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第一章

第3話 学園にて

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「はぁー……」

 私は昨日から引きづっている疲労感をため息に乗せた。

「どうしたんだ? 話、聞くよ?」

 相変わらずの腹が立つレベルのイケボを惜しみなく使っているカイル様。
 変態だろうがなんだろうがイケボは使う人を選ばないんだろうなぁ、とか思っていたが。
 昨日のことを思い出し、極力冷めた声で私は変態にこう告げた。

「あなたのせいなんですけど」
「昨日はキスしなくてごめんね……」
「しばきますよ?」

 そのポジティブさはぜひともいろんな人にも見習ってほしいとは思ったが。

「そんな事言わないでマイハニー」
「誰がマイハニーですか」
「あと今日ホテル泊まらない?」
「サラッと言わないでくださいキモイです」
「ショック!」

 ちなみに『今日ホテル泊まらない?』とかいうセリフもばっちりイケボである。イケボの無駄遣いが甚だしい。
 というか、もう私よりクラスメイトがショックだと……いや全然違うかった。もう慣れてた。

「そんなうるさい口はーー」

 急に顔を近づけてキスしようとしてくる変態。なに、痴漢? あなた王族じゃなくて日本の一般庶民だったらとうの昔に少年院か前科者になってるわよ?
 という感想が山のように出てくる。あらためて私頑張ったわね……。
 まあ、寸前のところになったら普通に避けよう、と回避方法の方針を固めると。

『ゴツン!』
「リテイクしていいですか」

 あ、まずいぶつかる――と思った矢先。唇と唇が当たる前に鼻と鼻にゴツンと当たる。
 確かにあれだけ恰好をつけてこのザマだったらリテイクしたくなる気持ちも分からんでもない。

「今度隣国の王都で『かっぷる✩ラブ×ラブ♡こんてすと!』っていうのがあるんだけど一緒に出ない?」
「出ません」
「どうして!? 前世から定められし僕達の愛を知らしめるチャンスだよ!? 棒に振っていいの!?」
「前世から定められてないです」

 私前世日本の庶民なんですけど。女子高生ブランドを手に入れた矢先交通事故によってご冥福をお祈りされた不運な少女なんですけど。
 ていうかあなた最難関キャラじゃないですか、どこをどうしたら悪役令嬢にぞっこんになるんですか。

「隣国の王子と公爵家がそんなコンテストに参加したら王家はどう思いますか!?」
「守りたい、この愛情」
「ンンンンンンンンンンンンンンンン!」

 そういうことを言いたかったわけじゃない、と私は悶絶する。
 ストーカーは話が通じないってこの事だったんだなぁ……。
 ストーカーには縁がないとは思ってたけどまさか来世でこんなことになるとは思ってなかったよ。
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感想 44

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