを見て呆れるエマとやる気満々のクミ。
よっしゃ!臨時収入!臨時収入!チビ達に何買って帰るかぁ……
「……!うわぁぁぁ!」
振り上げた斧をエマに向かって振るう。目を瞑って。
「ほい!」
索敵などの支援が専門の盗賊とは思えない前衛ばりの素早い動きで一気に懐へ飛び込みピッチリしたズボンのポケットから財布を取る。
「とう!」
取った財布をポケットにしまいこみ、サトウのガラ空きの顎に掌底を打ち込む。
「…がっ」
天井を見上げ白目をむき、膝から崩れ落ちるサトウ、通称「Death!」
「さあ!次々!」
エマは崩れ落ちるサトウの脇を通り抜ける。
「持ってそうな奴にしよう……て、終わってるし」
サトウの脇を通り抜けた先ではすでにクミが手下達を気絶させて懐から財布を取り出している所だった。
「ふひひ!こいつらも意外と持ってんなぁ!大漁!大漁!」
クミは満面の笑みで亜空間へと奪った財布を放り込んでいく。
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