無感情な聖女はデリカシーなし男に変えられる。デリカシーなし男も変わる。

リヴァイヴ

「ふぅ……」

　魔力を練り上げることとイメージの構築だけに意識を集中させる。

「誰がそんなことをやらせると思う！ドラゴン共！魂の器となる肉体を破壊しろ！」

「私がそれをさせると思うか？起きろハンス！ドラゴンを駆逐しろ！」
　
　魔力の奔流と男女の声がした。

（もっと深く……）
　
　自分の魔力とイメージだけに集中する。

「グアアア！！」

「あふぁっ！女神様！？よくわかりませんが任せて下さい！」

　戦闘音と激しい揺れが押し寄せる。が、

（ふぅぅぅ）

　私の意識は自身の魔力とイメージの構築だけに注がれるだけとなり、しばらくすると完全に音、振動、匂いといった外部情報が遮断された。

（未だかつて死者を蘇らせた人はいないし魔法自体も存在しない）
　
　人類の歴史が始まって890年ーー魔力と向き合って発展してきた私たち人間は魂の研究も行ってきた。しかし、私たちは魔力という不思議な力を知覚することはできても「魂」というものは全く感じられず見ることもできない。そのため魔力ほど力を入れて研究をする者はおらず、いつしか研究自体が打ち切られた。

（だけど、魔法はイメージが重要。イメージしたものを魔力で具現化する。だから、存在しない魔法なら作ればいい）

　ただ今からやろうとしていることは何の確証もない。安全かどうかも、うまくいくのかもわからない。そもそも魔法を構築する事自体が初めてだ。不安しかない。でも、わずかだけだけど自信もある。

（イメージしろ……人は死んだら肉体から魂が球状になって飛び出してあの世へいく。そして天国へと通じる果てしない階段を登る。悪人は悪魔に食われ、善人は天使が天国へと導く）
　
　聖典に記された「あの世」の一文を思い出してイメージを構築する。そして構築したイメージの世界に魂だけとなった自分が移動するように想像して、

（……できた！）

　目を閉じなくてもイメージできるようになったら練り上げた魔力を一気に解放し、イメージを具現化させ、

「死者を復活させる魔法（リヴァイヴ）」

　魔法名を唱える。

「……」