71 / 100
ある公爵令嬢の話
3
しおりを挟む
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ! 楽しいねっ! あははははははははははははははははは!」
「待って、怖いんだけど!」
ひたすらひとりでに笑うカイル。早くも帰りたいです。
「ほら、この腰を振っているバッタ……まるで僕たちみたいだね……」
「何でよっ! 私そんなことしてないわよ!?」
「またまたぁ……♡ そんなこと言ってても身体は正直だったじゃないかぁ……♡」
「そんな経験ありませんけど!?」
「ヤダ、僕、愛されすぎっ……?」
「気のせいよ」
なんだこの話すだけでどっと疲れるこの感じ……。噛み合ってない気もするし……。
「そう、あれはまるで熟年の夫婦のような絡みだったね」
「駄目じゃないのそれ」
熟年夫婦のアレが悪いとは思ってないけど、齢14でそう言われるのは傷つくわ。やったことないけど。
「またそう言って現実逃避しようとするー! もう、ダメだよ! 現実から目を背けちゃ!」
「ブーメラン刺さってるわよ。時には妄想に浸るのもいいと思うけどあなたの場合やりすぎだから」
「そんなことは置いといて、白樺並木までついたよ!」
自分のことも棚に置いたぞコイツ……。
「……ていうかさ」
「どうしたの?」
「ここ木以外なんもなくね?」
「否定はできないね」
低い気温がダイレクトに感じられ、周りには田園風景のみが広がっているこの場所。途中まで馬車でかっとばしてきたけど……。
「ねえ、よくよく考えたらここなんもすることないよね」
「できることなら先に気が付いてほしかったわ」
後先考えずに行動するのはいつものことだけど……。もうちょっと行き先を問い詰めてから来てもよかったわね。
「ほら、星が見えるよ……。名前なんのこっちゃ分からんけど」
「同感ね」
有名な星以外知りません。北極星とか。どれか知らんけど。
「ああ、こんな日には僕に纏わりつくものを全て捨て去って産まれたままの姿でこの風景を祝福したい欲にかられるね……」
「つまり全裸になりたいってことね? そうなのね? 取り繕っても無駄だからね?」
「分かった。取り繕わずにさらけ出すよ……!」
あかん、カイルが脱ぎだした! 男子寮の飲み会でもこんなことにはならないぞ! 行ったことないけど!
「ああ、なんてすがすがしいんだ……。ああっ! ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ♡♡」
「ちょっと! いくら人通りが少ないとはいえこんなところで全裸にならないでちょうだい!」
「駄目ぇ……♡ めちゃくちゃになりゅのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ♡♡ おっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお♡♡♡」
頬に手を当て、恍惚の表情を浮かべるカイル。ダメだ聞いちゃいない。
「あ、さてはラミちゅわん。僕のパンツが欲しいっていう魂胆だね? んもぉ♡ しょうがないなぁ! 僕の下半身の匂いを存分に堪能して家宝にしてね? あ、僕の家宝でもあるのかなッ!」
そう言い、ぐいぐいと己の使用済み下着を公爵令嬢に押し付けるカイル(第一王子)。
コイツマジでヤベエな。
「おっ! 漂ってくる馬糞の匂い! たまらん! ハァハァ……! クンカクンカ、スーハ―スーハ―……! しゃいこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「いや、匂いフェチにしてもストライクゾーン広すぎでしょう!?」
肺を馬糞の匂いで埋めるかの如く勢いよく息を吸って吐くカイル。しかも、匂いを堪能している様子。
「待ってろ馬糞! 今から僕が生クンカクンカスーハ―スーハ―するために駆け付けてやるからな!」
「馬糞もあなたなんかお呼びじゃないと思うのだけれど。あと生クンカクンカスーハ―スーハ―ってなによ」
わかるけど。言わんとしていることはわかるけど分かりたくなかった。
「それはこういうことさ! おっほおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 馬糞しゃいこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ちょっとまって、この人酔ってない?
そういえばこころなしかいつもより顔が赤い気が……。
「UEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEI!」
パリピのような声を上げるとともに馬糞の中に勢いよくジャンピングダイブ!
『ベちゃっ』
「おほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ダイレクト馬糞なのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお♡♡」
なら早いところ止めたほうが良いわよね。
いや、でもヤツなら素面でもやりかねん。というか本当に酒を飲んだのか……?
「うへええええええええええええおええええええええええええええええええええええええええおええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
馬糞の上にゲロ吐いてるよこの人。
やっぱりお酒飲んでるのかしら?
馬糞ダイブしたいならどうでもいい服着てきたほうが良かったと思うのだけれど。
「あの、カイルさん……?」
「どうしたのラミちゅわん、まさか愛の告はオロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ」
……ごめんカイル。一つ言わせてもらいたいことがあるの。
今のあなた絶望的な悪臭を放っているわ。
「待って、怖いんだけど!」
ひたすらひとりでに笑うカイル。早くも帰りたいです。
「ほら、この腰を振っているバッタ……まるで僕たちみたいだね……」
「何でよっ! 私そんなことしてないわよ!?」
「またまたぁ……♡ そんなこと言ってても身体は正直だったじゃないかぁ……♡」
「そんな経験ありませんけど!?」
「ヤダ、僕、愛されすぎっ……?」
「気のせいよ」
なんだこの話すだけでどっと疲れるこの感じ……。噛み合ってない気もするし……。
「そう、あれはまるで熟年の夫婦のような絡みだったね」
「駄目じゃないのそれ」
熟年夫婦のアレが悪いとは思ってないけど、齢14でそう言われるのは傷つくわ。やったことないけど。
「またそう言って現実逃避しようとするー! もう、ダメだよ! 現実から目を背けちゃ!」
「ブーメラン刺さってるわよ。時には妄想に浸るのもいいと思うけどあなたの場合やりすぎだから」
「そんなことは置いといて、白樺並木までついたよ!」
自分のことも棚に置いたぞコイツ……。
「……ていうかさ」
「どうしたの?」
「ここ木以外なんもなくね?」
「否定はできないね」
低い気温がダイレクトに感じられ、周りには田園風景のみが広がっているこの場所。途中まで馬車でかっとばしてきたけど……。
「ねえ、よくよく考えたらここなんもすることないよね」
「できることなら先に気が付いてほしかったわ」
後先考えずに行動するのはいつものことだけど……。もうちょっと行き先を問い詰めてから来てもよかったわね。
「ほら、星が見えるよ……。名前なんのこっちゃ分からんけど」
「同感ね」
有名な星以外知りません。北極星とか。どれか知らんけど。
「ああ、こんな日には僕に纏わりつくものを全て捨て去って産まれたままの姿でこの風景を祝福したい欲にかられるね……」
「つまり全裸になりたいってことね? そうなのね? 取り繕っても無駄だからね?」
「分かった。取り繕わずにさらけ出すよ……!」
あかん、カイルが脱ぎだした! 男子寮の飲み会でもこんなことにはならないぞ! 行ったことないけど!
「ああ、なんてすがすがしいんだ……。ああっ! ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ♡♡」
「ちょっと! いくら人通りが少ないとはいえこんなところで全裸にならないでちょうだい!」
「駄目ぇ……♡ めちゃくちゃになりゅのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ♡♡ おっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお♡♡♡」
頬に手を当て、恍惚の表情を浮かべるカイル。ダメだ聞いちゃいない。
「あ、さてはラミちゅわん。僕のパンツが欲しいっていう魂胆だね? んもぉ♡ しょうがないなぁ! 僕の下半身の匂いを存分に堪能して家宝にしてね? あ、僕の家宝でもあるのかなッ!」
そう言い、ぐいぐいと己の使用済み下着を公爵令嬢に押し付けるカイル(第一王子)。
コイツマジでヤベエな。
「おっ! 漂ってくる馬糞の匂い! たまらん! ハァハァ……! クンカクンカ、スーハ―スーハ―……! しゃいこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「いや、匂いフェチにしてもストライクゾーン広すぎでしょう!?」
肺を馬糞の匂いで埋めるかの如く勢いよく息を吸って吐くカイル。しかも、匂いを堪能している様子。
「待ってろ馬糞! 今から僕が生クンカクンカスーハ―スーハ―するために駆け付けてやるからな!」
「馬糞もあなたなんかお呼びじゃないと思うのだけれど。あと生クンカクンカスーハ―スーハ―ってなによ」
わかるけど。言わんとしていることはわかるけど分かりたくなかった。
「それはこういうことさ! おっほおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 馬糞しゃいこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ちょっとまって、この人酔ってない?
そういえばこころなしかいつもより顔が赤い気が……。
「UEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEI!」
パリピのような声を上げるとともに馬糞の中に勢いよくジャンピングダイブ!
『ベちゃっ』
「おほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ダイレクト馬糞なのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお♡♡」
なら早いところ止めたほうが良いわよね。
いや、でもヤツなら素面でもやりかねん。というか本当に酒を飲んだのか……?
「うへええええええええええええおええええええええええええええええええええええええええおええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
馬糞の上にゲロ吐いてるよこの人。
やっぱりお酒飲んでるのかしら?
馬糞ダイブしたいならどうでもいい服着てきたほうが良かったと思うのだけれど。
「あの、カイルさん……?」
「どうしたのラミちゅわん、まさか愛の告はオロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ」
……ごめんカイル。一つ言わせてもらいたいことがあるの。
今のあなた絶望的な悪臭を放っているわ。
0
お気に入りに追加
1,060
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
転生悪役令嬢の前途多難な没落計画
一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。
私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。
攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって?
私は、執事攻略に勤しみますわ!!
っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。
※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい
ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。
だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。
気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。
だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?!
平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる