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第二章

第53話 悪役令嬢の品格

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 一連の出来事がある程度落ち着いたときのこと。
 リノちゃんは思い出したかのように鞄から綺麗にラッピングされた小さな箱を取り出し、ニコリと微笑んでカイルに差し出した。
 まさか――!

「カイル様、先日はハンカチを貸していただき誠にありがとうございます。こちら新品のハンカチと印ばかりのお礼の品です」
「え? あ、ありがとう」

 ンンンンンンンンンンンンンンンン!
 女子力の塊のような行動に圧倒されそうになる。

「カイル、あなた人から感謝されることもできたのね……」
「酷いねラミちゃん!?」

 ああっ、圧倒された反動で酷いことを言ってしまった!
 こんなことだから負けそうになるんだよ私!!


 そこからもリノちゃんの快進撃は続いた。


「あっ、シャー芯がない……」
「カイル様、よろしければお使いください」
「ありがとう」

    私が『使う?』と言いかけたら、リノちゃんがそれを上回る速度でシャー芯を二本カイルに贈答していた。
 行動が速い……。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「はぁ……」

 静かに考え事が出来るところはトイレ(カイルが先生に呼び出されているときなどのストーキングしてこないとき限定)しかない。
   しかし、リノちゃんの変わり様は予想してなかった。ラミちゃん嬉ショックである。
 夏休みの間に……実家に戻って……うん。
 あとは私もプレゼントとか作ろうかなぁ。
 カモフラージュのため水を流してからドアを開ける。とそこに。

「ラミちゃぁん……♡」
「ここ女子トイレなんだけど」
「俺たちの愛に場所もクソもないよ」
「いやあるところはあるから。守らなきゃいけないルールってものはあるから」
「ルールなんて……壊すためにあるんだろうがァァァ!」
「作る側の人が何言ってんのォォォ!?」
「そういえば俺そっち側だったわ」

 この人に国を任せて本当に大丈夫なのだろうか。妹さんか弟さんに譲った方がいいんじゃないのだろうか。
 王宮内でカイルが『王族歴代最高の才』と囁かれている事に疑問しか覚えないのだが……。

「この空間マジで最高……♡」
「うん、出て行って?」

「俺が、隣にいたらダメですか?」

「TPO考えたうえで隣にいてください」

 なんでシリアス風にした……。

「ということであと十分はここでヘブンを味わっておくから。ラミちゃん待っててくれない?」
「はよ出てけ」

 私は手を洗った後(カモフラージュのため)カイルをグイグイと押し出した。
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