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第一章
第十話 目覚め
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「んっ……」
太陽の眩しさに気づき、私は目を覚ました。
いつもとは違う天井に違和感を覚えたものの、すぐに昨晩のことを思い出し顔を赤くさせる。
私とディラン様は、昨日確かに繋がったのだ。
しかしそれを思い出すと、そのほかのことも思い出されるわけで。
数々の恥ずかしい言動や行動に再びベッドへ潜りたくなったとき。
「おはよう、ソフィア」
「ディラン様……おはようございます」
隣にあった椅子に座っていたディラン様が柔らかく微笑みながら挨拶をする。
私よりもかなり早く起きたのだろう。ディラン様はもういつもの黒い軍服のような服を身に纏っていた。
ここまで来ると、いよいよ自分が次期王妃の最有力候補だという自覚も出てくる。昨日のことで愛想を尽かされていなければいいが。
眠る直前の言葉もあるけれど、それでも不安なものは不安だ。
一度、本当に王妃候補として残していただけるのか聞こうとしたら、先回りしてディラン様が口を開く。
「ソフィアの寝顔が可愛くて見とれてしまい、起こすのが遅くなったが今日は忙しいぞ。まず、お母様――つまり、王妃に会いに行かなくてはならない。そのあと、国王にもな」
「は、はいっ!?」
最初嬉しいことを言ってもらってかなり気分が向上したのだが、そのあとが驚きすぎて折角の言葉が吹っ飛びかけた。
王妃様に会ったあと、国王様にも会うのか。
私が思っているより話が進んでいることに安心と喜ばしさを覚えたものの、やはり精神はかなり削られるだろう。
これが王家とも繋がりが深い家で、頻繁に王妃様や国王様に会っているというのならばまだしも、私は国王様のお父様がお亡くなりになられたときのみ近くで顔を見たくらいしかないのだ。
その他の儀式などでも顔を見たことはあるものの、近くではないのでカウントしなくてもよいほどだろう。
王妃様や国王様の評判はいいらしいので、間違っても紅茶をかけられることはないと思うが。
「安心しろ、お父様に会うのは明日だし、二人とも悪い人ではない」
「いえ、お二人の人となりを心配していたわけではなくっ」
「それも安心しろ。分かっている」
顔に心配が出ていたのだろうか、気遣ったディラン様が口を開くも、私かて誤解させるような言動をするわけにはいかない。
仮にこれで「それならば安心です」みたいなことを言っても糾弾されることはないと思うが、一応。
「では、早速メイドに着替えを取りに行かせるが何か希望などはあるか?」
「特にはありません。……けれど」
「どうした?」
私を大事に思ってくれていることが伝わる、優しい声色で問うディラン様に、私は恥ずかしがりながらも言った。
「ディラン様の好みにしていただけたらな、なんて」
「……ソフィア、俺を悩殺させる気か」
「い、いえっ! 決してそんなことは!」
なんだこいつ媚びやがって、と思われるところは想定していたが、まさか顔を赤くして悩まし気に手を当てることになるなんて考えもしなかった。
「それならいいんだ……。詳しい説明はメイドからしてくれると思うから、まぁ気楽にしておくといい。俺は少し場の設定などをしておくから離れるぞ。迎えに来るからな」
「はいっ」
ディラン様が動いているなかで気楽にしていいのかは疑問だったが、本人が気楽にしておいたらいいと言っているのだから大丈夫なはずだ。
部屋を去ってゆく彼の大きな背中を見届けていると、メイドさんが持ってきてくれる服を着れば、もうちょっとはディラン様を独り占めできる自分に近づいてくれるだろうか、という思いが脳裏をよぎる。
そう期待感を膨らませながら、私は彼と交わったこの部屋で王妃様と対面できる時間を待った。
太陽の眩しさに気づき、私は目を覚ました。
いつもとは違う天井に違和感を覚えたものの、すぐに昨晩のことを思い出し顔を赤くさせる。
私とディラン様は、昨日確かに繋がったのだ。
しかしそれを思い出すと、そのほかのことも思い出されるわけで。
数々の恥ずかしい言動や行動に再びベッドへ潜りたくなったとき。
「おはよう、ソフィア」
「ディラン様……おはようございます」
隣にあった椅子に座っていたディラン様が柔らかく微笑みながら挨拶をする。
私よりもかなり早く起きたのだろう。ディラン様はもういつもの黒い軍服のような服を身に纏っていた。
ここまで来ると、いよいよ自分が次期王妃の最有力候補だという自覚も出てくる。昨日のことで愛想を尽かされていなければいいが。
眠る直前の言葉もあるけれど、それでも不安なものは不安だ。
一度、本当に王妃候補として残していただけるのか聞こうとしたら、先回りしてディラン様が口を開く。
「ソフィアの寝顔が可愛くて見とれてしまい、起こすのが遅くなったが今日は忙しいぞ。まず、お母様――つまり、王妃に会いに行かなくてはならない。そのあと、国王にもな」
「は、はいっ!?」
最初嬉しいことを言ってもらってかなり気分が向上したのだが、そのあとが驚きすぎて折角の言葉が吹っ飛びかけた。
王妃様に会ったあと、国王様にも会うのか。
私が思っているより話が進んでいることに安心と喜ばしさを覚えたものの、やはり精神はかなり削られるだろう。
これが王家とも繋がりが深い家で、頻繁に王妃様や国王様に会っているというのならばまだしも、私は国王様のお父様がお亡くなりになられたときのみ近くで顔を見たくらいしかないのだ。
その他の儀式などでも顔を見たことはあるものの、近くではないのでカウントしなくてもよいほどだろう。
王妃様や国王様の評判はいいらしいので、間違っても紅茶をかけられることはないと思うが。
「安心しろ、お父様に会うのは明日だし、二人とも悪い人ではない」
「いえ、お二人の人となりを心配していたわけではなくっ」
「それも安心しろ。分かっている」
顔に心配が出ていたのだろうか、気遣ったディラン様が口を開くも、私かて誤解させるような言動をするわけにはいかない。
仮にこれで「それならば安心です」みたいなことを言っても糾弾されることはないと思うが、一応。
「では、早速メイドに着替えを取りに行かせるが何か希望などはあるか?」
「特にはありません。……けれど」
「どうした?」
私を大事に思ってくれていることが伝わる、優しい声色で問うディラン様に、私は恥ずかしがりながらも言った。
「ディラン様の好みにしていただけたらな、なんて」
「……ソフィア、俺を悩殺させる気か」
「い、いえっ! 決してそんなことは!」
なんだこいつ媚びやがって、と思われるところは想定していたが、まさか顔を赤くして悩まし気に手を当てることになるなんて考えもしなかった。
「それならいいんだ……。詳しい説明はメイドからしてくれると思うから、まぁ気楽にしておくといい。俺は少し場の設定などをしておくから離れるぞ。迎えに来るからな」
「はいっ」
ディラン様が動いているなかで気楽にしていいのかは疑問だったが、本人が気楽にしておいたらいいと言っているのだから大丈夫なはずだ。
部屋を去ってゆく彼の大きな背中を見届けていると、メイドさんが持ってきてくれる服を着れば、もうちょっとはディラン様を独り占めできる自分に近づいてくれるだろうか、という思いが脳裏をよぎる。
そう期待感を膨らませながら、私は彼と交わったこの部屋で王妃様と対面できる時間を待った。
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