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魔王戦が1ヶ月と、ばあちゃん。
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魔王との戦いから1ヶ月。
「はぁ……」
私は王都にある教会の廊下でため息をついていた。
あれからワタルは意識を取り戻さずに眠り続けている。ずっと……でも、毎日の診察で身体のどこにも問題がないことはわかっている。女神様が魔王の呪いを解いて再生させてくれたからむしろ魔王と戦う前よりも状態はいい。
ただ肉体のことはわかっても魂のことは全くわからない。それは女神様も同じようで、世界の意思を封じた女神様は、
「肉体に問題はない。ただ魂に関しては悪魔たちの専門になるから私にもわからないことが多くなんとも言えない」
と言っていた。
「あとは勇者次第」
これ以上は何もできない、ということはわかっている。だけど……と気持ちが割り切れない。
「……」
今だってせめて気分だけでも違えばと思って花瓶に色とりどりの花を生けたものをワタルが眠る部屋へ運んでいる。
(このまま目を覚まさなかったら……)
不安で不安でたまらず、部屋の前に着いてもしばらくドアを開けずに立ち尽くしていた。
「……ん」
でも、そんな時だった。部屋の中から声が聞こえた。微かに。だけど、確かに声がした。
(まさか……ね)
ドアノブを回して開いた。
「……ワタル」
幻覚でも見ているのかと思った。あれから1ヶ月が経って全く目を開けず、このまま一生寝たままなんじゃないかって、
「ワタル!」
そんな状況をどうすることもできない無力な自分が許せなかったし、諦めかけてた。
「よかった……」
ワタルが目を覚ました。そのことが嬉しく、すっごく嬉しくて、
「よかったよぉぉ」
ワタルを抱きしめて私は泣いた。
・
・
・
「くぉぉらぁぁ!!さっさと起きんかぁ!」
ワタルが魔王を倒して世界を救ってから半年、
「まだ8時半じゃねえか!良い子は3度寝の時間ですよ!」
ワタルは元の世界に戻った。やっぱり1人残して来たおばあちゃんのことが心配だったようだ。
「ふざけんじゃねぇ!朝飯が片付かねえからさっさと起きてこいって話なんだよ!学校はいいから飯を食ってしまえ!そしてそれから好きなだけ寝やがれ!」
「そこは『学校へ行け』っていうところだろうが!……わかったよ。起きるよ」
そして私は、
「おはよう。ワタル。おばあちゃん」
「くあああ……はよー」
「おはよう。今日もサンちゃんは可愛いねぇ」
「聖女」としての役割を全うしようか迷った末に自分の思いに嘘をつきたくなくて、ワタルの「来いよ」って誘いに甘えて、ワタルとおばあちゃんと一緒に暮らしている。
「冷める前に食べようか」
3人で円卓のちゃぶ台を囲んで湯気が立ち上る朝食を前に、おばあちゃんの一言で、
「「いただきます」」
テレビを見ながらゆっくりと食べ始めた。
「ん!今日のお味噌汁は出汁が効いてて美味しい!」
「本当だ!?こりゃ店を出せるわ」
最近の私の楽しみは、私の作った料理を美味しそうに食べる2人の笑顔を見ること。
「ふふふ」
幸せだ。
「はぁ……」
私は王都にある教会の廊下でため息をついていた。
あれからワタルは意識を取り戻さずに眠り続けている。ずっと……でも、毎日の診察で身体のどこにも問題がないことはわかっている。女神様が魔王の呪いを解いて再生させてくれたからむしろ魔王と戦う前よりも状態はいい。
ただ肉体のことはわかっても魂のことは全くわからない。それは女神様も同じようで、世界の意思を封じた女神様は、
「肉体に問題はない。ただ魂に関しては悪魔たちの専門になるから私にもわからないことが多くなんとも言えない」
と言っていた。
「あとは勇者次第」
これ以上は何もできない、ということはわかっている。だけど……と気持ちが割り切れない。
「……」
今だってせめて気分だけでも違えばと思って花瓶に色とりどりの花を生けたものをワタルが眠る部屋へ運んでいる。
(このまま目を覚まさなかったら……)
不安で不安でたまらず、部屋の前に着いてもしばらくドアを開けずに立ち尽くしていた。
「……ん」
でも、そんな時だった。部屋の中から声が聞こえた。微かに。だけど、確かに声がした。
(まさか……ね)
ドアノブを回して開いた。
「……ワタル」
幻覚でも見ているのかと思った。あれから1ヶ月が経って全く目を開けず、このまま一生寝たままなんじゃないかって、
「ワタル!」
そんな状況をどうすることもできない無力な自分が許せなかったし、諦めかけてた。
「よかった……」
ワタルが目を覚ました。そのことが嬉しく、すっごく嬉しくて、
「よかったよぉぉ」
ワタルを抱きしめて私は泣いた。
・
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「くぉぉらぁぁ!!さっさと起きんかぁ!」
ワタルが魔王を倒して世界を救ってから半年、
「まだ8時半じゃねえか!良い子は3度寝の時間ですよ!」
ワタルは元の世界に戻った。やっぱり1人残して来たおばあちゃんのことが心配だったようだ。
「ふざけんじゃねぇ!朝飯が片付かねえからさっさと起きてこいって話なんだよ!学校はいいから飯を食ってしまえ!そしてそれから好きなだけ寝やがれ!」
「そこは『学校へ行け』っていうところだろうが!……わかったよ。起きるよ」
そして私は、
「おはよう。ワタル。おばあちゃん」
「くあああ……はよー」
「おはよう。今日もサンちゃんは可愛いねぇ」
「聖女」としての役割を全うしようか迷った末に自分の思いに嘘をつきたくなくて、ワタルの「来いよ」って誘いに甘えて、ワタルとおばあちゃんと一緒に暮らしている。
「冷める前に食べようか」
3人で円卓のちゃぶ台を囲んで湯気が立ち上る朝食を前に、おばあちゃんの一言で、
「「いただきます」」
テレビを見ながらゆっくりと食べ始めた。
「ん!今日のお味噌汁は出汁が効いてて美味しい!」
「本当だ!?こりゃ店を出せるわ」
最近の私の楽しみは、私の作った料理を美味しそうに食べる2人の笑顔を見ること。
「ふふふ」
幸せだ。
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