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第九章
そのころ、勇者と悪女神たち②
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魔王国首都。
夢見レイナ、相川セイラ、鎧塚金治。そして黒鉄レオンの下半身は、魔王城にある玉座の間にいた。
そして、目の前に広がるあり得ない光景。
「おかえりなさいませ、我が主」
「ただいま、魔王ファルザークくん」
魔王デスレクス。本当の名はファルザークというらしい……が、仲間であるラーズハートに頭を下げ、座っていた玉座を明け渡し、さらに跪いていた。
ポカンとする相川セイラ、鎧塚金治。夢見レイナも同じようにラーズハートに跪いていた。
そして、ラーズハートは玉座に座ると……姿が変わる。
身体がブレたように見え、衣装が際どいドレスに変わる。
胸を豪快に見せ、深いスリットの入ったスカートになり、髪飾りが豪勢になり……まるで、真の姿と言わんばかりに変わってしまった。
「お、おいラーズハート……そ、それどういう」
鎧塚が、かろうじて声を出す。
すると、ラーズハートは笑みを浮かべていた。
「ごめんなさい。実は私……この世界の支配者なの」
「……はい?」
「この子たちは全員、私の僕。つまりね、魔王軍っていうのは、私の私兵。どうあがいても勇者は魔王に勝てない。でも、戦いわなくちゃ生き残れない……私はそれを見て楽しんでいるのよ」
「「…………」」
鎧塚金治、相川セイラには理解できなかった。
だが、ファルザークと夢見レイナは笑みを浮かべたまま頭を垂れている。
他にも、レベル200近い怪物たちが一斉に跪いており、ラーズハート……いや、悪女神フォルトゥーナの言葉が真実だと理解させられた。
鎧塚は、口元をヒクヒクさせて言う。
「あ、相川……こ、これ夢か?」
「し、しらない」
相川セイラは、真っ青な顔で首を振った。
今更ながら、踏み込んではならない領域に踏み込んでしまったと理解。
振り返ると、無数の魔族が相川セイラをジロッと見た。
「ひっ」
「セイラ。もう帰れないよ」
「れ、れいな」
「さあ、跪いて。フォルトゥーナ様、どうか奇跡を!!」
「お、おい夢見、おま」
「黙ってろ」
真っ赤に輝く目で鎧塚を恫喝する夢見レイナ。鎧塚はビクッと震え、思わず跪いた。
フォルトゥーナは少し考えて言う。
「ファルザークくん」
「は、我が主」
「あなたの身体、私にくれない?」
「はい。どうぞお受け取りください」
ファルザークは立ち上がると、自分の手で自分の首を切断した。
首から噴水のように血が噴き出し、相川セイラの身体を汚す。
「ぎゃああああああああ!?」
「ひょぉおおおおおおお!?」
絶叫し盛大に漏らす相川セイラ。そして、相川セイラに覆いかぶさるようにファルザークの身体が倒れ、鎧塚金治の傍に生首が転がった。
フォルトゥーナはニコニコしながら指を鳴らすと、ファルザークの頭がドロドロに溶ける。
そして、夢見レイナが黒鉄レオンの下半身を取り出す。
黒鉄レオンの下半身、ファルザークの胴体、溶けたファルザークの頭が一つになる。
そして……魔王軍の目の前で、それは復活した。
「……う、お、オレは」
「レオンくううううううん!!」
「うわっ!? れ、レイナ? え、これは……お、おおお!? な、なんだ!?」
黒鉄レオンは、復活した。
漆黒の衣装を着た、魔王軍の新たな魔王として。
すると、フォルトゥーナが玉座を譲る。
「レオン」
「きみは、ラーズハート。いや違う、フォルトゥーナ様。あれ? な、なんだこの記憶……」
レオンは頭を押さえ、ふらふらと玉座に向かう。
いまだ、鎧塚金治と相川セイラは驚愕したまま。夢見レイナは当然のように黒鉄レオンの隣に移動。
黒鉄レオンが玉座に座ると、相川セイラ、フォルトゥーナが両隣に控えた。
そして、なぜか夢見レイナが叫ぶ。
「聞け魔王軍!! ここに、新たな魔王……黒鉄レオンが降臨した!!」
「「「「「オオオオオ!!」」」」」
「これよりこの世界は黒鉄レオンの物になる!! そして私は黒鉄レオンの妻、黒鉄セイラ!! 魔王の妃である!!」
「「「「「魔王万歳!! 黒鉄レオン万歳!! 黒鉄レイナ万歳!!」」」」」
「さ、レオンくん。みんなに一言お願いね」
「ああ」
黒鉄レオンは立ち上がる。
すると、眼が赤く輝いた。
「皆、オレについてこい!! 魔王軍はこれより、四大王国を滅ぼす!!」
「「「「オオオオオオオオオ!!」」」」」
こうして、新たな魔王が誕生した。
「……相川」
「……なに」
「これ、ゆめ?」
「うん、たぶん」
鎧塚金治、相川セイラの二人は、口元をピクピクさせて現実逃避するのだった。
◇◇◇◇◇◇
〇|黒鉄 レオン
〇スキル『魔王』 レベル264
〇使用可能スキル
??????????
◇◇◇◇◇◇
夢見レイナ、相川セイラ、鎧塚金治。そして黒鉄レオンの下半身は、魔王城にある玉座の間にいた。
そして、目の前に広がるあり得ない光景。
「おかえりなさいませ、我が主」
「ただいま、魔王ファルザークくん」
魔王デスレクス。本当の名はファルザークというらしい……が、仲間であるラーズハートに頭を下げ、座っていた玉座を明け渡し、さらに跪いていた。
ポカンとする相川セイラ、鎧塚金治。夢見レイナも同じようにラーズハートに跪いていた。
そして、ラーズハートは玉座に座ると……姿が変わる。
身体がブレたように見え、衣装が際どいドレスに変わる。
胸を豪快に見せ、深いスリットの入ったスカートになり、髪飾りが豪勢になり……まるで、真の姿と言わんばかりに変わってしまった。
「お、おいラーズハート……そ、それどういう」
鎧塚が、かろうじて声を出す。
すると、ラーズハートは笑みを浮かべていた。
「ごめんなさい。実は私……この世界の支配者なの」
「……はい?」
「この子たちは全員、私の僕。つまりね、魔王軍っていうのは、私の私兵。どうあがいても勇者は魔王に勝てない。でも、戦いわなくちゃ生き残れない……私はそれを見て楽しんでいるのよ」
「「…………」」
鎧塚金治、相川セイラには理解できなかった。
だが、ファルザークと夢見レイナは笑みを浮かべたまま頭を垂れている。
他にも、レベル200近い怪物たちが一斉に跪いており、ラーズハート……いや、悪女神フォルトゥーナの言葉が真実だと理解させられた。
鎧塚は、口元をヒクヒクさせて言う。
「あ、相川……こ、これ夢か?」
「し、しらない」
相川セイラは、真っ青な顔で首を振った。
今更ながら、踏み込んではならない領域に踏み込んでしまったと理解。
振り返ると、無数の魔族が相川セイラをジロッと見た。
「ひっ」
「セイラ。もう帰れないよ」
「れ、れいな」
「さあ、跪いて。フォルトゥーナ様、どうか奇跡を!!」
「お、おい夢見、おま」
「黙ってろ」
真っ赤に輝く目で鎧塚を恫喝する夢見レイナ。鎧塚はビクッと震え、思わず跪いた。
フォルトゥーナは少し考えて言う。
「ファルザークくん」
「は、我が主」
「あなたの身体、私にくれない?」
「はい。どうぞお受け取りください」
ファルザークは立ち上がると、自分の手で自分の首を切断した。
首から噴水のように血が噴き出し、相川セイラの身体を汚す。
「ぎゃああああああああ!?」
「ひょぉおおおおおおお!?」
絶叫し盛大に漏らす相川セイラ。そして、相川セイラに覆いかぶさるようにファルザークの身体が倒れ、鎧塚金治の傍に生首が転がった。
フォルトゥーナはニコニコしながら指を鳴らすと、ファルザークの頭がドロドロに溶ける。
そして、夢見レイナが黒鉄レオンの下半身を取り出す。
黒鉄レオンの下半身、ファルザークの胴体、溶けたファルザークの頭が一つになる。
そして……魔王軍の目の前で、それは復活した。
「……う、お、オレは」
「レオンくううううううん!!」
「うわっ!? れ、レイナ? え、これは……お、おおお!? な、なんだ!?」
黒鉄レオンは、復活した。
漆黒の衣装を着た、魔王軍の新たな魔王として。
すると、フォルトゥーナが玉座を譲る。
「レオン」
「きみは、ラーズハート。いや違う、フォルトゥーナ様。あれ? な、なんだこの記憶……」
レオンは頭を押さえ、ふらふらと玉座に向かう。
いまだ、鎧塚金治と相川セイラは驚愕したまま。夢見レイナは当然のように黒鉄レオンの隣に移動。
黒鉄レオンが玉座に座ると、相川セイラ、フォルトゥーナが両隣に控えた。
そして、なぜか夢見レイナが叫ぶ。
「聞け魔王軍!! ここに、新たな魔王……黒鉄レオンが降臨した!!」
「「「「「オオオオオ!!」」」」」
「これよりこの世界は黒鉄レオンの物になる!! そして私は黒鉄レオンの妻、黒鉄セイラ!! 魔王の妃である!!」
「「「「「魔王万歳!! 黒鉄レオン万歳!! 黒鉄レイナ万歳!!」」」」」
「さ、レオンくん。みんなに一言お願いね」
「ああ」
黒鉄レオンは立ち上がる。
すると、眼が赤く輝いた。
「皆、オレについてこい!! 魔王軍はこれより、四大王国を滅ぼす!!」
「「「「オオオオオオオオオ!!」」」」」
こうして、新たな魔王が誕生した。
「……相川」
「……なに」
「これ、ゆめ?」
「うん、たぶん」
鎧塚金治、相川セイラの二人は、口元をピクピクさせて現実逃避するのだった。
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〇|黒鉄 レオン
〇スキル『魔王』 レベル264
〇使用可能スキル
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