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第二章

第46話 悪役ヒロインの転落

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「おーい? リノちゃん」

 リノちゃんは意外にも昔のような表情――反応したいけど反応できないような、焦った表情を浮かべていた。
 焦ってるのは私なのに……と、理不尽にも似たような気持が湧き上がってくる。
 ダメだ。そうしたら私は本当に悪役令嬢になってしまう。でも本当は私は悪役令嬢で、リノちゃんはヒロインでああああああああああああああああああっ!

「リノちゃん」

 いやいや! 公爵家なだけあって私が有利か? 否ッ! あの変態カイルは身分で人を選ばない!
 だから完全に個人の実力勝負なんだ!
 カイルが寝返ったらもうひとたまりもないし……断罪イベントである婚約破棄&週一コンビニ弁当になってしまう! 地味だけどできれば避けたい!

「リノちゃん!? 大丈夫!?」

 ハッ、しまった、私も呼び掛けた方がよかったよね!?

「あああああああああああああ! も、申し訳ございませんカイル様!」
「いや、そんなに謝らなくてもいいんだよ? 病み上がりだもんね?」

 私はこれまで声をかけなかった分を取り戻すかのようにリノちゃんに体調について尋ねた。

「リノちゃん大丈夫?」
「ら、ラミちゃん……!」

 そ、そんな聖女でも見るかのようなまなざしで見られると良心が痛むわ……。ごめんリノちゃああああああああああああああああああああああああああ!

「さっすが俺の聖女ラミちゃん! 慈愛に満ちているね!」
「私が慈しむ心だけで心配してると思ってるの?」
「サーセンした」
「分かればよろしい」

 慈しむ心よりも心配と罪悪感よ……まったく。
 でもリノちゃんのまなざしがより一層輝いてるのが気になるわね……。まるで奇跡を目の当たりにしたような目してるわ……。
 そこでリノちゃんは初めて周りの環境を見れる状態に落ち着いたらしく。

「カイル様、その袖は……」

 リノちゃん優しいわね。
 ヤダ……この子と本気で戦ったら私……勝ち目なさすぎっ!?

「ああ、まあ戦場に行ったら血まみれの仲間を運ぶことくらいよくあるから」

 ここでカイルのイケメンスマイル……あ、惚れましたわこの子。完全に。
 ひええ……。

「ありがとうございました」

 しかも気遣いすごい!!
 アワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワ……。

「いやいや、そんなことしなくても大丈夫だから! ね? ね!?」

 これは……早めになんとかせねば。
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