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アナタの愛こそ私のすべて・愛の魔王バビスチェ⑥/電光石火
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アオイは駆ける。
腰にある日本刀形態の『雷聖剣イザナギ』からは、これまでにない力が満ちている。
聖剣レジェンディア学園の正門を飛び越え、生徒会室へ。
学園は不自然なまでに静かだ。
能力『雷命』を発動───……学生寮内で、『ふしだらな行為』をしている男女が多くいた。
アオイのように、この『桃色の霧』から逃れることができなかった生徒だろう。
アオイは認めない。
「こんなものが、愛?」
断じて違う。
愛とはもっと、尊いもの。
男であるアオイはわからない。だが、アオイの中にある女は叫んでいた。
愛とは、通じ合うこと。
「拙者には理解できない。でも……『私』にはわかった」
女を認めてくれたロイ。自分はアオイ・クゼだと……男ではない、女のアオイを認めてくれた。
男も女も合わせて、アオイ・クゼ。
兄の代わりではない。アオイ・クゼは『雷聖剣イザナギ』に選ばれた七聖剣士だ。
「行くぞ、イザナギ」
紫電が、これまでになく輝いて爆ぜた。
◇◇◇◇◇
バビスチェは、生徒会室の椅子に座っていた。
回転イスを回すと、外が見える窓がある。
バビスチェは、人差し指を立て空中をゆっくりとなぞる……すると、生徒会室の壁が綺麗さっぱり両断され、外から丸見えになった。
「フフ、来たわねぇ」
椅子に座ったまま、バビスチェは足を組んで指をしゃぶる。
妖艶なまま、敵意を抱くことも、配下を殺された恨みも持たず。
ただ、出迎える。
向かって来るアオイを、優しく『愛』で包むため。
「さぁ、いらっしゃぁ~い♪」
「───ッ!!」
部屋にいたヴェスタは感じていた。
何かが向かって来る。
恐るべき速度。手を出すなと言われたが、無意識のうちに『炎魔剣イフリート』の柄を握っていた。
だが、一瞬で身体が硬直する。
「動いたら食べちゃうわよん?」
バビスチェが、真っ黒に染まった眼で、口が裂けそうなくらい歪んだ笑みを浮かべていた。
魔王。『愛の魔王』バビスチェは、四人の魔王で最弱。
そう聞いていたが、戦う気なぞ微塵も起きない。
ヴェスタは頷き、生徒会室から出て行った。
そして───見えた。
「フフフ、アオイちゃぁ~ん♪」
両手を広げ、アオイを出迎えるバビスチェ。
優しく包み込んで、愛してあげる───……そう、思っていた。
紫電に包まれたアオイが跳躍。バビスチェに向かって飛ぶ。
◇◇◇◇◇
雷聖剣イザナギは、雷の力を持つ聖剣。
持続的な力は風聖剣に負けるが、一瞬の速度は風よりも速い。
今、アオイの速度は、雷聖剣イザナギを手にして最速だった。
「もっと、いける」
全ての想いを刀に載せ、アオイは笑う。
「何でも、斬れる」
紫電が、アオイの身体を焼く。
その熱さが、心地いい。
「行け、アオイ!!」
ロイの声が聞こえる。
これほどまでに気分が高揚するのは、人生初。
◇◇◇◇◇
『男も女もアナタ、大事なのは受け入れること。さぁ、進みなさい』
◇◇◇◇◇
「───『鎧身』」
アオイの全身を、紫色の全身鎧が包み込む。
鎧武者。肌の露出が一切ない、紫電の甲冑。手に持つのは『日本刀』だ。
雷聖剣イザナギの最終形態。『雷聖剣鎧イザナギ・九天応元雷冥普化天尊』。
その姿を見て、バビスチェの顔色が初めて変わった。
「え───っ」
「『雷命大開眼』」
全てを視る、見る、観る、診る、看る。
命を、流れを、呼吸を、感情を、動作を、筋肉を。
全ての先にあるのは、僅かな未来。
アオイの眼が、数秒先の未来を見た。バビスチェがどう動くのか、何をするのかが頭の中に流れ込んで来るのがわかる。
アオイは、『雷神聖剣イザナギノオオカミ』の柄を握る。
「フフ、最終形態なんて何時ぶりかしらぁ~」
一秒もない時間だが、バビスチェは言う。
いくら最終形態に覚醒しても、力はバビスチェが上。
未来を見ても、アオイの攻撃は届かない。
だが───アオイは言う。
「拙者は───……私は、一人じゃない!!」
◇◇◇◇◇
ロイは、エレノアたちの聖剣を叩き落した瞬間、王都に飛び込んだ。
『なっ!? おい、ここから『時空矢』で援護をするんじゃ』
「変更!! やっぱり俺も、アオイの傍で援護する!!」
『はぁ!? おい、いくら我輩の力を持っても、今のバビスチェの聖域の効果には長く抗えん!! アオイが失敗したら、お前も囚われるぞ!?』
「囚われない!! アオイは成功する。それに、俺だって援護するからな!!」
『……バカが。だが、乗ってやる!! 行け、ロイ!!』
「ああ。見てろデスゲイズ……俺とアオイが魔王にブチかます瞬間を!!」
王都内は、桃色のモヤに包まれている。
いくらデスゲイズを持っても、このモヤがロイの精神を大きくゆさぶった。
だが、ロイは走る。
全力の身体強化で向かうのは、聖剣レジェンディア学園。
ロイは見た。全身鎧のアオイが跳躍した瞬間を。
『やれ、ロイ!!』
デスゲイズを投げ捨て、ロイは両手を合わせ少しだけズラした。
「アオイ!! 行くぞ───……『魔王聖域』展開!!」
半径百メートル。ロイを中心に展開された『聖域』。
『聖剣覇王七天虚空星殿』が発動し、アオイの身体能力が七倍に、攻撃力が七倍となった。
この瞬間───アオイの力が、バビスチェを僅かに上回った。
「ッ!?」
バビスチェが驚愕。
右手を上げ、防御姿勢を取ろうとする。
だが、音もなくアオイがバビスチェを通り過ぎた。
「久世雷式帯刀剣技『極』───……『伊邪那美』」
静寂が生徒会室を包み込み───バビスチェの身体が百の斬撃でバラバラに砕け爆ぜた。
腰にある日本刀形態の『雷聖剣イザナギ』からは、これまでにない力が満ちている。
聖剣レジェンディア学園の正門を飛び越え、生徒会室へ。
学園は不自然なまでに静かだ。
能力『雷命』を発動───……学生寮内で、『ふしだらな行為』をしている男女が多くいた。
アオイのように、この『桃色の霧』から逃れることができなかった生徒だろう。
アオイは認めない。
「こんなものが、愛?」
断じて違う。
愛とはもっと、尊いもの。
男であるアオイはわからない。だが、アオイの中にある女は叫んでいた。
愛とは、通じ合うこと。
「拙者には理解できない。でも……『私』にはわかった」
女を認めてくれたロイ。自分はアオイ・クゼだと……男ではない、女のアオイを認めてくれた。
男も女も合わせて、アオイ・クゼ。
兄の代わりではない。アオイ・クゼは『雷聖剣イザナギ』に選ばれた七聖剣士だ。
「行くぞ、イザナギ」
紫電が、これまでになく輝いて爆ぜた。
◇◇◇◇◇
バビスチェは、生徒会室の椅子に座っていた。
回転イスを回すと、外が見える窓がある。
バビスチェは、人差し指を立て空中をゆっくりとなぞる……すると、生徒会室の壁が綺麗さっぱり両断され、外から丸見えになった。
「フフ、来たわねぇ」
椅子に座ったまま、バビスチェは足を組んで指をしゃぶる。
妖艶なまま、敵意を抱くことも、配下を殺された恨みも持たず。
ただ、出迎える。
向かって来るアオイを、優しく『愛』で包むため。
「さぁ、いらっしゃぁ~い♪」
「───ッ!!」
部屋にいたヴェスタは感じていた。
何かが向かって来る。
恐るべき速度。手を出すなと言われたが、無意識のうちに『炎魔剣イフリート』の柄を握っていた。
だが、一瞬で身体が硬直する。
「動いたら食べちゃうわよん?」
バビスチェが、真っ黒に染まった眼で、口が裂けそうなくらい歪んだ笑みを浮かべていた。
魔王。『愛の魔王』バビスチェは、四人の魔王で最弱。
そう聞いていたが、戦う気なぞ微塵も起きない。
ヴェスタは頷き、生徒会室から出て行った。
そして───見えた。
「フフフ、アオイちゃぁ~ん♪」
両手を広げ、アオイを出迎えるバビスチェ。
優しく包み込んで、愛してあげる───……そう、思っていた。
紫電に包まれたアオイが跳躍。バビスチェに向かって飛ぶ。
◇◇◇◇◇
雷聖剣イザナギは、雷の力を持つ聖剣。
持続的な力は風聖剣に負けるが、一瞬の速度は風よりも速い。
今、アオイの速度は、雷聖剣イザナギを手にして最速だった。
「もっと、いける」
全ての想いを刀に載せ、アオイは笑う。
「何でも、斬れる」
紫電が、アオイの身体を焼く。
その熱さが、心地いい。
「行け、アオイ!!」
ロイの声が聞こえる。
これほどまでに気分が高揚するのは、人生初。
◇◇◇◇◇
『男も女もアナタ、大事なのは受け入れること。さぁ、進みなさい』
◇◇◇◇◇
「───『鎧身』」
アオイの全身を、紫色の全身鎧が包み込む。
鎧武者。肌の露出が一切ない、紫電の甲冑。手に持つのは『日本刀』だ。
雷聖剣イザナギの最終形態。『雷聖剣鎧イザナギ・九天応元雷冥普化天尊』。
その姿を見て、バビスチェの顔色が初めて変わった。
「え───っ」
「『雷命大開眼』」
全てを視る、見る、観る、診る、看る。
命を、流れを、呼吸を、感情を、動作を、筋肉を。
全ての先にあるのは、僅かな未来。
アオイの眼が、数秒先の未来を見た。バビスチェがどう動くのか、何をするのかが頭の中に流れ込んで来るのがわかる。
アオイは、『雷神聖剣イザナギノオオカミ』の柄を握る。
「フフ、最終形態なんて何時ぶりかしらぁ~」
一秒もない時間だが、バビスチェは言う。
いくら最終形態に覚醒しても、力はバビスチェが上。
未来を見ても、アオイの攻撃は届かない。
だが───アオイは言う。
「拙者は───……私は、一人じゃない!!」
◇◇◇◇◇
ロイは、エレノアたちの聖剣を叩き落した瞬間、王都に飛び込んだ。
『なっ!? おい、ここから『時空矢』で援護をするんじゃ』
「変更!! やっぱり俺も、アオイの傍で援護する!!」
『はぁ!? おい、いくら我輩の力を持っても、今のバビスチェの聖域の効果には長く抗えん!! アオイが失敗したら、お前も囚われるぞ!?』
「囚われない!! アオイは成功する。それに、俺だって援護するからな!!」
『……バカが。だが、乗ってやる!! 行け、ロイ!!』
「ああ。見てろデスゲイズ……俺とアオイが魔王にブチかます瞬間を!!」
王都内は、桃色のモヤに包まれている。
いくらデスゲイズを持っても、このモヤがロイの精神を大きくゆさぶった。
だが、ロイは走る。
全力の身体強化で向かうのは、聖剣レジェンディア学園。
ロイは見た。全身鎧のアオイが跳躍した瞬間を。
『やれ、ロイ!!』
デスゲイズを投げ捨て、ロイは両手を合わせ少しだけズラした。
「アオイ!! 行くぞ───……『魔王聖域』展開!!」
半径百メートル。ロイを中心に展開された『聖域』。
『聖剣覇王七天虚空星殿』が発動し、アオイの身体能力が七倍に、攻撃力が七倍となった。
この瞬間───アオイの力が、バビスチェを僅かに上回った。
「ッ!?」
バビスチェが驚愕。
右手を上げ、防御姿勢を取ろうとする。
だが、音もなくアオイがバビスチェを通り過ぎた。
「久世雷式帯刀剣技『極』───……『伊邪那美』」
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