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野営②

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「……」

 木々の間から見える沈みゆく夕陽に手を合わせる。

"夜を乗り越え、無事、朝を迎えられたますように"

 夜は魔物の動きが活発になる恐ろしい時間であり、人が最も命を落とす。逆に昼間は暗い場所から出てくることはなく大人しい。

「……」

 簡単に命を落とす世界だからこそ1日を無事に過ごせたことを女神様に感謝する。そして幸せな時間が1日でも長く続くように、と祈る……だけど、

「……」

 集中できない。ホブゴブリンとの戦闘時、判断が遅れて勇者を危険に晒した時のことが何度も頭の中を巡った。

"全知全能な女神様は失敗しない。ゆえに女神様の代理者たる聖女も失敗は許されない"

 物心ついた頃から10年以上子守唄のように聞かされ続けたことなのに……私は失敗した。勇者を危険に晒した。

「……く!!」

 ひどく胸が痛んで重い。そして内側から今までに経験したことのない何かが湧き出てきて、それを知覚した途端、体が震え出した。

"何度言えばわかる!"

 荒々しい口調で叫ぶ男の声。

「っ!!」

 それが突然、頭の中で響いた。その瞬間、私は両手で頭を抱えてその場に丸まった。身震いしたまま。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 抑揚のない一定のリズムで謝り続けた。内側から湧き続けるモノにひどく懐かしさを感じたけど、それが何なのかわからないまま……。

 ただ一つわかることは私が取った行動の原因は私の内側から湧き出る"モノ"であることだと言うこと。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 それでもどうしたらいいかわからなくて謝り続けた。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 "何か"を守るように。
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