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光聖剣サザーランドと闇魔剣ア・バオア・クー②/魔装
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サリオスの『鎧身』を見て、ヴェンデッタはうっとりしていた。
「……綺麗」
「き、綺麗?」
「うん。綺麗な光……あの時と同じ、私を救った『光』と同じ」
サリオスは、一瞬……ヴェンデッタの微笑みが、子供のように見えた。
狂気は一瞬、素直な笑みも一瞬。
そして、次に見せたのは、『闇魔剣ア・バオア・クー』を手にしたヴェンデッタ。
「サリオスくん、私……受けとめるね? だからあなたも受け止めて? 私の想い、私の心、私の気持ち……ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ!!」
ヴェンデッタは涙を流す。
すると、『闇魔剣ア・バオア・クー』から、禍々しい黒いモヤが噴き出した。
「『魔装』」
モヤがヴェンデッタに纏わりつくと、まるで漆黒のドレスのような、禍々しいドレスとなる。
顔が半分だけ布で包まれ、身体は髑髏や骨をあしらった禍々しいドレス。手にはさらに巨大化した大鎌があり、口元だけが歪んだ笑みを浮かべていた。
鎧ではない。ドレス。
鎧身ではなく、魔装。
「『闇魔剣ア・バオア・クー=オスプキュリテ・ストラプティ』……どう? 私、綺麗?」
「…………」
圧が跳ね上がった。
鎧を着たサリオスの戦闘力も跳ね上がったが、ヴェンデッタも同じだった。
互いの力が上がった以上、無傷で済むような結果にはならない。
サリオスは剣を構える。
「……決着を付けようか」
「ええ。私の『愛』を、あなたに捧げるわぁ」
サリオスから『光』が、ヴェンデッタから『闇』が溢れ出した。
◇◇◇◇◇◇
サリオスは聖剣を構え、一気に飛び出した。
鎧の背中から光が噴き出し、まるで『翼』のように広がる。
対してヴェンデッタは動かない。
大鎌を構えると、ドレスの全身から黒いモヤが噴き出す。
攻撃、そして迎撃。
サリオスは、サザーランドに光を集め、巨大な『光剣』を作り出す。
ヴェンデッタは、黒いモヤでいくつもの『鎌』を作り、全てを高速で回転させた。
「勝負──……『アストラルシャイン・ブレイバスター』!!」
光の翼を噴射させ、その勢いを利用した『光剣』による斬撃。
美しかった……ヴェンデッタは、それを見てしまった。
ヴェンデッタは、全ての鎌をサリオスに向けて飛ばす。
「『ネグロストライザ』……」
全ての鎌がサリオスの鎧に突き刺さる。だが、サリオスは止まらない。
トドメとばかりに、ヴェンデッタの大鎌がサリオスを両断する。
鎧に亀裂が入る。だが……サリオスは止まらない。
そのままの勢いで、サリオスはサザーランドを振った。
「──ぁぁ」
ヴェンデッタは斬撃を浴び、そのまま後方に吹き飛ばされる。
サリオスの斬撃は、ヴェンデッタごと『吸魔の杭』を叩き切った。
崩れ落ちる杭。そして、ドレスが解除されて崩れ落ちるヴェンデッタ。
サリオスとヴェンデッタの戦いは……サリオスの勝利で幕を閉じた。
◇◇◇◇◇◇
サリオスは鎧を解除……そして、そのまま崩れた。
「う、ぐ」
ヴェンデッタの鎌が刺さり、出血していた。
だが……立った。そして、歩き出した。
向かったのは、倒れているヴェンデッタ。
サリオスは、ヴェンデッタを抱き起す。
「ぁ……サリオス、くん」
「どうして手加減したんだ」
サリオスは気付いていた。
最後の攻撃。明らかに、ヴェンデッタは手を抜いていた。
じゃなければ、大量の鎌はサリオスに深く突き刺さっていたはずだし、とどめの一撃である大鎌も、サリオスを両断できた。
認めたくはない。だが認めた。
ヴェンデッタは、サリオスよりも強かった。
「だって……綺麗だったから」
「……」
「私を、救ってくれた光だから……消したくなかったの」
「……ヴェンデッタ」
「綺麗な光、見れたから……もう、満足」
闇魔剣ア・バオア・クーが、煙のように消えた。
そして、黒い煙となった魔剣は、風に乗ってどこかへ消えた。
サリオスは言う。
「きみは死なない。手加減をしたから」
「……え?」
「やっぱり、ボクもまだまだ甘い……自分に好意を向けてくれる相手に、非情にはなりきれない。アンジェリーナさんみたいに、魔族と分かり合えるかもって、思ってしまった」
サリオスはヴェンデッタの手に触れた。
「その、好きとかは置いて……まずは、友達から始めないか? 人と魔族の新しい時代を始めるために、殺し合うだけじゃない道を作ることも、王族の義務だと思うから」
ヴェンデッタは気付いた。
血が出ていない。痛みこそあるが、斬られたはずの胸は、服が破れるだけで済んでいた。
サリオスはマントを脱ぎ、そっとヴェンデッタに掛ける。
「その……ダメ、かな」
「ダメじゃない!!」
「え、ちょっ」
ヴェンデッタはサリオスに飛びついた。
その後……サリオスは『吸い殺されるかと思った』と語り……何があったのかは絶対に語らないのだった。
こうして、サリオスとヴェンデッタの戦いは終わった。
本気の殺し合いではなく、どちらかといえば『説得』のような。
殺し合うだけじゃない、人と魔族の共存する道の一歩を、サリオス自身が選び、歩む結果になった。
「サリオスくん、結婚式は黒いドレスがいいな……ダメ?」
「友達って言ったじゃないか……というか、結婚って」
「サリオスくんは白い礼服。私は黒いドレス……素敵。それと今夜、お部屋にお邪魔するね。うふふ、うふふふ」
「…………」
ほんの少し……ほんの少しだけ、サリオスはヴェンデッタを救ったことを後悔するのだった。
「……綺麗」
「き、綺麗?」
「うん。綺麗な光……あの時と同じ、私を救った『光』と同じ」
サリオスは、一瞬……ヴェンデッタの微笑みが、子供のように見えた。
狂気は一瞬、素直な笑みも一瞬。
そして、次に見せたのは、『闇魔剣ア・バオア・クー』を手にしたヴェンデッタ。
「サリオスくん、私……受けとめるね? だからあなたも受け止めて? 私の想い、私の心、私の気持ち……ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ!!」
ヴェンデッタは涙を流す。
すると、『闇魔剣ア・バオア・クー』から、禍々しい黒いモヤが噴き出した。
「『魔装』」
モヤがヴェンデッタに纏わりつくと、まるで漆黒のドレスのような、禍々しいドレスとなる。
顔が半分だけ布で包まれ、身体は髑髏や骨をあしらった禍々しいドレス。手にはさらに巨大化した大鎌があり、口元だけが歪んだ笑みを浮かべていた。
鎧ではない。ドレス。
鎧身ではなく、魔装。
「『闇魔剣ア・バオア・クー=オスプキュリテ・ストラプティ』……どう? 私、綺麗?」
「…………」
圧が跳ね上がった。
鎧を着たサリオスの戦闘力も跳ね上がったが、ヴェンデッタも同じだった。
互いの力が上がった以上、無傷で済むような結果にはならない。
サリオスは剣を構える。
「……決着を付けようか」
「ええ。私の『愛』を、あなたに捧げるわぁ」
サリオスから『光』が、ヴェンデッタから『闇』が溢れ出した。
◇◇◇◇◇◇
サリオスは聖剣を構え、一気に飛び出した。
鎧の背中から光が噴き出し、まるで『翼』のように広がる。
対してヴェンデッタは動かない。
大鎌を構えると、ドレスの全身から黒いモヤが噴き出す。
攻撃、そして迎撃。
サリオスは、サザーランドに光を集め、巨大な『光剣』を作り出す。
ヴェンデッタは、黒いモヤでいくつもの『鎌』を作り、全てを高速で回転させた。
「勝負──……『アストラルシャイン・ブレイバスター』!!」
光の翼を噴射させ、その勢いを利用した『光剣』による斬撃。
美しかった……ヴェンデッタは、それを見てしまった。
ヴェンデッタは、全ての鎌をサリオスに向けて飛ばす。
「『ネグロストライザ』……」
全ての鎌がサリオスの鎧に突き刺さる。だが、サリオスは止まらない。
トドメとばかりに、ヴェンデッタの大鎌がサリオスを両断する。
鎧に亀裂が入る。だが……サリオスは止まらない。
そのままの勢いで、サリオスはサザーランドを振った。
「──ぁぁ」
ヴェンデッタは斬撃を浴び、そのまま後方に吹き飛ばされる。
サリオスの斬撃は、ヴェンデッタごと『吸魔の杭』を叩き切った。
崩れ落ちる杭。そして、ドレスが解除されて崩れ落ちるヴェンデッタ。
サリオスとヴェンデッタの戦いは……サリオスの勝利で幕を閉じた。
◇◇◇◇◇◇
サリオスは鎧を解除……そして、そのまま崩れた。
「う、ぐ」
ヴェンデッタの鎌が刺さり、出血していた。
だが……立った。そして、歩き出した。
向かったのは、倒れているヴェンデッタ。
サリオスは、ヴェンデッタを抱き起す。
「ぁ……サリオス、くん」
「どうして手加減したんだ」
サリオスは気付いていた。
最後の攻撃。明らかに、ヴェンデッタは手を抜いていた。
じゃなければ、大量の鎌はサリオスに深く突き刺さっていたはずだし、とどめの一撃である大鎌も、サリオスを両断できた。
認めたくはない。だが認めた。
ヴェンデッタは、サリオスよりも強かった。
「だって……綺麗だったから」
「……」
「私を、救ってくれた光だから……消したくなかったの」
「……ヴェンデッタ」
「綺麗な光、見れたから……もう、満足」
闇魔剣ア・バオア・クーが、煙のように消えた。
そして、黒い煙となった魔剣は、風に乗ってどこかへ消えた。
サリオスは言う。
「きみは死なない。手加減をしたから」
「……え?」
「やっぱり、ボクもまだまだ甘い……自分に好意を向けてくれる相手に、非情にはなりきれない。アンジェリーナさんみたいに、魔族と分かり合えるかもって、思ってしまった」
サリオスはヴェンデッタの手に触れた。
「その、好きとかは置いて……まずは、友達から始めないか? 人と魔族の新しい時代を始めるために、殺し合うだけじゃない道を作ることも、王族の義務だと思うから」
ヴェンデッタは気付いた。
血が出ていない。痛みこそあるが、斬られたはずの胸は、服が破れるだけで済んでいた。
サリオスはマントを脱ぎ、そっとヴェンデッタに掛ける。
「その……ダメ、かな」
「ダメじゃない!!」
「え、ちょっ」
ヴェンデッタはサリオスに飛びついた。
その後……サリオスは『吸い殺されるかと思った』と語り……何があったのかは絶対に語らないのだった。
こうして、サリオスとヴェンデッタの戦いは終わった。
本気の殺し合いではなく、どちらかといえば『説得』のような。
殺し合うだけじゃない、人と魔族の共存する道の一歩を、サリオス自身が選び、歩む結果になった。
「サリオスくん、結婚式は黒いドレスがいいな……ダメ?」
「友達って言ったじゃないか……というか、結婚って」
「サリオスくんは白い礼服。私は黒いドレス……素敵。それと今夜、お部屋にお邪魔するね。うふふ、うふふふ」
「…………」
ほんの少し……ほんの少しだけ、サリオスはヴェンデッタを救ったことを後悔するのだった。
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