上 下
30 / 48
怖くない怪談

しおりを挟む




 自分で出会した話じゃないので趣旨がズレますが、体験談があまりにも残念なものですから仕事場のひとに「ないですか?」と訊ねてみました。書いていいよと許可はいただいています。
 なんでも昔怪談系の活動をしていたことがあるらしくてその頃の話はあるけどなぜか忘れて思い出せないと言いつつ、そういえばと話してくれたのが以下です。仕事場が機械音でうるさいため細部はよく聞き取れなかったこともあり、想像で補っています。

 始まりは先輩の引越しだったそうです。
 安い物件イコール訳あり物件。そうと知っていても安い家賃というのは魅力的なもので、先輩は既に契約をして引っ越していたそうです。それでもやはり気になるというのは、後悔先に立たずの良い例かもしれません。
 先輩に相談された彼は友人のA君に相談を持ちかけました。なぜなら、ままあることですが、A君は霊感が強いタイプだったからです。何かが見えるようならということで、先輩のアパートにお邪魔することになりました。


 案内された部屋に入る頃にはA君はすでに挙動不審で、彼やっぱりと思いつつも見えない自分や先輩には実害がないため夕ご飯をご馳走になることになりました。

 しかし。

 5

 窓を背中に先輩が座り、テーブルを挟んで対面する彼とA君。
 和やかな食事です。

 4

 テレビで流れる画像に笑い声すら上がります。

 3

 「それはないだろう」とか、「お約束だよな」とか。

 チラチラとA君は視線を先輩の方へと向けてしまうたびに慌てて顔を背けます。
 先輩は気になるようですが、元々おおらかな性格というのもあって特に何も言いません。

 2

 いいかげんキレそうになったのは彼の方でした。 

 1

 けれどそれより早く、A君が動きました。
 先輩に顔を向けたと思うと勢い立ち上がり、何も言わずに部屋を出て行ったのです。

 先輩に挨拶もそこそこ彼はA君を追いかけました。

「なんだよお前の態度!」
 アパートの外で追いついた彼がA君の肩を掴み、詰ります。
「怖かったんだよ!」
 色をなくした顔のまま、A君が彼に叫ぶように答えます。
「何があったんだよ」
 彼には分かりません。けれど、A君の表情が尋常ではないのだけは分かります。
「手があったんだよ」
 ポツポツと説明するA君によれば、彼が先輩の方に視線を向けるたびに彼の背後に人の手だけが見えたのだそうです。それも、
「指がだんだん減ってくんだ」
「?」
「最初は五本だった」
 片手だからな。
 それから現れるたびに四本三本と減っていって、最後一本になったときにA君は耐えられなくなったと。
「わかるだろう?! カウントダウンしてたんだ。次に顔をあげたとき何が起きるのか怖くてたまらなかったんだ」


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ボケ防止に漫画投稿初めてみた!

三森まり
エッセイ・ノンフィクション
子供に手がかからなくなったし使える時間めっちゃ多くなったのでボケ防止に何かはじめようかなぁ そうだ!(・∀・)「指を動かす 頭を使う 家にいても出来る!!」という事で インターネットエクスプローラーのTOPページで宣伝してる この「アルファポリス」とやらをやってみよう! という事で投稿初めてみました へいへい 漫画描くの楽しいよ! と そんなエッセイと 私のアルポリ(どんな約し方がスタンダートなのか知ってる方教えてください)での成果?を綴る予定です(・∀・)b

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...