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その聖騎士、王子につき……

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「ついに、この時がやってきた」

 魔導灯に照らされ白く輝く壁と薄茶色の木床、深茶色の木製の椅子に執務机。
 教会の象徴的存在の一人である聖女の部屋にしては質素なデザイン。
 しかし、見る人が見れば分かる。
 白と濃紺の高級茶器、来客用ソファはミノタウロスの皮をなめして作られたオーダーメイド、200年前に実在した巨匠が描いた「天使と悪魔」を題材とした宗教画が飾られている。

「ドクロのマーク……」

 部屋の主であり、世界最大のセント教会の中で教皇の次に偉く、勇者と並んで崇め讃えられる存在にして、教会が運営する治癒院のトップを務める聖女の称号を神より与えられし人物「サラ」
 金髪碧眼、シルク生地のように白くきめ細かい美しい肌、美を司る女神を彷彿とさせる造形美の顔、スタイル抜群の身体。
 そして美しい見た目とは裏腹に、森の中を駆け巡る事が大好きなわんぱくっ娘である彼女の性格が現れた動きやすさを重視した服装。
 脹脛(ふくらはぎ)までのピチッとしたジーンズ生地のズボン、スニーカー、白と黒の横線が混合に入ったデザインのシャツ、手首にはいつでも長い髪を纏められるようにヘアゴムが装備されている。
 高貴さと親しみやすさが同居した聖女であるサラは、王国各地の治癒院の経営状況、患者数と病気の内訳が記された書類を確認していた所、右手甲にドクロが浮かび上がってきた、それと同時に自身の誕生日前日である事に気が付く。
 
「魔王の呪い……」

 サラはしばらく右手を眺める。
 どんな時でもとにかく笑う明るい性格のサラ。
 その笑顔は、見る者全てを立ち所に笑顔に変えてしまう不思議な力を持つ。
 その為、治癒院ではなく、わざわざ遠方から深手の傷をおして王都へやってくる人々が絶えない。
 と、そんな時……「コンコン」と部屋の扉をノックする音。
 ビクッと反応するサラは、誰がノックしたのか確認せずに反射的に「どうぞ」と言ってしまう。
 
「痛うう!」

「聖女様!」

「お守りいたし、ぐるじいー」

 深夜0時、日付が変わったばかりだというのに、魔王の呪いが発動したばかりの彼女の元には、聖騎士、修道士、修道女、一般市民などなど沢山の人達が魔王の呪いから彼女を守るべく部屋へと雪崩れ込む。

「……ええ!ちょっ、下敷きになってる人たち大丈夫ですか!」

 一瞬、呆気に取られフリーズしていたサラだが、「ゔゔ……重い」と呻き声を上げる人たちの声に我に戻り、慌ててヒールを掛ける。
 それから雪崩れ込んできた人たちを一人一人起こして帰宅してもらうように説得する。

「なぜですか、聖女様!」

 と、みんなに詰め寄られたが、巻き込みたくないサラは、「皆、今日は13日、私の誕生日は15日だから呪いが発動するのは明日だよ」と本当は今さっき14日になったばかりなのだが、咄嗟に嘘をついた。
 内心では、つっ込まれるかと思ってドキドキしていたのだが、何とか誤魔化すことができた。

「ふぅぅ、なんとか巻き込まずに済んだ……」

 閉じた扉に寄り掛かり息を吐くサラ。
 
「ふぁぁ……おつかれー、流石の人気ぶりだねー」

 応接用のソファから間延びした眠気を多分に含んだ女性の声。
 その女性は、起き上がると慣れた様子で茶器の置かれた台へと移動し、二人の分の紅茶を手早く淹れ、紅茶を飲みながら、自身が眠っていたソファと反対側にもう一つのカップを置く。

「ありがとう、エレナ。
 ふぅ、やっぱりエレナの淹れてくれた紅茶は……って、いつからソファにいたの! 
2時間前に「帰る」って言って部屋を出て行かなかったっけ?」

 サラは2時間前まで記憶を遡る。
 確かに「帰る」と言って綺麗な茶髪を翻して部屋を出ていったエレナの姿を覚えている。
 その後、静かになった部屋で独り、書類に目を通していたのだが、誰かがドアを開けて入ってくる気配すら感じなかった。
 一体いつから……と首を傾げる。

「んー、あれは2時間前に部屋を出て直ぐのことでしたー」

 エレナはカップを置き、背もたれに体を預け、天を仰ぐ。
 それから変わらず間延びした声で話し始める。

「いつも通り聖女補佐役としての職務を全うするために持参している枕とお布団をソファに忘れたのを思い出した私は部屋の前へと戻りドアノブに手をかけました。
 すると、その時ふと思いました。
 普通に部屋に入るのは面白くない、と」

 そこで話を一旦やめて乾いた喉を紅茶で潤し、クッキーを食す。
 そしてクッキーにより乾いた喉を再度紅茶で潤す。

「ふぅ、このクッキー美味しいね。どこの?」

 話の続きが気になるサラをよそに、マイペースを貫くエレナ。

「私の手作り! 
 それでどうやって部屋に入ったの?」

「ずずず……はああ、やはり温かい飲み物は気持ちが落ち着きますなあ……さて、私がどうやって部屋に入ったのか、それは……半年掛けて勝手に作った隠し通路を使って侵入しましたー
 こちらがその証拠です」

 布団と枕を大事そうに抱え、ソファを立ち上がったエレナは備え付けのソファを横にスライドさせると、そこには取手付きの四角い人孔(マンホール)があった。

「……いつの間にこんな物」

「完成したのはつい最近ー
 いやああ、苦労したよー
 武器庫に繋がっているんだけど、建物が崩れないように慎重に計算しながら壁や天井に穴を開けてここまで繋げたんだよー。
 でも、1番苦労したのはソファを、前後左右どちらの方へスライドさせるか悩んだんだよねー」

 困った妹分の仕出かしに頭を抱えるサラは、執務机の引き出しからそっと胃薬を取り出して飲用、僅かではあるが痛みが和らぐ。

「もう作ってしまったものはしょうがないとして……
 エレナ、魔王の呪いがいつ発動してどんなことが起こるかわからない以上私と一緒にいるのは危険だから早く帰って。
 それから今日は1日休みを上げるからここへ来るのは明日からでいいわ」

 長い髪を一つにまとめるサラ。

「わかったー」

 紅茶を飲み終えたエレナは、ソファに枕を置き頭を埋め、布団に包まる。

「……私は帰ってって言ったはずだけど」

「休日なんでしょー、だったら好きに過ごすよ。
 今は気分的にここで眠りたいだけだから気にしないでー」

 お構い無くー、と手をひらひらさせるエレナ。
 
「私は大丈夫だから。
 お願い、巻き込みたく無いの」

「ーー自覚ないだろうけど、サラって不安な時っていつも髪を後ろでまとめるよね。
 ちなみに嬉しい時はおさげにしてるよねー」

 サラの癖を指摘するエレナ。
 指摘されたサラは慌ててポニーテールを崩していつものストレートヘアに戻す。

「私達は上司と部下の関係だけど、その前に友達でしょ。
 私は巻き込まれたなんて思わないから。
 寧ろ、サラに頼られない方が傷つくよー。
 助けて欲しいなら助けてって言えばいいの」

 間延びした穏やかな声だが、どこか怒気を感じる。
 
「……ごめん、ありがとうエレナ」

「気にすんなー」

 それから、ふっ、と笑い合う二人。
 和やかな雰囲気に満ちる聖女執務室。
 しかし空気を読まず、そんな良い雰囲気を壊す者が静かに侵入する。

「死ね!」

 それはドアの隙間から部屋へと侵入した。
 実態を伴わない、黒い煙のようなモノ。
 その黒い煙は二人に気づかれないように天井を覆尽し、背筋がゾッとする悍ましい声を発した。
 その声に反応し、サラとエレナは見上げる。
 すると、牙を剥き出しにした毒蛇がサラめがけて雨のように降り注ぐ。
 警戒していたのに全く気づかなかったエレナは対応に遅れる。
 その間に毒蛇の牙がサラに迫る。

「失礼します」

 そんな時、部屋の外から男性の声と同時に執務室のドアが蹴破られる。
 弾け飛ぶ木製のドア。
 そして、姿を現す聖騎士鎧の人物。
 
「一閃 スラッシュ!!」

 聖騎士鎧の人物は、サラの元へ一瞬にして駆け寄ると剣を抜き去り、毒蛇を全て切り捨てた。
 そして黒い煙、悍ましい声、降り注ぐ毒蛇etc……一瞬にして巻き起こった状況に思考が追いつかず腰が引けてしまったサラを聖騎士鎧の人物は抱き止める。

「ふぅ……間に合った」

 兜が外れ、顔が露出する。
 床を転がる兜。
 
「ネロ!」

 その人物の顔を見て、本来ならここに居ないはずの人物に驚愕するサラ。

「久しぶり、サラ」

 兜を脱いだ人物は爽やかに笑う。
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