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束の間の
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執務室を無事脱出した四人は、それ以来なかなか姿を現さない魔王を警戒しつつも束の間の休息を取っていた。
ある者は、程よく柔らかい半透明の"聖盾
シールド"を布団代わりにして夢の世界へ。
「そこ、そこだー!」
またある者は、
「……ああ!俺の長い後ろ髪を切って生え際に貼り付ければ前髪に見えるんじゃ!」
近くにあった短剣を引き抜き、片手で後ろ髪を引っ張り剣で切っておでこに貼り付けていた。
よし!と満足気なヴェイルだったが、鏡がなく感覚で切った髪を貼り付けた事もあり、生え際ではなく見当違いのおでこの真ん中に髪を貼り付けてしまった。
その姿はとても不憫としか言いようがないが、本人が満足しているのでそっとしておこう。
「……」
「……」
そして、互いに唇を抑え、隣に座る人物をチラチラと確認する二人。
先程は、久しぶりの再会を魔王に邪魔されてまともに話せていないので、本当はすごく話したいのだが、隠し通路から脱出後、抱き合っていた二人は一緒に床を転がり柔らかい半透明の"聖盾
シールド"にぶつかり弾かれ、宙で一回転、ネロが下敷きとなる形で互いの唇が触れた。
故意ではなくただの事故なのだが、互いにファーストキスであり、異性にあそこまで接近した経験がなかった二人は、今までに経験した事が無い胸の高鳴りと気恥ずかしさと若干の幸福感により、なんと話しかけたらいいか分からずにいた。
「……ひ、久しぶり」
そんな緊張感の中、口火を切ったのはサラ。
不自然にならないように、あくまでもいつも通りの自分を意識して話しかけた……つもりのサラ。
普段の彼女を知る親しい者が見たら不自然に他ならない。
しかし、いつまでも話しかけずにいる方が気がどうにかなりそうだったので、たまらずに話しかけた。
(ひゃー!!深呼吸したのに全然鼓動が治ってくれないー!
ど、どうしよ、どうしようー!!)
内心では慌てふためいていた。
「……さ、さんきゃ月ぶ、振りだね」
こちらもいつもの自分を意識してなんとか勇気を振り絞って正常に働いてくれない頭をコントロールして言葉を絞り出したのだが、口がうまく回ってくれなかったネロ。
(ひゃー!! 噛んじゃった!
恥ずかしいー!!)
こちらも内心はサラ同様、いやそれ以上に慌てふためいていた。
「ーーぷっ……あははは!!
さんきゃ月ぶって……あははは!!」
笑ってはいけないと分かっていたのだが、どうしても真面目な顔で噛みまくり、なおも誤魔化そうと微笑むネロの様子に、ついつい堪えきれなくなったサラ。
「……ふっ、ははは。本当だ」
笑われてしまった時は、かなり胸に来る物があったネロだったが、サラの笑った顔を見て安心し、自身の緊張した時に出る噛み癖も案外悪くないなと一緒に笑う。
それから二人は先程までの緊張が嘘だったかのように近況報告から思い出話にと花を咲かせた。
「で、エレナが……て、なんか外が騒がしい?」
「?……本当だ。複数の足音……
もしかして、リビングアーマー?」
最近のエレナとの出来事について話していたサラは、四人の中で1番入り口付近にいた事もあり、いち早くこの武器庫に近づいてくる者がいることに気がついた。
サラの言葉にネロは即座に反応し、周囲の気配を探る。
すると、通路の奥から複数人が歩いてくる音が聞こえた。
それに加えて、カッチャカッチャと響く音は甲冑の物で間違いないと判断し、もしかして再び魔王のリビングアーマーによる襲撃か?と腰から剣を引き抜き警戒。
その際にサラを自身の背後へ。
「敵か」
頭が大変残念な事になっているのだが、それに気づいていないヴェイルは、夢の世界から戻って来ないエレナの前に立ち、髪を切った短剣を構える。
「ーーさま!」
武器庫の外からは何かを叫ぶ人物の声。
そして足音が武器庫へと近づいてくる。
ネロと話す時に感じた緊張とは別の、命を狙われているという恐怖から来る怯え?と必死に戦いながら平常心を保とうとするサラ。
「大丈夫。何があっても僕が絶対に守るから」
そんなサラの心境を知ってか知らずかわからないが、「平常心でいなくちゃ!」と自分を戒めすぎて、逆に恐怖に飲まれそうになっていた窮地のサラを救う一言をいうネロ。
「……うん」
ネロの言葉に頷くサラ。
その瞳から恐怖は消え去り光が灯る。
「いだいいだい!後ろ髪を引っ張るなー!」
そんなロマンチックな二人の隣では、寝ぼけたエレナにヴェイルは思いっきり後ろ髪を引っ張られていた。
一方、その頃……
「やはり来たか……」
王都東門では、数多くの兵士、聖騎士、冒険者達が武器を構え、険しい顔で門から眼下に整列した不死の軍団と睨み合いをしていた。
「我は!魔王軍四天王が一人!不死王!」
50年前、大魔王「ナハト」が進行して来て以来となる久方ぶりの攻城戦が今始まろうとしていた。
ある者は、程よく柔らかい半透明の"聖盾
シールド"を布団代わりにして夢の世界へ。
「そこ、そこだー!」
またある者は、
「……ああ!俺の長い後ろ髪を切って生え際に貼り付ければ前髪に見えるんじゃ!」
近くにあった短剣を引き抜き、片手で後ろ髪を引っ張り剣で切っておでこに貼り付けていた。
よし!と満足気なヴェイルだったが、鏡がなく感覚で切った髪を貼り付けた事もあり、生え際ではなく見当違いのおでこの真ん中に髪を貼り付けてしまった。
その姿はとても不憫としか言いようがないが、本人が満足しているのでそっとしておこう。
「……」
「……」
そして、互いに唇を抑え、隣に座る人物をチラチラと確認する二人。
先程は、久しぶりの再会を魔王に邪魔されてまともに話せていないので、本当はすごく話したいのだが、隠し通路から脱出後、抱き合っていた二人は一緒に床を転がり柔らかい半透明の"聖盾
シールド"にぶつかり弾かれ、宙で一回転、ネロが下敷きとなる形で互いの唇が触れた。
故意ではなくただの事故なのだが、互いにファーストキスであり、異性にあそこまで接近した経験がなかった二人は、今までに経験した事が無い胸の高鳴りと気恥ずかしさと若干の幸福感により、なんと話しかけたらいいか分からずにいた。
「……ひ、久しぶり」
そんな緊張感の中、口火を切ったのはサラ。
不自然にならないように、あくまでもいつも通りの自分を意識して話しかけた……つもりのサラ。
普段の彼女を知る親しい者が見たら不自然に他ならない。
しかし、いつまでも話しかけずにいる方が気がどうにかなりそうだったので、たまらずに話しかけた。
(ひゃー!!深呼吸したのに全然鼓動が治ってくれないー!
ど、どうしよ、どうしようー!!)
内心では慌てふためいていた。
「……さ、さんきゃ月ぶ、振りだね」
こちらもいつもの自分を意識してなんとか勇気を振り絞って正常に働いてくれない頭をコントロールして言葉を絞り出したのだが、口がうまく回ってくれなかったネロ。
(ひゃー!! 噛んじゃった!
恥ずかしいー!!)
こちらも内心はサラ同様、いやそれ以上に慌てふためいていた。
「ーーぷっ……あははは!!
さんきゃ月ぶって……あははは!!」
笑ってはいけないと分かっていたのだが、どうしても真面目な顔で噛みまくり、なおも誤魔化そうと微笑むネロの様子に、ついつい堪えきれなくなったサラ。
「……ふっ、ははは。本当だ」
笑われてしまった時は、かなり胸に来る物があったネロだったが、サラの笑った顔を見て安心し、自身の緊張した時に出る噛み癖も案外悪くないなと一緒に笑う。
それから二人は先程までの緊張が嘘だったかのように近況報告から思い出話にと花を咲かせた。
「で、エレナが……て、なんか外が騒がしい?」
「?……本当だ。複数の足音……
もしかして、リビングアーマー?」
最近のエレナとの出来事について話していたサラは、四人の中で1番入り口付近にいた事もあり、いち早くこの武器庫に近づいてくる者がいることに気がついた。
サラの言葉にネロは即座に反応し、周囲の気配を探る。
すると、通路の奥から複数人が歩いてくる音が聞こえた。
それに加えて、カッチャカッチャと響く音は甲冑の物で間違いないと判断し、もしかして再び魔王のリビングアーマーによる襲撃か?と腰から剣を引き抜き警戒。
その際にサラを自身の背後へ。
「敵か」
頭が大変残念な事になっているのだが、それに気づいていないヴェイルは、夢の世界から戻って来ないエレナの前に立ち、髪を切った短剣を構える。
「ーーさま!」
武器庫の外からは何かを叫ぶ人物の声。
そして足音が武器庫へと近づいてくる。
ネロと話す時に感じた緊張とは別の、命を狙われているという恐怖から来る怯え?と必死に戦いながら平常心を保とうとするサラ。
「大丈夫。何があっても僕が絶対に守るから」
そんなサラの心境を知ってか知らずかわからないが、「平常心でいなくちゃ!」と自分を戒めすぎて、逆に恐怖に飲まれそうになっていた窮地のサラを救う一言をいうネロ。
「……うん」
ネロの言葉に頷くサラ。
その瞳から恐怖は消え去り光が灯る。
「いだいいだい!後ろ髪を引っ張るなー!」
そんなロマンチックな二人の隣では、寝ぼけたエレナにヴェイルは思いっきり後ろ髪を引っ張られていた。
一方、その頃……
「やはり来たか……」
王都東門では、数多くの兵士、聖騎士、冒険者達が武器を構え、険しい顔で門から眼下に整列した不死の軍団と睨み合いをしていた。
「我は!魔王軍四天王が一人!不死王!」
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