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第三章 ペリドット商会との死闘
ペリドット商会
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さて、さっそくイェランとペリドット商会内部へ。
俺は自然に腕を出すと、イェランが首を傾げた。
「いや、周り見ろよ……男性は女性に腕貸すのが普通なんだよ」
「はああああ? あ、アタシと腕組んで歩くのかよ!!」
「嫌なのはわかってるけど、そうしないと俺が『なにアイツ、女性に腕も貸せないクソ野郎なの?』とか『あの男最低~』とか言われるんだよ」
「そ、そこまでは言われないと思うけど……ああ、もうわかったよ」
イェランはそっと腕を組んだ。
そのまま、イェランに合わせて歩き、ペリドット商会へ。
店内に入ると……なんというか、有名デパートの貴金属売り場みたいな華やかさだった。しかも香水の香りもすごいし、店員さんはみんなドレスで着飾っている。
「すっご……これがペリドット商会」
「ざっと見、アクセサリー、化粧品、お茶類、魔道具類ってところか」
広さは学校の体育館くらい、バスケコート二面分くらいかな。それぞれ、四分の一ずつ化粧品、魔道具、お茶関係、アクセサリーと分割されている。そして、それぞれ四人くらいずつドレスの店員さんが見回っている感じか……当然、店員さんは全員女性。
「こりゃすげえな……さて、さっそく魔道具を」
「待った。見るならまず化粧品だ。去年、夏に向けた新製品は化粧品だった気がする」
「そうなのか?」
「ああ。日差しが強い日が続いてな、日焼け止めクリームっていう、肌に塗ると日焼けを防止する魔法のクリームを発売したんだ」
「へえ、日焼け止めかあ」
日本じゃポピュラーなモンだけど、異世界じゃ画期的なモンらしいな。
魔道具に限定されないなら、いろいろアイデアはあるぞ。
化粧品を眺めていると、店員さんが近づいてきた。
「何かお探しですか?」
「え、ああ……彼女の肌に合う化粧品を探してまして」
「は!?」
(馬鹿、合わせろ)
(うぐ……ゲントク、覚えてろ)
別にコソコソする理由はないけど、なんかスパイっぽくて楽しい。
女性店員さんは、イェランの顔に「失礼」と言って手を伸ばした。
「綺麗なお肌ですね、でも……少し、髪が傷んでいます。お化粧も大事ですが、髪も綺麗にしましょうね」
「あ、はあ……」
「あの、すみません。この世界……じゃなくて、基本的な化粧品ってどんなのありますか?」
俺の質問だ。
店員さん曰く、洗顔は普通に水洗いで、その後に白粉を薄く塗り、眉を整え、口紅を塗るのが一般的らしい……って、なんか思ったよりシンプルだった。
白粉も、いろいろ種類があるそうだ。貝を砕いて粉上にしたものや、植物から作ったもの……その種類は百種類くらいあり、自分の肌にあった白粉を付けるらしい。
「つまり、白粉を選ぶことが大事ってことか」
「ええ。肌に馴染む白粉を塗り、肌を白く見せるのが美肌のコツですね。去年発売した『日焼け止めクリーム』は、日焼けを止める魔法の水に、白粉を溶かしたクリームで、塗るだけで日焼けを防止する一品です。少しお値段は高くなりますが、いかがですか?」
「いいですね。あの、今年の夏とかは新商品とか出したりしますか?」
「ふふ。それは秘密です」
あるんだな。日焼け止め以上の物が。
話を聞くと、ペリドット商会は百種類以上の白粉や口紅を販売しているらしい。
俺も詳しくないけど……化粧ってもっと複雑なのかと思った。化粧水とか乳液とか、昔、デパートの化粧品売り場の空調を修理しに行ったことあるけど、アイシャドウとかチークとかもっと複雑だった気がする……さすがに化粧品のことはわからん。
とりあえず、場所移動。
「ゲントク、次はどうする?」
「魔道具だな。美容品の魔導具ってどんなのあるのかな」
魔導具売り場へ。
と、そこにあったのは……なんとも意外。
「な、なんだこれ……」
あったのは、デスマスクみたいな魔道具だった。
イェランが眺めていると、店員さんが来て説明する。
「こちらは、『美容マスク』です。顔にはめてスイッチを入れると、マスクが細かく振動してお肌を刺激し、美容効果を得ることができるんです。お客様、お試しになられますか?」
「え、あ、アタシですか」
「お願いします」
「お、おいゲントク!!」
イェラン、お前の犠牲は無駄にしない。
イェランはデスマスクをはめ、スイッチを入れた……すると、マスクが細かく振動する。
「あひゃ、あひゃひゃひゃ!! く、くっすぐったい、あひゃ!!」
「ぶふっ……」
で、デスマスク付けて細かく振動してるの、ぱっと見クソ面白いな。
マスクを外すと、イェランはゼーゼー言いながら俺を睨み、足を思い切り踏んできた。
「いって!?」
「……笑っただろ、お前」
「わ、悪かった」
素直に謝ります。でも、かなり面白かった。
いろいろな魔道具を見た。
お腹に巻いて振動を起こし、お腹を引き締める魔道具。
腕や足に巻いて振動させ、肉を引き締める魔道具。
そして、お椀が二つにチューブのようなものがついた魔道具。
「これは?」
「これはバストアップ魔道具です。胸につけ、振動を起こすことで胸を刺激し、サイズアップをさせる物ですね……お試しになられますか?」
「えーっと」
イェランを、正確にはイェランの胸を見る……うん、立派な果実だ。
「いえ、大丈夫です。立派なモンあるんで」
「……外出たらアンタ殺すから」
やべえ龍の逆鱗に触れちまった……ど、どうしよう。
とりあえず、魔道具は見た。
残りは、アクセサリーとお茶だ。そっちに人が集中している。
すると店員さんが言う。
「アクセサリーは、ペリドット商会の商会長、バリオン様のデザインです。当店一番の人気商品でございます」
「バリオン様……って、ジャスパー侯爵家の?」
「ええ。三男なので爵位を継ぐことはありませんが……ジャスパー侯爵家の支援の元で、このペリドット商会を興し、今では王都で一番、女性にとって最高の商会となりました。バリオン様は、デザイナーとしての才能も一番で、その斬新なデザインから、王家からもアクセサリーのデザインを依頼されるほどですのよ」
「へ、へえ……」
「ふふ。それに、バリオン様のエピソードの一つに、『真実の愛』というのがありまして。ご存じですか?」
「い、いえ」
「バリオン様は、魔法学園に在籍中、有名な伯爵家の女性と婚姻関係だったそうです。ですが、とある男爵家の少女と恋に落ち、真実の愛を知ったとのことです……そして、自身が悪となり、伯爵家の少女と婚約を破棄し、愛する女性と結ばれた……とのことです。ああ、素敵……」
いや、ただの最低野郎じゃねぇか。
一目惚れした相手と結ばれるために、決まっていた女性……サンドローネとの婚約を一方的に破棄。自分が悪者とか言ってるけど、実際はサンドローネが悪役になって実家から追放されてる。
まあ、貴族の力でどうにかしたんだろうなあ。なんか胸糞悪いし、もういいか。
「とりあえず、また来ます……帰ろう、イェラン」
「う、うん」
ペリドット商会の商品はなんとなくわかった。
美容魔道具……一つ、面白いモンでも作ってみるか。
そのまま、店を出ようとした時だった。
「「「キャーッ!!」」」
「ははは、すまない、道を開けてくれないか? きみたちの美しさに思わず歩を止めてしまう……目を閉じ歩くことを許して欲しい」
「「「バリオン様ぁぁっ!!」」」
クソ妄言を吐きながら歩いてきたのは、ややウェーブがかった金髪のイケメンだった。
こいつがバリオンか……なんか、背ぇ高いしけっこういいガタイしてるな。
すると、バリオンは俺を見て、にっこり微笑んだ。
「これはこれは……サンドローネ専属の魔導具技師じゃないか。ははは、敵情視察かな?」
「……まあ、そんなところかな」
お、俺のこと知ってんのかい!!
し、調べたのかな……平静を装ってるけど、かなりビビったぞ。
「勝負のことを聞き、どんな新商品を出すかヒントを探しに来た……というところか」
「…………」
「ゲントク、バレバレだね。ってかそっぽ向くのガキっぽいからやめなよ」
「う、うるせ。まあいいさ……いい店だ。でも、俺の作る新しい商品のが、もっといいね」
「へえ、それは気になる」
「まあ、勝負の時にな。はーっはっはっは!!」
「なにその高笑い……あ、待ってよゲントク」
俺は笑ながら店を出た……なんかこっちが悪役みたいじゃねぇか。
とりあえず、バリオンか……なんか、こいつには負けたくないぜ。
俺は自然に腕を出すと、イェランが首を傾げた。
「いや、周り見ろよ……男性は女性に腕貸すのが普通なんだよ」
「はああああ? あ、アタシと腕組んで歩くのかよ!!」
「嫌なのはわかってるけど、そうしないと俺が『なにアイツ、女性に腕も貸せないクソ野郎なの?』とか『あの男最低~』とか言われるんだよ」
「そ、そこまでは言われないと思うけど……ああ、もうわかったよ」
イェランはそっと腕を組んだ。
そのまま、イェランに合わせて歩き、ペリドット商会へ。
店内に入ると……なんというか、有名デパートの貴金属売り場みたいな華やかさだった。しかも香水の香りもすごいし、店員さんはみんなドレスで着飾っている。
「すっご……これがペリドット商会」
「ざっと見、アクセサリー、化粧品、お茶類、魔道具類ってところか」
広さは学校の体育館くらい、バスケコート二面分くらいかな。それぞれ、四分の一ずつ化粧品、魔道具、お茶関係、アクセサリーと分割されている。そして、それぞれ四人くらいずつドレスの店員さんが見回っている感じか……当然、店員さんは全員女性。
「こりゃすげえな……さて、さっそく魔道具を」
「待った。見るならまず化粧品だ。去年、夏に向けた新製品は化粧品だった気がする」
「そうなのか?」
「ああ。日差しが強い日が続いてな、日焼け止めクリームっていう、肌に塗ると日焼けを防止する魔法のクリームを発売したんだ」
「へえ、日焼け止めかあ」
日本じゃポピュラーなモンだけど、異世界じゃ画期的なモンらしいな。
魔道具に限定されないなら、いろいろアイデアはあるぞ。
化粧品を眺めていると、店員さんが近づいてきた。
「何かお探しですか?」
「え、ああ……彼女の肌に合う化粧品を探してまして」
「は!?」
(馬鹿、合わせろ)
(うぐ……ゲントク、覚えてろ)
別にコソコソする理由はないけど、なんかスパイっぽくて楽しい。
女性店員さんは、イェランの顔に「失礼」と言って手を伸ばした。
「綺麗なお肌ですね、でも……少し、髪が傷んでいます。お化粧も大事ですが、髪も綺麗にしましょうね」
「あ、はあ……」
「あの、すみません。この世界……じゃなくて、基本的な化粧品ってどんなのありますか?」
俺の質問だ。
店員さん曰く、洗顔は普通に水洗いで、その後に白粉を薄く塗り、眉を整え、口紅を塗るのが一般的らしい……って、なんか思ったよりシンプルだった。
白粉も、いろいろ種類があるそうだ。貝を砕いて粉上にしたものや、植物から作ったもの……その種類は百種類くらいあり、自分の肌にあった白粉を付けるらしい。
「つまり、白粉を選ぶことが大事ってことか」
「ええ。肌に馴染む白粉を塗り、肌を白く見せるのが美肌のコツですね。去年発売した『日焼け止めクリーム』は、日焼けを止める魔法の水に、白粉を溶かしたクリームで、塗るだけで日焼けを防止する一品です。少しお値段は高くなりますが、いかがですか?」
「いいですね。あの、今年の夏とかは新商品とか出したりしますか?」
「ふふ。それは秘密です」
あるんだな。日焼け止め以上の物が。
話を聞くと、ペリドット商会は百種類以上の白粉や口紅を販売しているらしい。
俺も詳しくないけど……化粧ってもっと複雑なのかと思った。化粧水とか乳液とか、昔、デパートの化粧品売り場の空調を修理しに行ったことあるけど、アイシャドウとかチークとかもっと複雑だった気がする……さすがに化粧品のことはわからん。
とりあえず、場所移動。
「ゲントク、次はどうする?」
「魔道具だな。美容品の魔導具ってどんなのあるのかな」
魔導具売り場へ。
と、そこにあったのは……なんとも意外。
「な、なんだこれ……」
あったのは、デスマスクみたいな魔道具だった。
イェランが眺めていると、店員さんが来て説明する。
「こちらは、『美容マスク』です。顔にはめてスイッチを入れると、マスクが細かく振動してお肌を刺激し、美容効果を得ることができるんです。お客様、お試しになられますか?」
「え、あ、アタシですか」
「お願いします」
「お、おいゲントク!!」
イェラン、お前の犠牲は無駄にしない。
イェランはデスマスクをはめ、スイッチを入れた……すると、マスクが細かく振動する。
「あひゃ、あひゃひゃひゃ!! く、くっすぐったい、あひゃ!!」
「ぶふっ……」
で、デスマスク付けて細かく振動してるの、ぱっと見クソ面白いな。
マスクを外すと、イェランはゼーゼー言いながら俺を睨み、足を思い切り踏んできた。
「いって!?」
「……笑っただろ、お前」
「わ、悪かった」
素直に謝ります。でも、かなり面白かった。
いろいろな魔道具を見た。
お腹に巻いて振動を起こし、お腹を引き締める魔道具。
腕や足に巻いて振動させ、肉を引き締める魔道具。
そして、お椀が二つにチューブのようなものがついた魔道具。
「これは?」
「これはバストアップ魔道具です。胸につけ、振動を起こすことで胸を刺激し、サイズアップをさせる物ですね……お試しになられますか?」
「えーっと」
イェランを、正確にはイェランの胸を見る……うん、立派な果実だ。
「いえ、大丈夫です。立派なモンあるんで」
「……外出たらアンタ殺すから」
やべえ龍の逆鱗に触れちまった……ど、どうしよう。
とりあえず、魔道具は見た。
残りは、アクセサリーとお茶だ。そっちに人が集中している。
すると店員さんが言う。
「アクセサリーは、ペリドット商会の商会長、バリオン様のデザインです。当店一番の人気商品でございます」
「バリオン様……って、ジャスパー侯爵家の?」
「ええ。三男なので爵位を継ぐことはありませんが……ジャスパー侯爵家の支援の元で、このペリドット商会を興し、今では王都で一番、女性にとって最高の商会となりました。バリオン様は、デザイナーとしての才能も一番で、その斬新なデザインから、王家からもアクセサリーのデザインを依頼されるほどですのよ」
「へ、へえ……」
「ふふ。それに、バリオン様のエピソードの一つに、『真実の愛』というのがありまして。ご存じですか?」
「い、いえ」
「バリオン様は、魔法学園に在籍中、有名な伯爵家の女性と婚姻関係だったそうです。ですが、とある男爵家の少女と恋に落ち、真実の愛を知ったとのことです……そして、自身が悪となり、伯爵家の少女と婚約を破棄し、愛する女性と結ばれた……とのことです。ああ、素敵……」
いや、ただの最低野郎じゃねぇか。
一目惚れした相手と結ばれるために、決まっていた女性……サンドローネとの婚約を一方的に破棄。自分が悪者とか言ってるけど、実際はサンドローネが悪役になって実家から追放されてる。
まあ、貴族の力でどうにかしたんだろうなあ。なんか胸糞悪いし、もういいか。
「とりあえず、また来ます……帰ろう、イェラン」
「う、うん」
ペリドット商会の商品はなんとなくわかった。
美容魔道具……一つ、面白いモンでも作ってみるか。
そのまま、店を出ようとした時だった。
「「「キャーッ!!」」」
「ははは、すまない、道を開けてくれないか? きみたちの美しさに思わず歩を止めてしまう……目を閉じ歩くことを許して欲しい」
「「「バリオン様ぁぁっ!!」」」
クソ妄言を吐きながら歩いてきたのは、ややウェーブがかった金髪のイケメンだった。
こいつがバリオンか……なんか、背ぇ高いしけっこういいガタイしてるな。
すると、バリオンは俺を見て、にっこり微笑んだ。
「これはこれは……サンドローネ専属の魔導具技師じゃないか。ははは、敵情視察かな?」
「……まあ、そんなところかな」
お、俺のこと知ってんのかい!!
し、調べたのかな……平静を装ってるけど、かなりビビったぞ。
「勝負のことを聞き、どんな新商品を出すかヒントを探しに来た……というところか」
「…………」
「ゲントク、バレバレだね。ってかそっぽ向くのガキっぽいからやめなよ」
「う、うるせ。まあいいさ……いい店だ。でも、俺の作る新しい商品のが、もっといいね」
「へえ、それは気になる」
「まあ、勝負の時にな。はーっはっはっは!!」
「なにその高笑い……あ、待ってよゲントク」
俺は笑ながら店を出た……なんかこっちが悪役みたいじゃねぇか。
とりあえず、バリオンか……なんか、こいつには負けたくないぜ。
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