悪役令嬢のはずがなぜ王子様に溺愛されているのでしょう

第二章

第39話 リア充爆発してほしいですね（ニッコリ）

「らあああああああああああああああああああああみちゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
「声が大きい」
「だって！　だってえええええええええええええええええええええええ!!」

　私は半べそをかきながら叫ぶカイルの背中を優しく撫でる。

「お、俺忘れられとるかと思うてェェェェェ！」
「いいから声控えなさい。うるさいし完全にアレな人に思われるから」
「ラミちゃんはいつから敬語じゃ無くなったんだっけ……？　もしかしてそのときから？　え、もしかしてずっと好き……!?」

　この変態の考察通りというのは癪ではあるが、文句は言ってられない。

「す、好き……」
「うれぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい！」

　私が『なのかも？』と言う前に『うれぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい！』とか叫ばれたのでもうなされるがままにされている。いつもほぼなされるがままだったからね。

「俺……嫌われとるんちゃうか思うて……ふぇええええええええええええええええええええええええええ！」
「うるさい」
「ウィッス」

　まあ、そこまで喜んでくれることは嬉しい事ではあるけれど……。
　……………………やっぱり嬉しい。

「今ラミちゃんがデレた気がする」
「何なの？　超能力者？」
「え、雰囲気そうかなぁって思っただけなんだけどホントだったの!?　嘘ォ!?」

　目を丸くして驚くカイル。ぱっと見アホの子だ。内面もそうだっけ。

「ラミちゃん、俺今思ったけど全然彼氏っぽくないね」
「今までずっと非リアストーカーだもの。諦めなさい」
「俺だって嫌がってる相手にストーカーしないよ？　ホントだょ？」

　なんだか論点がズレてる気がするな……。

「えっと……愛してます」
「え、急になに？」

　いつもこんなこと言うときはギャグっぽくなったり何かしらの要素が加わって台無しになるんだけど……。おかしい。本当にこいつカイルか？

「あ、あい……あいして……」
「いいから！　二回も言わなくていいから！　聞こえてるから!!」
「恥ずかしいのに……耐えたのに……はぐらかすような回答しかしてくれないし……」
「ごめんねー！　返答するから！」

　私は決意表明のように口に出す。

「私も、愛してます」
「ぎゃんかわ」
『ドサッ』
「ギャ――――――――――ッ！　カイルが倒れたァァァァァ――――ッ！」
「我が生涯に……一片の悔い無し……」
「悔いて！」

　私はカイルのすぐそばで膝をつく。

「こ、これからやっと恋人らしいことできると思ったのに……」
「あれっ、ラミちゃんなんで膝なんかついてるの？　俺の身体に膝をついてマイプリンセス？」

　不死鳥ですかこの人？

「まあ早速だけどハネムーンと洒落込まない？」
「いや、私達まだ結婚してないから」
「婚約しようぜ！」
「それは前向きに検討するけどっ……！」
「子作りしようぜ！」
「却下」

　その瞬間、カイルの表情が絶望に染まる。何なのコイツ。

「いつかラミちゃんから『旦那様……子供作りませんか？』って言わせてみせる！」
「ねえ口調とか変わってるんだけど!?　あなた一体ナニするつもり!?」
「さあね」

　私の未来の旦那となる人物はイタズラっぽい笑みを浮かべて、ごく自然な動きで私の右手を優しく掴んだ。