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第四章

勇者の襲来

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 エリ、マオ、モザドゥークと歩くこと数分。フォルテの店に到着した。
 店の横には大きな馬車があり、いろいろな物資の詰まった木箱が詰んである。そして、馬車の傍で餌を食ってるのは見覚えのある牛、エルダーバイソンだ。
 
「にゃあ、おおきいお店」
「確かにデカい……これで支店なのか」

 店は四階建て、一階部分の入口が広く、店内が良く見える。
 従業員は人間のようだ。店に入ると、笑顔で挨拶してくる。

「いらっしゃいませー!!」
「あ、どうも。あの~……フォルテ、います?」
「会長ですか? えっと、会長はご多忙でして……紹介状などお持ちですか?」
「いやないです。あの、ここにいます?」
「はい。今はお仕事中でして」
「じゃあ……ケイが会いに来たって伝えてくれませんか?」
「……お伝えするだけなら」
 
 そう言い、従業員は不審者を見るように俺を見て店の奥へ。
 
「マオちゃんにはこれに会うかな~?」
「にゃあ。ねこ」
「ふふ、じゃあこの髪留めと猫のぬいぐるみ、買ってあげるね」
「にゃったー!!」

 エリとマオ、いつの間にか買い物楽しんでる。
 モザドゥークは……あ、店の外でお座りしてる。
 ちょっと待つと、フォルテが慌てて店の奥から出てきた。

「こ、これはこれはケイさん!! いやはや驚きました……わざわざこんなところに」
「エリが買いものしたいって言うし来てみた。まあ一時間の距離だよ」
「い、一時間? おかしいな……どう考えても十日位の距離なんですが」
「まあ気にしない。それより、忙しいところ悪かった」
「いえいえ。ケイさんたちも無関係じゃないんで。今、魔獣の素材についての商談してたんですよ」
「そうなんだ。まあ、好きにしてくれ……ああ、お願いあって来たんだ」

 俺はフォルテに『ドワーフたちが飲む酒』と『酒用の麦』をお願いする。
 フォルテは『おまかせを』と自信たっぷりだ。用意させたのは麦の種と、酒樽十本。酒は高級品で、麦もいい物らしい。
 けっこうな荷物になり、モザドゥークに持てるか確認するが……。

『この程度問題ありません。この酒樽があと千樽あっても同じこと』

 自信たっぷりだ。
 エリも、マオと一緒に買い物をしてご満悦。
 まだ午前中だし、一時間で帰れるので、フォルテにお昼をご馳走してもらうことになった。
 やって来たのは国境では一番のレストラン。
 個室を借り、いろいろな大皿料理を注文……すごいな、中華風って言えばいいのか、どれも美味そうだ。
 食事をしながら、フォルテは言う。

「……ああ、ケイさんに伝えておくことがありまして」
「はい?」
「実は、アグニルーン王国から『勇者』が派遣されました。目的は、魔族の討伐です」
「……魔族の討伐ですか」
「ええ。しかも、その魔族がその……ドラゴニュート族なんですよ」
「……マジっすか」
「はい。ケイさんのところにいるドラゴニュート族は、アグニルーンの『勇者』たちによって壊滅させられた者たちです。恐らくですが……狙いは、ケイさんのところにいるドラゴニュート族でしょう」
「……」

 マジか。
 というか、やっぱいたのか勇者……恐らく日本人。
 俺みたいに最近召喚されたとかじゃない、もうこの世界に適応した日本人だろうな。たぶんレベルも高そうだ……うーん、どうすべきか。

「ファルーン王国のように三十名近い勇者を抱えてはいません。アグニルーン、ガイアルーン、エイルーンのように少数精鋭の勇者ですよ。その強さは一国の騎士団を遥かに超え、スキルレベルも五十を超えているそうです」
「バケモンじゃん……ケイ、どーすんのよ」
「どーすんの、って言われても」
「にゃう」

 ちらっとマオを見る。
 そういやこの子、勇者レベル80くらいの強さあるんだっけ。
 でも……こんな可愛いネコミミ少女に『戦ってくれ』なんて言えないしな。
 あ、アースタイタンもいたな。あれ絶対強いし守ってもらうか。それに、まだ召喚していない犬や猫もいるし、いざとなれば……うーん、でも。

「あんまり勇者と敵対して、シャオルーン王国にとんでもないのいた!! なんて思われたらなあ……」
「攻めて来たら戦うしかないでしょうが」
「そうだけど……まあ、とりあえずヤバかったら何とかするよ」
「……あんた、ドラゴニュート族を見殺しとか絶対しないでよね。そうなったらアタシ、さすがに怒るから」
「そこまで腐っちゃいないっての」

 とりあえず、有益な情報を得ることができた。
 フォルテに感謝しつつ、俺たちは村に戻るのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 さて、不安要素もあるし、急いで村に戻ることにした。
 モザドゥークに巨大化してもらい、街の外に用意した巨大コンテナを咥えてもらう。
 中身は支援物資やお酒、そして麦などだ。
 フォルテは言う。

「あの~……本当に、運ばなくていいんですか?」
「ああ。十日もかかるなら来るの大変だろ? とりあえず荷物は運ぶよ」
「あ、ありがとうございます。いや~……それにしてもデカい」

 モザドゥークを見上げながら言う。
 確かにデカい。用意したコンテナも大型トラックくらいの大きさなんだが、モザドゥークが咥えているのを見ると小さく感じる。
 というかモザドゥークの大きさ、一軒家よりもはるかにデカい。
 最初にくっつけていた座椅子はもう付けられないので、俺たちは背中に乗る。

「すっげえふかっふか……しかも広いし、落ちる心配ないな」
「にゃうう、寝ていい?」
「よし。じゃあマオちゃんはアタシと一緒に寝よっか」

 エリはマオを抱っこすると、モザドゥークの背中で寝てしまった。
 俺は起きている。どのくらい早いのか検証したいし。

「ではケイさん!! また今度!!」
「ああ!! また!!」
『では出発します』

 モザドゥークが走り出す……というか、跳躍した。
 そして、新幹線以上の速度で一気に走り出した。

「おおおすっげぇ!! 風も感じないし、車内にいるみたいだ!! 面白れぇ!!」
『主。まだ半分以下の速度です。さらに速度を出せますが……』
「……お、お願いしちゃおうかな」

 ジェットコースター、新幹線と乗ったことはあるが……モザドゥークはそれらの比ではなかった。

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

 一方そのころ。
 シャオルーン領地の村では、ドラゴニュート族たちが建築の手伝いをしていた。
 ドラゴニュート族のサブリーダー、ディエズモは犬たちに頼まれ、丸太を抱えて歩いている。

「よっと、これでいいかな?」
『はい!! ありがとうございますー!!』

 トンカチを咥えた犬と、ノコギリを咥えた犬が器用に作業を始める。
 そして、ドワーフたちも作業に混ざり、ドラゴニュート族たちに指示を出していた。

「おーい!! こっちの丸太も頼む!!」
「悪いが手ぇ貸してくれー!!」

 ドワーフたちも、新しい故郷のために、生き生きと働いていた。
 シャオルーン建国計画。
 滅び、捨てられた領地であるシャオルーンを開拓し、国を作る一大計画。
 ドラゴニュート族も、新たな生きがいに熱心だった。

「ディエズモよ」
「ザレフェドーラ……どうした?」

 ザレフェドーラが、ディエズモの肩を叩く。

「いや、調子はどうかと思ってな。傷はもう癒えたのだろう?」
「ああ。我らが神の偉大なる魔法のおかげでな」
「そうか。なら……戦えるな?」
「…………」

 ザレフェドーラが視線を向けた先。
 村の入口に、武装した五人の男女が揃っていた。

「おいおいマジかー……シャオルーンに村できてるし」

 そう言い、驚いて周囲を見渡すのは、アグニルーン王国の勇者である後藤雄太郎。
 深紅の全身鎧に、背中に赤い大剣を背負っている。
 
「わぁ、犬猫もいっぱい」
「かわいい~」

 花見まどか、桐生アイラは犬猫を見て笑っていた。

「ちょっと、犬猫だけど敵だからね」

 そして、相澤由美が警戒。

「ドラゴニュート族の残党を始末するんだぞ。お前ら、気合い入れろよ」

 藤堂院恭二が、腰の剣を抜く。
 敵襲───ザレフェドーラたちは武装。ミュウも弓を手に向かう。
 ザレフェドーラは、雄太郎に言う。

「ここは我らが村。貴様ら……まだ滅ぼし足りないというのか」
「悪いけどよ、こっちは仕事なんだ。お前ら魔族を滅ぼすためのな!!」

 雄太郎が剣を抜き、ザレフェドーラに突きつける。
 ザレフェドーラも、ドワーフに作ってもらった剣を抜く。

「ならば、ここを守るまで!! 主の作った村は、我らドラゴニュート族が守る!!」

 ザレフェドーラが叫ぶと同時に、雄太郎に向かって走り出した。
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