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第七章 玄徳のロマン
異世界バイク。
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「はぁ~……」
原付の試走から数日。
データは集まり、いよいよ本格的にバイク制作に入ろうと思うのだが……なんか気分が乗らない。
まず、ロッソたち……バレンたちと仲良くしているのが気に食わないのか、俺のところに来なくなった。
ユキちゃんたちは三輪車に乗って遊びに来るんだが……嫌われたのかなあ。
そして現在、俺は一人で立ち飲み屋で飲んでいた。
「…………まあ、しょうがねぇよなあ」
エールを飲みつつ、煮物を食う。
立ち飲み屋。異世界でもけっこうあることに驚きつつも喜んだ。もしかしたらと思って聞いてみたが、出汁割りはやってなかった。今度、おでん作って出汁を日本酒で割って飲んでみるか。
エールを呑んでいると、俺のテーブルにジョッキがドンと置かれた。
「お邪魔するわね」
「ん? おう、ヴェルデ。なんだ一人か?」
「ええ。ロッソたち、顔合わせにくいみたいだから」
ヴェルデはエールをクイッと飲み、ジョッキをドンと置く。
「ゲントク。今日は、ロッソたちのこと話に来たの」
「……ロッソたちのこと?」
「ええ。あの子たちの過去ね」
ヴェルデは、エールを飲みながら話し始めた。
ロッソ、バレンの因縁。アオとウングの確執。ブランシュとリーンドゥの関係。
話を聞き、俺は納得する。
「ああ……まあ確かに、仲良くはできないよなあ」
「そういうこと。で、心許していたあんたが、因縁のある三人と仲良くしていたら、それはもう複雑な気分よ」
「……俺、嫌われたかなあ」
「それはない。というか、ロッソたちもどうしていいのかわかんないのよ。あんたに謝りたい気持ちはあるけど、バレンたちとは仲良くできないし……だから、今日もモヤモヤしたまま討伐依頼を受けたわ。おかげで、私は苦労だらけ」
「そ、それはご苦労さん……」
「はあ……あんたはどうせ、あの子たちが自分を嫌ってるって思って、そのまま関係を終わらせちゃおうとか思いそうだしね」
否定できん。
お涙ちょうだいの和解とか俺の趣味じゃないしな。ロッソたちが俺を嫌って離れるなら、俺はそれでもいいと思っていた。
どんなに仲良しでも、ふとしたきっかけで会うこともなくなり、そのまま疎遠になるなんて、大人じゃよくあることだ。高校とか中学の同級生なんて、もう顔も名前も思い出せないし。
まあ、少しは寂しい気持ちもある……でも、俺は大人でおっさんだし、和解のために奔走しようなんて気は起きなかった。
「そこまで薄情じゃないけど、無理して仲直しようとは考えてないな……喧嘩したわけじゃないけど」
「ロッソたちはそれじゃ嫌なんだって。でも、こういう気持ちが初めてで、困惑してる」
「……だからといって、バレンたちと距離を取るつもりはないぞ。俺は別に因縁があるわけじゃないし、俺からすれば、バレンたちもお前らと変わらんからな」
「そうなのよね……」
「俺は、俺だ。俺自身が嫌な相手とは関係を持つつもりはないし、そうじゃないなら友好的な態度を取るぞ」
「わかってる。でも……ロッソたちのこと、忘れないであげて。あの子たち、ちゃんとあなたに謝って、またいつも通りになりたいって思ってるから」
「……ああ」
俺とヴェルデはエールをおかわり、乾杯をする。
「お前でよかったよ。お前、因縁の相手とかいないしな」
「……それは嫌だけど、今回はよかったって思うしかないわね」
ロッソたち、また来るなら、しっかりおもてなししないとな。
◇◇◇◇◇◇
さて、数日が経過した。
俺はたまに持ち込まれる魔道具の修理をしながら、バイク用の部品を作っていた。
フレーム、エンジンのガワ、タンク、魔石、タイヤ……一つ一つの部品をしっかりと作り込む。
魔石は十つ星の物を使った。出し惜しみはしないぞ。
そして、全ての部品製作を終え、俺は汗をぬぐう。
「……よし」
「にゃあ。おじちゃん、ボール割れたー」
気が抜けそうになった。
いよいよ組み上げって思ったところで、ユキちゃんが割れたボールを持って来た。
職場の隣にある小さな空き地、子供たちの遊び場になったんだよな。元々は資材とか積み上げてあったんだけど、綺麗にしたのか空き地になっている。
三輪車が三台停車し、ヒコロクがユキちゃんたちと遊んでいる。
「どれどれ、見せてごらん……あらら、完全に穴空いてるな。ヒコロクが噛んだのか?」
「にゃう。ヒコロクが引っ掻いたら割れた」
「そうか。そうだ、ちょっと待っててな」
俺は、余った素材を使って加工を始める。
メタルオークの骨を焼いて柔らかくして曲げ、余ったラバーコブラの皮を細く糸状に切り、メタルオークの骨に通して編んでいく。
そして、コカトリスの羽とラバーコブラの皮を加工して『球』を作った。
「はい完成。さ、空き地に行こうか」
「にゃ……それ、なにー?」
空き地に移動。
俺は二本のラケット、そして『球』こと『シャトル』を子供たちに見せた。
「がるる……これ、なに?」
「バトミントンだ。これがラケットで、こっちがシャトル。ユキちゃん、これ持って」
「にゃ」
俺はシャトルを軽くラケットで打つと、ラバーコブラの皮同士が反発しけっこうな高さまで飛ぶ。
「ユキちゃん、俺がやったみたいに打って」
「にゃ、にゃあ」
ぽこんと、ユキちゃんはシャトルを打つ。
俺は再びユキちゃんに向かって軽く打ち、ユキちゃんも打ち返す。
すると、楽しくなってきたのか、ユキちゃんの動きが良くなってきた。
「にゃうう!!」
「はは、うまいぞ。ほれっ」
パコンとシャトルと打ち返すと、ユキちゃんは空振りし、シャトルが落ちた。
「こんな感じで遊ぶんだ。はい、クロハちゃん」
「がうー!! おもしろそう!!」
「きゅうう、わたしもやりたいー」
「ははは。交代でな、シャトルを落としたら交代で遊ぶといいよ」
「にゃー、じゃあリーサ、こうたい」
子供たちは、バトミントンで遊びだした。
ヒコロクもいるし、あとは大丈夫だろう。
俺は職場に戻り、さっそくフレームにパーツを組み込み始めた。
◇◇◇◇◇◇
全てのパーツを組み込み、微調整を加え……ついに、完成した。
「……できた」
外見はネイキッドバイク。だが、いくつかの部分にカウルを追加し、俺のオリジナルのスタイルになっている。
スピードメーターもないし、ガソリンも入れる必要がない。でも、それっぽい部品はくっついている。スピードメーター……さすがに作れない。
俺は、サスペンション部分をチェックし、ステアリングのアクセルを捻り、ブレーキレバーを握ってチェック。
「……できた」
もう一度言う。
やばい、顔がにやける。ついに完成したぞ俺のバイク。
入念なデータ収集から始まり、いろいろな検証、そして何度も図面を書き直し、ようやく完成した。
俺のバイク。完全オリジナル、部品一つから作った俺のバイク。
「……よぉし!!」
ガッツポーズ。
やばい。異世界に来て一番嬉しいかも。
「よし、よし落ち着け……エンジン、エンジンかけるか」
俺はエンジンキーを差し捻る。
残念ながらエンジン音はしない。このキーは、魔石に指示を送るコード部分の蓋を開閉するスイッチだ。蓋が閉まれば魔力の通り道がシャットアウトされ、魔石は起動しない仕組み。
そして跨る……あ、あああ。
「バイク……俺のバイク!! うおお……って、あれ」
今、気付いた。
「……し、しまったあああああああああ!!」
「にゃ」「がうー」「きゅう」『わう?』
俺の絶叫に反応し、ユキちゃんたちが顔を覗かせた。
「にゃあ。おじちゃん、どうしたの?」
「……メット、ジャケット、グローブ、ブーツを忘れた」
そう、バイクに夢中になりすぎ、ヘルメットなど作るのを完全に忘れていた。
言っておくが、このまま作業着で乗るなんて愚かな真似しないぞ。
「……仕方ない。試乗はお預けだ」
メットは自分で作る。ジャケット、グローブ、ブーツは特注で作ってもらおう。
ジャケットはプロテクター兼用。胸や肘部分を守る素材入れてもらうか。
ああ、ズボンも……うう、早く乗りたいのに。
「にゃあ、おじちゃん、おきゃくさまー」
「がるる、おんなのこ!!」
「きゅう、こども」
「……え?」
ちょいテンションダウンしていると、ユキちゃんたちのところに、女の子がいた。
ユキちゃんたちと同世代だろうか。白いサイドテール、肩剥き出しのワンピース……そして、耳がとがっている女の子だ。
「ふふ。面白そうな魔道具を作っているのね」
「……え? ああ、どうした? 迷子かな?」
「にゃあ、あそぼう」
「がうー、バトミントン」
「きゅうう、四人であそぶ」
「あなたたち、ごめんなさいね。わたし、この方に用事があるの」
なんとも丁寧な女の子だ。ユキちゃんが差し出したラケットを申し訳なさそうに拒否してる。
見た目は六歳くらいかな。耳がとがって……ん? なんだ、この感じ。
女の子は、俺をジッと見ている。
「ふふ。わたしが何者か、わかったかしら?」
「…………いや、まさか」
「ふふふん。あなたの予想は、間違っていないわ」
女の子は胸に手を当て、にっこり微笑む。
「はじめまして。わたしは十二星座の魔女の一人、『魚座の魔女』ポワソン・ピスケスよ。よろしく、異世界の住人、アツコの同郷人」
「…………マジで?」
どう見ても幼女……俺の前に、十二星座の魔女が現れた。
原付の試走から数日。
データは集まり、いよいよ本格的にバイク制作に入ろうと思うのだが……なんか気分が乗らない。
まず、ロッソたち……バレンたちと仲良くしているのが気に食わないのか、俺のところに来なくなった。
ユキちゃんたちは三輪車に乗って遊びに来るんだが……嫌われたのかなあ。
そして現在、俺は一人で立ち飲み屋で飲んでいた。
「…………まあ、しょうがねぇよなあ」
エールを飲みつつ、煮物を食う。
立ち飲み屋。異世界でもけっこうあることに驚きつつも喜んだ。もしかしたらと思って聞いてみたが、出汁割りはやってなかった。今度、おでん作って出汁を日本酒で割って飲んでみるか。
エールを呑んでいると、俺のテーブルにジョッキがドンと置かれた。
「お邪魔するわね」
「ん? おう、ヴェルデ。なんだ一人か?」
「ええ。ロッソたち、顔合わせにくいみたいだから」
ヴェルデはエールをクイッと飲み、ジョッキをドンと置く。
「ゲントク。今日は、ロッソたちのこと話に来たの」
「……ロッソたちのこと?」
「ええ。あの子たちの過去ね」
ヴェルデは、エールを飲みながら話し始めた。
ロッソ、バレンの因縁。アオとウングの確執。ブランシュとリーンドゥの関係。
話を聞き、俺は納得する。
「ああ……まあ確かに、仲良くはできないよなあ」
「そういうこと。で、心許していたあんたが、因縁のある三人と仲良くしていたら、それはもう複雑な気分よ」
「……俺、嫌われたかなあ」
「それはない。というか、ロッソたちもどうしていいのかわかんないのよ。あんたに謝りたい気持ちはあるけど、バレンたちとは仲良くできないし……だから、今日もモヤモヤしたまま討伐依頼を受けたわ。おかげで、私は苦労だらけ」
「そ、それはご苦労さん……」
「はあ……あんたはどうせ、あの子たちが自分を嫌ってるって思って、そのまま関係を終わらせちゃおうとか思いそうだしね」
否定できん。
お涙ちょうだいの和解とか俺の趣味じゃないしな。ロッソたちが俺を嫌って離れるなら、俺はそれでもいいと思っていた。
どんなに仲良しでも、ふとしたきっかけで会うこともなくなり、そのまま疎遠になるなんて、大人じゃよくあることだ。高校とか中学の同級生なんて、もう顔も名前も思い出せないし。
まあ、少しは寂しい気持ちもある……でも、俺は大人でおっさんだし、和解のために奔走しようなんて気は起きなかった。
「そこまで薄情じゃないけど、無理して仲直しようとは考えてないな……喧嘩したわけじゃないけど」
「ロッソたちはそれじゃ嫌なんだって。でも、こういう気持ちが初めてで、困惑してる」
「……だからといって、バレンたちと距離を取るつもりはないぞ。俺は別に因縁があるわけじゃないし、俺からすれば、バレンたちもお前らと変わらんからな」
「そうなのよね……」
「俺は、俺だ。俺自身が嫌な相手とは関係を持つつもりはないし、そうじゃないなら友好的な態度を取るぞ」
「わかってる。でも……ロッソたちのこと、忘れないであげて。あの子たち、ちゃんとあなたに謝って、またいつも通りになりたいって思ってるから」
「……ああ」
俺とヴェルデはエールをおかわり、乾杯をする。
「お前でよかったよ。お前、因縁の相手とかいないしな」
「……それは嫌だけど、今回はよかったって思うしかないわね」
ロッソたち、また来るなら、しっかりおもてなししないとな。
◇◇◇◇◇◇
さて、数日が経過した。
俺はたまに持ち込まれる魔道具の修理をしながら、バイク用の部品を作っていた。
フレーム、エンジンのガワ、タンク、魔石、タイヤ……一つ一つの部品をしっかりと作り込む。
魔石は十つ星の物を使った。出し惜しみはしないぞ。
そして、全ての部品製作を終え、俺は汗をぬぐう。
「……よし」
「にゃあ。おじちゃん、ボール割れたー」
気が抜けそうになった。
いよいよ組み上げって思ったところで、ユキちゃんが割れたボールを持って来た。
職場の隣にある小さな空き地、子供たちの遊び場になったんだよな。元々は資材とか積み上げてあったんだけど、綺麗にしたのか空き地になっている。
三輪車が三台停車し、ヒコロクがユキちゃんたちと遊んでいる。
「どれどれ、見せてごらん……あらら、完全に穴空いてるな。ヒコロクが噛んだのか?」
「にゃう。ヒコロクが引っ掻いたら割れた」
「そうか。そうだ、ちょっと待っててな」
俺は、余った素材を使って加工を始める。
メタルオークの骨を焼いて柔らかくして曲げ、余ったラバーコブラの皮を細く糸状に切り、メタルオークの骨に通して編んでいく。
そして、コカトリスの羽とラバーコブラの皮を加工して『球』を作った。
「はい完成。さ、空き地に行こうか」
「にゃ……それ、なにー?」
空き地に移動。
俺は二本のラケット、そして『球』こと『シャトル』を子供たちに見せた。
「がるる……これ、なに?」
「バトミントンだ。これがラケットで、こっちがシャトル。ユキちゃん、これ持って」
「にゃ」
俺はシャトルを軽くラケットで打つと、ラバーコブラの皮同士が反発しけっこうな高さまで飛ぶ。
「ユキちゃん、俺がやったみたいに打って」
「にゃ、にゃあ」
ぽこんと、ユキちゃんはシャトルを打つ。
俺は再びユキちゃんに向かって軽く打ち、ユキちゃんも打ち返す。
すると、楽しくなってきたのか、ユキちゃんの動きが良くなってきた。
「にゃうう!!」
「はは、うまいぞ。ほれっ」
パコンとシャトルと打ち返すと、ユキちゃんは空振りし、シャトルが落ちた。
「こんな感じで遊ぶんだ。はい、クロハちゃん」
「がうー!! おもしろそう!!」
「きゅうう、わたしもやりたいー」
「ははは。交代でな、シャトルを落としたら交代で遊ぶといいよ」
「にゃー、じゃあリーサ、こうたい」
子供たちは、バトミントンで遊びだした。
ヒコロクもいるし、あとは大丈夫だろう。
俺は職場に戻り、さっそくフレームにパーツを組み込み始めた。
◇◇◇◇◇◇
全てのパーツを組み込み、微調整を加え……ついに、完成した。
「……できた」
外見はネイキッドバイク。だが、いくつかの部分にカウルを追加し、俺のオリジナルのスタイルになっている。
スピードメーターもないし、ガソリンも入れる必要がない。でも、それっぽい部品はくっついている。スピードメーター……さすがに作れない。
俺は、サスペンション部分をチェックし、ステアリングのアクセルを捻り、ブレーキレバーを握ってチェック。
「……できた」
もう一度言う。
やばい、顔がにやける。ついに完成したぞ俺のバイク。
入念なデータ収集から始まり、いろいろな検証、そして何度も図面を書き直し、ようやく完成した。
俺のバイク。完全オリジナル、部品一つから作った俺のバイク。
「……よぉし!!」
ガッツポーズ。
やばい。異世界に来て一番嬉しいかも。
「よし、よし落ち着け……エンジン、エンジンかけるか」
俺はエンジンキーを差し捻る。
残念ながらエンジン音はしない。このキーは、魔石に指示を送るコード部分の蓋を開閉するスイッチだ。蓋が閉まれば魔力の通り道がシャットアウトされ、魔石は起動しない仕組み。
そして跨る……あ、あああ。
「バイク……俺のバイク!! うおお……って、あれ」
今、気付いた。
「……し、しまったあああああああああ!!」
「にゃ」「がうー」「きゅう」『わう?』
俺の絶叫に反応し、ユキちゃんたちが顔を覗かせた。
「にゃあ。おじちゃん、どうしたの?」
「……メット、ジャケット、グローブ、ブーツを忘れた」
そう、バイクに夢中になりすぎ、ヘルメットなど作るのを完全に忘れていた。
言っておくが、このまま作業着で乗るなんて愚かな真似しないぞ。
「……仕方ない。試乗はお預けだ」
メットは自分で作る。ジャケット、グローブ、ブーツは特注で作ってもらおう。
ジャケットはプロテクター兼用。胸や肘部分を守る素材入れてもらうか。
ああ、ズボンも……うう、早く乗りたいのに。
「にゃあ、おじちゃん、おきゃくさまー」
「がるる、おんなのこ!!」
「きゅう、こども」
「……え?」
ちょいテンションダウンしていると、ユキちゃんたちのところに、女の子がいた。
ユキちゃんたちと同世代だろうか。白いサイドテール、肩剥き出しのワンピース……そして、耳がとがっている女の子だ。
「ふふ。面白そうな魔道具を作っているのね」
「……え? ああ、どうした? 迷子かな?」
「にゃあ、あそぼう」
「がうー、バトミントン」
「きゅうう、四人であそぶ」
「あなたたち、ごめんなさいね。わたし、この方に用事があるの」
なんとも丁寧な女の子だ。ユキちゃんが差し出したラケットを申し訳なさそうに拒否してる。
見た目は六歳くらいかな。耳がとがって……ん? なんだ、この感じ。
女の子は、俺をジッと見ている。
「ふふ。わたしが何者か、わかったかしら?」
「…………いや、まさか」
「ふふふん。あなたの予想は、間違っていないわ」
女の子は胸に手を当て、にっこり微笑む。
「はじめまして。わたしは十二星座の魔女の一人、『魚座の魔女』ポワソン・ピスケスよ。よろしく、異世界の住人、アツコの同郷人」
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