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第九章

現在の状況

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「にゃー」
「ふにゃう……ごろろ」

 現在、俺はマオとルナを交互に撫でていた。
 俺が国王になり六か月……シャオルーンは王国として独立し、周辺国にも周知した。
 おかげで、ガイアルーン、アグニルーン、エイルーンから使者が来て挨拶……俺は集会所みたいなところに急遽用意したクソ豪華な玉座に座り、玉座の左右にレベル200オーバーの天仙猫猫とケルベロスを従え、使者をビビリまくらせるという『異世界あるある』をやってしまった。
 さて、ファルーン王国からは何もない。てっきり為朝辺りが「このクソハーレムテンプレ野郎があああああああ!!」とかキレながら特攻してくることも考えたんだけどな。
 まあいいや。というわけで、王様だけどニートみたいなスローライフしています。
 
「はあ、なんかダラダラするの慣れてくると何もしたくないわ……」

 俺の新たな仕事は、『臨時玉座の間』に待機し、使者を迎え挨拶を受けること。
 窓の外を見ると、建設中の『シャオルーン王城』が見える……ってか、異世界風っぽい城じゃなくて、なぜか日本風の『城』なんだよな。江戸時代とかにありそうな城。
 設計図を書いたのはサモエドのマイケルだけど……なんで日本の城の様式わかってんだろ。

「ご主人さま、ボールあそびしよー」
「ほら、遊ぶわよ」
「わかったわかった。ははは、元気なネコどもめ」

 臨時玉座の間はけっこう広い。今は俺とマオとルナしかいないので、こうしてボール遊びもできる。
 しばし、三人でボール遊びをしていると。

「失礼します。ご主人様」
「きんちゃん!!」
「きんか猫。なにしにきたのよ」

 金華さんがやって来た。
 傍にはフォルテ、そして奴隷商人のデップリッチさん。
 金華さんは、ルナとマオを軽く撫でてから俺に言う。

「フォルテさんから新しい従業員を城下に住まわせたいと話があり、デップリッチさんからは保護した魔族の受け入れ申請があります」
「あ、ああ。いつも通りお願いします」
「かしこまりました」
「へへへ、国王陛下。ありがとうございます」
「感謝します、国王陛下」

 フォルテは揉み手しながら、デップリッチさんはきちんとお辞儀……はあ、国王ってやめて欲しいけど、俺はもう王様だからダメって金華さんに言われたんだよな。

「にゃうー、きんちゃん。一緒にあそぼうよー」
「ごめんなさい。仕事があるの」
「ふん。相変わらずたいへんね」
「猫又、あなたもね」
「ルナよ。ちゃんと言いなさい」
「ふふ、ごめんなさい」

 うーん、お母さんみたいだ。
 ルナとマオくらいの娘がいても不思議じゃないんだよな。

「あ、金華さん。ところで……ファルーン王国はどうなってます? 使者も勇者も来る気配ないけど」
「私の調べでは、ファルーン王国の勇者は現在、レベル100に到達し、魔王四天王の一人『棺桶』のツァラトゥストラ討伐に動き始めたようです」
「マジで!? れ、レベル100って……もうそこまで上がったのか!?」

 すっげえ……為朝たちやるじゃん。
 俺がネコミミ少女と遊んでいる間に頑張ってたんだな。
 まあ為朝のことだ。『本編クリア後の隠しダンジョン入口でレベル上げ!!』とか言って難易度高いダンジョンとか行ってそうだな。

「魔王とかはもう為朝たちに任せていいか……で、俺はスローライフを満喫するぜ」
「スローライフ?」
「あ、まあ、うん」

 金華さんは「仕事があるので」と言って、フォルテとデップリッチさんと出て行った。
 
「さて。マオにルナ、村の中を散歩するか」
「にゃあー」
「ふにゃあ。城下町でしょ」
「あ、そっか」

 そういや、城あるから村じゃなくて『城下町』にしたんだっけ。

 ◇◇◇◇◇◇

 城下町では、未だに開拓が進んでいた。
 町の広さは初期の数倍。住人も増え、他の国から商人が来て店も出している。
 街道の整備も進み、シャオルーンだけじゃなく他の三国からも街道整備の人員が増えている。そして警備隊も増え、シャオルーンの魔獣が街道に近づかないよう、重点的に見回りもしていた。
 
「にゃあ、人がいっぱい!!」
「ああ。驚いたなー……人間も住んでるしな」

 最も驚いたのは、シャオルーンに『人間』が住み始めたことだ。
 少しずつ、魔族の存在を受け入れ始めたのか、他国から移住者がやってきた。
 まあ、スラム生活をしていた人たちをデップリッチさんが受け入れ、シャオルーンの今の現状を説明したうえで『新天地で暮らさないか? ただし魔族と住むことになる』と誘ったのだ。
 最初は魔族に怯えていた人間たちだが、今ではその存在を受け入れ、むしろ仲良くやっている。
 警備隊にも人間が入ったし、訓練も一緒にやってる。
 まあ知らないみたいだが……道端の草むしりしてるのが『魔王四天王』だったなんて言わない方がいいよな。
 しばし、散歩をしていると、ラフな格好のエリがいた。

「お、国王陛下じゃん」
「……それやめろって」
「あはは、冗談だって」

 エリは笑い、マオを抱っこしてぎゅっと抱きしめた。
 髪が少し濡れていることから、シャワーを浴びてきたようだ。

「狩りの帰りか?」
「うん。シャワー浴びて、これからミュウの店で果実水でも飲もうかなって。アイネも後から来るよ」
「にゃ……かじつ水」
「ふにゃー……」
「ふふ。マオちゃんとルナも来る?」
「いく!!」「いくぞ!!」
「ってわけで、この子たち連れて行きまーすっ!!」

 エリは、マオとルナを連れて行ってしまった……いやいいけどね。
 そういや、エリと藍音、いつの間にか仲良くなったよなあ。
 ちなみに藍音は俺の婚約者のままだ。ガイアルーン王国が友好を結ぶって意味で送り込んできたけど……まあ、趣味合うし、同郷だし、同い年だし、その……可愛いし、そのままにしている。
 そして、エイルーン、アグニルーンも「出遅れた」とばかりに婚約者を送り込んできたが、こっちは拒否した……悪いが俺、ハーレムって好きじゃないんだよね。
 一人になった俺は、住人たちに挨拶しながら散歩を続ける。

「はあ、でっかくなったなあ……」

 シャオルーン王国。
 純和風の城を見上げ、資材を運ぶ犬猫たちやドワーフたちを見る。
 警備隊は装備を統一し訓練してるし、いつの間にか新しくできた店では人間や魔族が買い物したり立ち話している。
 この世界に来て、もう少しで一年くらいかな。

「あれ? あ……俺、とっくに十七歳じゃん」

 異世界生活。思った以上に退屈しないな。
 おーい為朝、そっちはどうしてる? みたいな感じで、あいつらに手紙でも書いてみようかな……もちろん、日本語でな。
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