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第六章 雪景色と温泉

拠点完成

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「よし……こんなモンか」

 現在、俺は別荘を改造……というか、快適に暮らすためにいろいろな魔道具を設置した。
 まず、全室にエアコン完備、居間にホットカーペットを敷き、コタツを置いた。これだけでかなり重労働だったぜ……まあ、いいけど。

 そして、大福と白玉のために、居間に猫用トイレ、そして簡易的なキャットタワーを置いてみた。
 壁掛け用の寝床とか設置してみたり、猫じゃらしとかも用意してみたが……そもそも、大福は大人しいというか、一日の半分くらい寝てるから動きが少ない。
 せっかくのキャットタワーも全然遊んでくれない……白玉は子猫だから興味は持つけど、キャットタワーでぴょんぴょん飛び跳ねるほど成長していないので、すぐに飽きられた。
 好評だったのは爪とぎかな……ヴァイトシャークっていうサメ肌の表皮で作った爪とぎだけは、毎日使ってくれている。
 
「お、そうだ。コタツの脇にお茶のセット置くか」

 俺は速攻で、お座敷用のワゴンを作成した。
 湯沸かし、茶葉、急須に湯呑……田舎のばあちゃん家に必ずあるセットだ。
 これをコタツ脇にセットして、座椅子も用意して……エアコンもスイッチを入れる。
 俺はコタツに座り、ため息を吐いた。

「はぁぁ~……完成。俺の別荘、フルカスタマイズ!!」

 ホットカーペットが温かく、コタツも暖かい。
 エアコンのおかげで室内もホカホカだし、座ったままお茶も淹れられる。

『みー』
「お、白玉~……よしよし、この猫め」

 座ってぼーっとしていると、白玉が俺の元へ。
 抱っこして撫でると、尻尾をフリフリしながら俺によじ登ろうとしてくる。
 コタツに猫、最強の組み合わせだ。

「拠点も完成したし、次はいよいよ周辺の散策だ!!」

 レレドレに来て何日か経過したが……実は、ほぼ出かけていない。
 エアコン設置、コタツ、ホットカーペットの開発、キャットタワーの設置、その他気になるところのチェックなどで、俺はほぼ別荘の中にいた。
 その間、ロッソたちも遊びに来たが、俺が忙しそうに魔道具開発しているのを見て、すぐに帰ってしまった。今は四人(従者二名)で周辺の温泉巡りとかしているらしい。

「とにかく!! バカンス……とは違うな。湯治……でもない。まあ冬休みでいいか。俺はこれから冬休みを満喫する!!」
『……ニャア』
『みー』
「おし、お前らは留守番頼む。俺は町に繰り出して観光してくるからよ!!」

 俺は着替える。
 コートにマフラー、帽子を被り、手袋をしてブーツを履く。
 外に出ると……ああ、やっぱ雪が降っていた。

「さあ、いざ町へ!!」

 ◇◇◇◇◇◇

 別荘を出て、飛び石の道を通って表の通路へ出ると、いかにも『冬の温泉街です』って感じの街並みだった。
 除雪された道、雪の積もった木造の建物、少し先を見れば湯気が昇っていたり、観光客がお茶を飲んだり、まんじゅうみたいなのを食べて歩いている。
 驚いたのは、浴衣みたいなのを着て歩いている人がいたことだ。

「浴衣。これも東方の文化なのかね……もしかしたら、アツコさんや俺の他にも、日本人が遥か昔に転移してきたとか……まあ、どうでもいいや」

 別に、冒険が始まるわけじゃないしな。
 俺の別荘は、坂道の下にある。
 坂道を上ると町の中心へ行けるようになり、その道中が観光用の施設がある。
 さっそく坂道を上る。

「おお~……」

 すごいな。
 まず、お土産屋、カフェ、まんじゅう屋に、串焼きや飲み物の店もある。
 ザナドゥとは毛色が違う……もう、マジで感動。

「ん? おお、ゲントクじゃないか!!」
「え? ああ、エアリーズか」

 歩き出してすぐ、エアリーズがいた。
 エルフ数人と何か話しているようだが、俺の元へ。

「奇遇だな。数日、この辺りで仕事をしていたが、全く会わなかったな」
「俺、ずっと屋敷にいたんだよ。魔道具作って、快適になるように苦労していたんだ……実は今日が、初の散策でもある」
「そうなのか? ははは、それならおススメの店をいくつか教えてやろうか? うまいまんじゅう屋、雑酒の店、居酒屋、メシ屋……この辺りは庭だからな」
「そりゃいいな。でも、仕事中じゃないのか?」
「あ~……まあな」

 と、エアリーズは少し悩んでいるようだ。俺を見て「んん~」と唸る。

「なんだ、どうしたんだ?」
「いや……その、少し困り事があってな。だが、お前には相談しにくいというか」
「……あぁ~」

 そういや「厄介ごとは持ち込むな」みたいなこと言ったっけ。
 俺はあくまで慰労で来てるんだし、仕事はしないつもりだけど……知り合いの困り事を無視するほど薄情でもないつもりだ。

「……あんまり大それたことはできないけど、相談くらいには乗るぞ」
「いいのか? あまり面倒ごとには関わらせたくないのだがな……」
「まあ、話聞くくらいならな。知恵を貸すくらいもできる」
「そういうことなら、私も手伝えそうね」
「はっはっは!! ありがたいな。では、話を聞いてもらおうか」
「ああ……って、ん?」

 なんか、聞いたことのある声がしたような。

「ここが温泉の町レレドレね。不思議なニオイ……温泉の香りかしら」
「…………………なんでいるんだよ」

 淡いブルーのロングコート、同じ色の帽子、手袋を付けた女性が、ニコニコしながら俺の隣にいた。
 サンドローネ。いや、なんか予感はしていたけど。
 
「新事業の下見に来たのよ。あなたの発案じゃない」
「お、俺の発案?」
「『床暖房』……温泉をパイプで流し、床を熱して暖を取る案よ。それに、アレキサンドライト商会で改良した新型エアコンを、この地で販売する計画もあるの」
「…………」
「ふふ。エアコンは来年の夏って考えてたけど、イェランたちが頑張ってくれたおかげで、量産態勢も整いつつあるわ。これを機に、スノウデーン王国での支店も考えてたの」
「商魂たくましいヤツだな……」

 と、サンドローネはエアリーズを見た。

「こちらの方は……?」
「ああ、エアリーズだ。魔女会の一人だ」
「なっ……あ、あなた!! そういうのは先に紹介しなさい!! 延々と商会の戦略について語っちゃったじゃない!!」
「お、お前が勝手にしゃべり出したんだろうが……」

 サンドローネはカーテシーで一礼。

「お初にお目にかかります。アレキサンドライト商会、商会長のサンドローネと申します」
「ああ、魔女会、『牡牛座の魔女』エアリーズ・タウルスだ。ははは!! 威勢のいいお嬢さんだ」
「うう……」

 サンドローネは恥ずかしそうに俯いた。
 あれ、いつの間にかリヒターもいる。サンドローネの後ろで一礼していた。
 エアリーズはサンドローネを見て言う。

「そう言えば、ラスラヌフが言っていたな。サンドローネという有望な若者のおかげで、ザナドゥの運海計画もスムーズに進んでいると。そうだな……早速だが、きみのチカラも貸してくれないか? スノウデーン王国で商会の支店を起こすなら、力になれると思うぞ」
「ぜ、ぜひ!! あ、ありがとうございます!!」
「……じゃあ俺はここでお役御免かな。サンドローネがいるなら問題ないだろ」
「ダメよ」

 うげえ、サンドローネに腕を掴まれたぁ。
 エアリーズも困ったように言う。

「すまん。やはりゲントクにも聞いてほしい。レレドレだけじゃなく、王家も少し関わっている問題でな……厄介ごとではないと約束するし、面倒をかけないと誓う」
「……やれやれ。わかった、聞くだけだぞ」
「感謝するぞ。では、場所を変えようか」
「じゃあ、俺の別荘行くか」
「……あなた、もう別荘買ったのね」
「おう。猫もいるぞ」

 こうして、観光はおあずけ……俺はエアリーズの『困り事』を聞くことになるのだった。
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