恋愛小説の世界に転生したら王子が俺を溺愛してた件について

第一章

第２話 弟よ、なぜお兄ちゃんのアナル処女を奪おうとするんだい？

「お兄ちゃん、無事だったんだねっ!?」
「あ、ああ」

   よく手入れされた明るい茶髪と夕焼けをイメージさせる目をしている弟、ルートが俺に抱きついてきた！   さっきまで倒れてたのに……。

「きっとぼくの愛が伝わったんだよね？   ねっ？」

   備考、ブラコン。
   赤い瞳を爛々と輝かせ、俺の胸に頭をうりうりと擦り付けてくる。わあかわいい♡‬

「お兄ちゃん、まだあのド変態にアナル処女奪われてないよね？」
「弟よ、アナルは性行為をするためにあるものではないって知ってるかい？」
「なにごとにも例外はつきものだよ？   お兄ちゃんのアナルは性器だよ？   分かる？」

   ここで分かるって言ったら負けな気がする。いや分からんけど。

「ぼくはね？   お兄ちゃんとヌルヌルになってズブズブイチャイチャするのが夢なんだよ？」
「ごめんな弟よ。俺、その夢は支持できない」
「なんでさ！」

   パッと顔を上げて『信じられない』とでも言った驚きの表情を浮かべているルート。俺はそんなお前に驚きだよ。

「いい？   お兄ちゃんのアナルはひとつしかないわけ。分かる？」
「それは分かる」
「そんなお兄ちゃんのアナル処女を破ることはすごくレアなわけ。分かる？」
「まずなんで破られること前提で話しているのかな？」
「え？   アナルなんて挿入するためにあるんじゃないの？」
「座薬だよね!?」
「……」

   なぜそこで黙る。あとなぜ俺は真顔で弟とこんな会話しなきゃならん。

「とにかくお兄ちゃんのアナル処女はぼくが頂くよ！」

   涙目になりながらも俺のアナルがどれだけ大事かを懇々と語り出すルート。俺よくアナルの処女を守り抜いてるもんだなぁ……。

「そんなに語っても無駄だブラコン！」
「くっ、その声は……！」
「僕がナイルくんのアナル処女を頂く」

   いやお前にもやんねぇよ。