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第二章
第40話 初代転生者
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「ここ、ラミちゃんに見せたかったものがあるんだ」
右手で誘導されたまま連れてこられた場所は、王家が管理している資料室のような場所だった。
そこには絵があって、大きい文字でこう書かれてあった。
『エターナルストーリー♡ クズプリンスと紡ぐ更生ラブファンタジー☆』
これって『エタラブ』の会社が作った全然売れなかったゲームじゃない……。
チラッとしかパッケージを見たことしかないが、この絵とほぼ同じだったし、絵柄は『エタラブ』と同じだったので、この絵を描いた人物の画力の高さがうかがえる。
ここまで正確に作るということは『エタスト』のパッケージ画を模写したことがある人物か、あるいは――。
「この絵を描いた人物は、中高生向けの書物のイラストを手掛けていた。その人も『この世界はゲームだ』って言ったんだって」
「ちょっと待って、あなたさっき『その人も』って言ってなかった……?」
「うん、ゴメンねラミちゃん」
いや何あなたサラッと『君の机の引き出しを無許可で見させてもらったよ☆』っていうカミングアウトしてんの? いったん刑務所体験したほうがいいんじゃないの?
「あの日渡せなかったラブレター……青春だネ☆」
「しばくぞ」
「スンマセン」
勝手に見た挙句文句を垂れるとは……。まあ流石カイルとしか言いようがない。ディスってます。
「まあ話を戻して……ラミちゃんもそう思うの?」
カイルがじっと私を見つめて問う。
私はもう隠し通せないと察すると共に、カイルには知っておいてほしいという欲も混じった。
「ええ」
たった一言で答えを示す。
御託のような言葉をペラペラと並べるよりかはよっぽど信頼できる答えの示しかただろう。
「……そっか」
カイルはどこか遠い目をして言った。心ここにあらずといった感じだ。
「もっと早く言うべきだったかしら……」
でも信用がない状態で前世がどうのこうのと言ってもただの変人と化してしまうと思ったが、私がここの世界がゲームだと気づいたときにはもうカイルから信用されていたのではないか?
思考がぐちゃぐちゃになってくる。
「いや、それはいいんだ。だけどさ、俺がゲームの登場人物のーー作られたキャラクターだったとしても好きになってくれるの?」
「愚問よ、そんなの」
私があなたのことを好きだと自覚したときにはもうここがゲームだと知ってたわよバカ。
「向こうでは確かにキャラクターかもしれない。でもあなたは私の目の前で、自分の意思で生きている。それだけで充分なんじゃない?」
向こうの人間はゲームキャラにガチ恋した人間として書かれてしまうのだろうか。
だけど。
それでも私はーー。
「あなたが好きだから」
それだけで片付けたらいいじゃない、面倒くさい。
「ラミちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
この人抱きつくの好きだなぁ。
私はカイルの背に腕を伸ばす。
「そ、その人がこの国にある致命的なバグが起こっている地点を割り出してもといる世界に帰ったって言ったらラミちゃん帰りそうで……!」
「なによそれ」
世界観とかもキャラクターとかもバグみたいなものなのになんで更にバグが起こるのよ製作陣のバカ!
「帰らないよ」
「ふえええええええええええええええ!」
号泣するカイル。帰らないのにそんなになく必要ないでしょ?
あと制服に鼻水ついたんだけど。そろそろ帰らなきゃ明日の朝起きれないんだけど。
ていうか早退扱いになってるのかしら、アレって。
私は膝をついておんおん泣いているカイルを見下ろす。
そんなカイルを見ているともうそんなことどうでもよくなってきた。
「帰ろう、カイル」
ずいぶん逸れてしまったストーリーだけど、自分達のストーリーは自分で紡ぐことができるから。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔でイケメン臭溢れる微笑みを浮かべて左手を差し出す。
その前に鼻かめ。
右手で誘導されたまま連れてこられた場所は、王家が管理している資料室のような場所だった。
そこには絵があって、大きい文字でこう書かれてあった。
『エターナルストーリー♡ クズプリンスと紡ぐ更生ラブファンタジー☆』
これって『エタラブ』の会社が作った全然売れなかったゲームじゃない……。
チラッとしかパッケージを見たことしかないが、この絵とほぼ同じだったし、絵柄は『エタラブ』と同じだったので、この絵を描いた人物の画力の高さがうかがえる。
ここまで正確に作るということは『エタスト』のパッケージ画を模写したことがある人物か、あるいは――。
「この絵を描いた人物は、中高生向けの書物のイラストを手掛けていた。その人も『この世界はゲームだ』って言ったんだって」
「ちょっと待って、あなたさっき『その人も』って言ってなかった……?」
「うん、ゴメンねラミちゃん」
いや何あなたサラッと『君の机の引き出しを無許可で見させてもらったよ☆』っていうカミングアウトしてんの? いったん刑務所体験したほうがいいんじゃないの?
「あの日渡せなかったラブレター……青春だネ☆」
「しばくぞ」
「スンマセン」
勝手に見た挙句文句を垂れるとは……。まあ流石カイルとしか言いようがない。ディスってます。
「まあ話を戻して……ラミちゃんもそう思うの?」
カイルがじっと私を見つめて問う。
私はもう隠し通せないと察すると共に、カイルには知っておいてほしいという欲も混じった。
「ええ」
たった一言で答えを示す。
御託のような言葉をペラペラと並べるよりかはよっぽど信頼できる答えの示しかただろう。
「……そっか」
カイルはどこか遠い目をして言った。心ここにあらずといった感じだ。
「もっと早く言うべきだったかしら……」
でも信用がない状態で前世がどうのこうのと言ってもただの変人と化してしまうと思ったが、私がここの世界がゲームだと気づいたときにはもうカイルから信用されていたのではないか?
思考がぐちゃぐちゃになってくる。
「いや、それはいいんだ。だけどさ、俺がゲームの登場人物のーー作られたキャラクターだったとしても好きになってくれるの?」
「愚問よ、そんなの」
私があなたのことを好きだと自覚したときにはもうここがゲームだと知ってたわよバカ。
「向こうでは確かにキャラクターかもしれない。でもあなたは私の目の前で、自分の意思で生きている。それだけで充分なんじゃない?」
向こうの人間はゲームキャラにガチ恋した人間として書かれてしまうのだろうか。
だけど。
それでも私はーー。
「あなたが好きだから」
それだけで片付けたらいいじゃない、面倒くさい。
「ラミちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
この人抱きつくの好きだなぁ。
私はカイルの背に腕を伸ばす。
「そ、その人がこの国にある致命的なバグが起こっている地点を割り出してもといる世界に帰ったって言ったらラミちゃん帰りそうで……!」
「なによそれ」
世界観とかもキャラクターとかもバグみたいなものなのになんで更にバグが起こるのよ製作陣のバカ!
「帰らないよ」
「ふえええええええええええええええ!」
号泣するカイル。帰らないのにそんなになく必要ないでしょ?
あと制服に鼻水ついたんだけど。そろそろ帰らなきゃ明日の朝起きれないんだけど。
ていうか早退扱いになってるのかしら、アレって。
私は膝をついておんおん泣いているカイルを見下ろす。
そんなカイルを見ているともうそんなことどうでもよくなってきた。
「帰ろう、カイル」
ずいぶん逸れてしまったストーリーだけど、自分達のストーリーは自分で紡ぐことができるから。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔でイケメン臭溢れる微笑みを浮かべて左手を差し出す。
その前に鼻かめ。
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