はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!

さとう

文字の大きさ
上 下
71 / 73
第九章

そのころ、勇者と悪女神たち②

しおりを挟む
 魔王国首都。
 夢見レイナ、相川セイラ、鎧塚金治。そして黒鉄レオンの下半身は、魔王城にある玉座の間にいた。
 そして、目の前に広がるあり得ない光景。

「おかえりなさいませ、我が主」
「ただいま、魔王ファルザークくん」

 魔王デスレクス。本当の名はファルザークというらしい……が、仲間であるラーズハートに頭を下げ、座っていた玉座を明け渡し、さらに跪いていた。
 ポカンとする相川セイラ、鎧塚金治。夢見レイナも同じようにラーズハートに跪いていた。
 そして、ラーズハートは玉座に座ると……姿が変わる。
 身体がブレたように見え、衣装が際どいドレスに変わる。
 胸を豪快に見せ、深いスリットの入ったスカートになり、髪飾りが豪勢になり……まるで、真の姿と言わんばかりに変わってしまった。

「お、おいラーズハート……そ、それどういう」

 鎧塚が、かろうじて声を出す。
 すると、ラーズハートは笑みを浮かべていた。

「ごめんなさい。実は私……この世界の支配者なの」
「……はい?」
「この子たちは全員、私の僕。つまりね、魔王軍っていうのは、私の私兵。どうあがいても勇者は魔王に勝てない。でも、戦いわなくちゃ生き残れない……私はそれを見て楽しんでいるのよ」
「「…………」」

 鎧塚金治、相川セイラには理解できなかった。
 だが、ファルザークと夢見レイナは笑みを浮かべたまま頭を垂れている。
 他にも、レベル200近い怪物たちが一斉に跪いており、ラーズハート……いや、悪女神フォルトゥーナの言葉が真実だと理解させられた。
 鎧塚は、口元をヒクヒクさせて言う。

「あ、相川……こ、これ夢か?」
「し、しらない」

 相川セイラは、真っ青な顔で首を振った。
 今更ながら、踏み込んではならない領域に踏み込んでしまったと理解。
 振り返ると、無数の魔族が相川セイラをジロッと見た。

「ひっ」
「セイラ。もう帰れないよ」
「れ、れいな」
「さあ、跪いて。フォルトゥーナ様、どうか奇跡を!!」
「お、おい夢見、おま」
「黙ってろ」

 真っ赤に輝く目で鎧塚を恫喝する夢見レイナ。鎧塚はビクッと震え、思わず跪いた。
 フォルトゥーナは少し考えて言う。

「ファルザークくん」
「は、我が主」
「あなたの身体、私にくれない?」
「はい。どうぞお受け取りください」

 ファルザークは立ち上がると、自分の手で自分の首を切断した。
 首から噴水のように血が噴き出し、相川セイラの身体を汚す。

「ぎゃああああああああ!?」
「ひょぉおおおおおおお!?」

 絶叫し盛大に漏らす相川セイラ。そして、相川セイラに覆いかぶさるようにファルザークの身体が倒れ、鎧塚金治の傍に生首が転がった。
 フォルトゥーナはニコニコしながら指を鳴らすと、ファルザークの頭がドロドロに溶ける。
 そして、夢見レイナが黒鉄レオンの下半身を取り出す。
 黒鉄レオンの下半身、ファルザークの胴体、溶けたファルザークの頭が一つになる。
 そして……魔王軍の目の前で、それは復活した。

「……う、お、オレは」
「レオンくううううううん!!」
「うわっ!? れ、レイナ? え、これは……お、おおお!? な、なんだ!?」

 黒鉄レオンは、復活した。
 漆黒の衣装を着た、魔王軍の新たな魔王として。
 すると、フォルトゥーナが玉座を譲る。

「レオン」
「きみは、ラーズハート。いや違う、フォルトゥーナ様。あれ? な、なんだこの記憶……」

 レオンは頭を押さえ、ふらふらと玉座に向かう。
 いまだ、鎧塚金治と相川セイラは驚愕したまま。夢見レイナは当然のように黒鉄レオンの隣に移動。
 黒鉄レオンが玉座に座ると、相川セイラ、フォルトゥーナが両隣に控えた。
 そして、なぜか夢見レイナが叫ぶ。

「聞け魔王軍!! ここに、新たな魔王……黒鉄レオンが降臨した!!」
「「「「「オオオオオ!!」」」」」
「これよりこの世界は黒鉄レオンの物になる!! そして私は黒鉄レオンの妻、黒鉄セイラ!! 魔王の妃である!!」
「「「「「魔王万歳!! 黒鉄レオン万歳!! 黒鉄レイナ万歳!!」」」」」
「さ、レオンくん。みんなに一言お願いね」
「ああ」

 黒鉄レオンは立ち上がる。
 すると、眼が赤く輝いた。

「皆、オレについてこい!! 魔王軍はこれより、四大王国を滅ぼす!!」
「「「「オオオオオオオオオ!!」」」」」

 こうして、新たな魔王が誕生した。
 
「……相川」
「……なに」
「これ、ゆめ?」
「うん、たぶん」

 鎧塚金治、相川セイラの二人は、口元をピクピクさせて現実逃避するのだった。

 ◇◇◇◇◇◇
〇|黒鉄 レオン
〇スキル『魔王』 レベル264
〇使用可能スキル
 ??????????
 ◇◇◇◇◇◇
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

処理中です...