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久しぶりの登校
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「ロイ、久しぶり」
「あれ……ユノ?」
地のダンジョン『地底宝物殿』をクリアし、急ぎ寮へ戻ったロイ。
今回は晩飯をしっかり食べ、しっかり睡眠を取った。おかげで目覚めもバッチリ、気力も充実。学園を終えた後、四つ目の『風のダンジョン』へ向かおうと寮を出ると、ユノがいた。
ユノは、ロイを見つけるなり腕にしがみつく。
「えへへ、ロイの匂い。久しぶり」
「お、おい……」
むにゅっと、柔らかな胸が腕で潰れる。だがユノは全く気にしていない。
ロイは、集中力を切らさないようにとカバンに入れてある飴玉を取り出し、ユノに渡した。
「ほ、ほら。飴やるから離れろって」
「あーん」
「お、おい」
「口に入れて」
どうやら、離れる気はないようだ。
一度、お菓子をあげただけでこの懐かれよう……ロイ以外の男だったら、いろいろ勘違いしてしまうだろう。ある意味、自分でよかったとロイは思う。
『ククク、お前も男なら抱いてっぎゃん!?』
「ロイ?」
「いや、ちょっと虫が」
ロイは木刀形態のデスゲイズの柄を強めに叩いた。
そして───いきなり、全身に痛みが走る。
「───い、っづ!?」
「ロイ?」
「わ、悪いユノ、ちょっと」
ユノはロイから離れる。
痛みの原因は、すぐにわかった。
ユノの『氷聖剣』が、ユノがロイに抱きついた時に、僅かながら触れていたのである。服越しでも『刃物に触れることはできない』という誓約は生きていた。
いいタイミングで離れてくれた。
ロイとユノは歩き出す。すると、エレノアが後ろから来た。
「あ、いた!! もうユノ、一緒に行くって……って、ロイ?」
「よ、エレノア」
「……あのさ、聞きたいことあるんだけど」
「まぁまぁ、あとでな。ってか、ダンジョンいいのか?」
「昨日、『地のダンジョン』が消滅したわ。未だかつてない速度の攻略だって、みんな驚いてた」
「そっか。じゃあ残りは」
「風のダンジョンと、最後のダンジョンよ。風のダンジョンは、殿下が攻略に当たってる。あたしとユノは、最後のダンジョンが現れるまで待機になったの……つまり、学園に通えるわ」
「ロイと一緒」
と、ユノがロイの腕に再び抱きつく。
「あ、こらユノ、ダメだってば!!」
「エレノアもすればいいのに」
「あたしはそういうことしないし。ほら、人目に付くからやめなさい」
「あうー」
エレノアに引き剥がされ、ユノは渋々離れた。
ダンジョン内でも見たが、二人はだいぶ仲良しになったようだ。
「ロイ、あとで」
「ああ」
「む、何かお話してる」
こうして、ロイは久しぶりにエレノアたちと登校することができた。
◇◇◇◇◇◇
エレノアとはクラスが違うので別れ、ロイとユノはAクラスへ。
ユノが教室に入ると、一気に注目され、クラスメイトたちが集まった。
「ユノさん、ダンジョン行ったってマジ!?」「どんなところ!?」
「怪我してない!?」「ね、お宝あった!?」「オレも行きたい!!」
ワイワイと囲まれ、ユノは自分の席に座ると姿が見えないくらい囲まれた。
ロイは近づけず、少し離れた場所にいるオルカの元へ。
「よ、ロイ」
「おう。いやー、人気者だな」
「そりゃ、ダンジョン入った聖剣士様だからな」
「…………」
俺も入ったけどな!! そう言いたくなるロイだった。
すると、ユイカが二人の元へ。
「こりゃしばらく近づけないね。せっかく来れたのに、お話したいなー」
「お昼にすりゃいいだろ? どうせロイのところ来るし」
「いや、確定事項にするなよ」
授業が始まり、ようやくユノは解放された……どこか疲れているように見えたのは、きっと気のせいではないかもしれない。
◇◇◇◇◇◇
午前が終わり、お昼の時間。
ユノは相変わらず囲まれていた。話かけようにも近づけないので、仕方なくロイはオルカとユイカの三人で、いつもの中庭でパンを食べることに。
「ユノちゃん、ほんと大人気だな」
「だな。ダンジョンってどんなところだとか、いろいろ聞かれてるみたいだ」
「ダンジョンなぁ……まぁ、オレらみたいな見習い聖剣士には関係ないな」
「だよねー……あ、ロイ、そのチョコパンちょうだい」
「はいよ」
ユイカにパンの袋を渡す。
午後からは剣術授業だ。
「そういや、魔法の授業って二期からだよな」
「なんだよいきなり」
「いや、昨日の自主訓練でさ、魔法使ってる奴らいたんだよ。オレは『水』属性だから水とか氷系の魔法使えるんだよなー」
「あたしは風属性だから、風魔法だね。ロイは?」
「俺はない」
「またまたー」
ユイカはロイの背中をバシバシ叩く。
『魔法か。まぁ、使えんこともないが……お前は権能のが使いやすいだろう?』
「まぁな」
ぽそっと返事をする。確かに、魔法より矢を射るほうが早い。
それに、今はいろいろな『矢』を作ることができる。
「な、今日は放課後暇なんだろ? 魔法の訓練してみるから付き合えよ!」
「あー……」
「お前、いい加減に夜遊びやめろって。若いし血気盛んなのは理解できるけどさー」
「そうよ? ロイ、たまにはあたしらと遊ぼうよ」
「うぐ」
ロイとしても遊びたい。だが……今、まさにこの瞬間、サリオスが『風のダンジョン』を攻略している。ロイとしては、援護しに行きたい気持ちが強い。
正直には言えないのが、なんとももどかしい。せっかくできた友人に『夜遊び』してると思われるのも、かなり嫌だ。
すると、ロイの頭にポンと手が乗せられた。
「魔法の訓練するなら、あたしが付き合ってもいいよ」
「え、エレノアちゃん!? マジで!?」
「ええ。二学期から魔法訓練始まるけど、みんな待ってられないみたいだしね」
「わたしも」
と、ユノも来た。
ユイカは「やったぁ!」と喜び、ユノを隣に座らせる。
エレノアは、オルカの隣に座る直前、ロイの手にメモを握らせた。
「魔法、あたしらも必要よね。使える手はいくらあってもいいし」
「同意」
「よっしゃ、今日の放課後は魔法訓練だぜ!」
エレノアを見ると、ロイを見て小さく頷く。
ロイは、パンを食べるふりをしながら、手に持ったメモを見た。
そこには『いつもの』とだけ書かれている。それだけでロイにはわかった。
◇◇◇◇◇◇
放課後、エレノアたちが魔法訓練をする前に、ロイは『見張り塔』へ。
上る時間が惜しいのか、ドアの前にエレノアがいた。
「魔界貴族、あんたがやったんでしょ?」
「まぁな。でっかいモグラだった」
「モグラ……? まぁいいや。それで、今日はどうする?」
「殿下のところ行く。明日も授業だし……まぁ、不眠不休で頑張るよ」
「そ……」
「それにしても、エレノアもユノも強くなったな。その炎聖剣、形代わってたよな」
「あんた、見てたの?」
「ああ。あの、ダンジョンの守護魔獣……俺の援護、いらなかったな」
「ま、あんたに頼りきるのもね。ふふ……見てて、もっともっと強くなるから」
『だが、油断するなよ。その聖剣の真の力は、未だに発揮されていない。あの女が作った怨念の力は、そんなものじゃないぞ』
「「……え?」」
怨念の力。
何やら、不穏な言葉だ。
「デスゲイズ、そういえばお前、聖剣を作った女神のこと知ってるんだよな」
『ああ。それと、何度か言ったが、あの女は女神ではない。まぁ、人間からすれば女神だろうがな』
「……なんか、興味あるかも」
『話せば長くなる。我輩も、一度しか会ったことがない……だが、あれほどの女は、初めてだった』
「「…………」」
『まぁいい。それよりロイ、風のダンジョンに行くのだろう?』
「あ、ああ」
「あたしも、ユイカたちのところに行くね。じゃあロイ、気を付けてね」
「ああ。な、エレノア……風のダンジョンをクリアしたら、最後のダンジョンに入るんだよな?」
「ええ。四つのダンジョンをクリアすると現れる、『魔のダンジョン』ね」
「……なんとなく、嫌な予感がする。気を付けようぜ」
「ええ」
ロイはエレノアと別れ、急いで『風のダンジョン』へ向かった。
「あれ……ユノ?」
地のダンジョン『地底宝物殿』をクリアし、急ぎ寮へ戻ったロイ。
今回は晩飯をしっかり食べ、しっかり睡眠を取った。おかげで目覚めもバッチリ、気力も充実。学園を終えた後、四つ目の『風のダンジョン』へ向かおうと寮を出ると、ユノがいた。
ユノは、ロイを見つけるなり腕にしがみつく。
「えへへ、ロイの匂い。久しぶり」
「お、おい……」
むにゅっと、柔らかな胸が腕で潰れる。だがユノは全く気にしていない。
ロイは、集中力を切らさないようにとカバンに入れてある飴玉を取り出し、ユノに渡した。
「ほ、ほら。飴やるから離れろって」
「あーん」
「お、おい」
「口に入れて」
どうやら、離れる気はないようだ。
一度、お菓子をあげただけでこの懐かれよう……ロイ以外の男だったら、いろいろ勘違いしてしまうだろう。ある意味、自分でよかったとロイは思う。
『ククク、お前も男なら抱いてっぎゃん!?』
「ロイ?」
「いや、ちょっと虫が」
ロイは木刀形態のデスゲイズの柄を強めに叩いた。
そして───いきなり、全身に痛みが走る。
「───い、っづ!?」
「ロイ?」
「わ、悪いユノ、ちょっと」
ユノはロイから離れる。
痛みの原因は、すぐにわかった。
ユノの『氷聖剣』が、ユノがロイに抱きついた時に、僅かながら触れていたのである。服越しでも『刃物に触れることはできない』という誓約は生きていた。
いいタイミングで離れてくれた。
ロイとユノは歩き出す。すると、エレノアが後ろから来た。
「あ、いた!! もうユノ、一緒に行くって……って、ロイ?」
「よ、エレノア」
「……あのさ、聞きたいことあるんだけど」
「まぁまぁ、あとでな。ってか、ダンジョンいいのか?」
「昨日、『地のダンジョン』が消滅したわ。未だかつてない速度の攻略だって、みんな驚いてた」
「そっか。じゃあ残りは」
「風のダンジョンと、最後のダンジョンよ。風のダンジョンは、殿下が攻略に当たってる。あたしとユノは、最後のダンジョンが現れるまで待機になったの……つまり、学園に通えるわ」
「ロイと一緒」
と、ユノがロイの腕に再び抱きつく。
「あ、こらユノ、ダメだってば!!」
「エレノアもすればいいのに」
「あたしはそういうことしないし。ほら、人目に付くからやめなさい」
「あうー」
エレノアに引き剥がされ、ユノは渋々離れた。
ダンジョン内でも見たが、二人はだいぶ仲良しになったようだ。
「ロイ、あとで」
「ああ」
「む、何かお話してる」
こうして、ロイは久しぶりにエレノアたちと登校することができた。
◇◇◇◇◇◇
エレノアとはクラスが違うので別れ、ロイとユノはAクラスへ。
ユノが教室に入ると、一気に注目され、クラスメイトたちが集まった。
「ユノさん、ダンジョン行ったってマジ!?」「どんなところ!?」
「怪我してない!?」「ね、お宝あった!?」「オレも行きたい!!」
ワイワイと囲まれ、ユノは自分の席に座ると姿が見えないくらい囲まれた。
ロイは近づけず、少し離れた場所にいるオルカの元へ。
「よ、ロイ」
「おう。いやー、人気者だな」
「そりゃ、ダンジョン入った聖剣士様だからな」
「…………」
俺も入ったけどな!! そう言いたくなるロイだった。
すると、ユイカが二人の元へ。
「こりゃしばらく近づけないね。せっかく来れたのに、お話したいなー」
「お昼にすりゃいいだろ? どうせロイのところ来るし」
「いや、確定事項にするなよ」
授業が始まり、ようやくユノは解放された……どこか疲れているように見えたのは、きっと気のせいではないかもしれない。
◇◇◇◇◇◇
午前が終わり、お昼の時間。
ユノは相変わらず囲まれていた。話かけようにも近づけないので、仕方なくロイはオルカとユイカの三人で、いつもの中庭でパンを食べることに。
「ユノちゃん、ほんと大人気だな」
「だな。ダンジョンってどんなところだとか、いろいろ聞かれてるみたいだ」
「ダンジョンなぁ……まぁ、オレらみたいな見習い聖剣士には関係ないな」
「だよねー……あ、ロイ、そのチョコパンちょうだい」
「はいよ」
ユイカにパンの袋を渡す。
午後からは剣術授業だ。
「そういや、魔法の授業って二期からだよな」
「なんだよいきなり」
「いや、昨日の自主訓練でさ、魔法使ってる奴らいたんだよ。オレは『水』属性だから水とか氷系の魔法使えるんだよなー」
「あたしは風属性だから、風魔法だね。ロイは?」
「俺はない」
「またまたー」
ユイカはロイの背中をバシバシ叩く。
『魔法か。まぁ、使えんこともないが……お前は権能のが使いやすいだろう?』
「まぁな」
ぽそっと返事をする。確かに、魔法より矢を射るほうが早い。
それに、今はいろいろな『矢』を作ることができる。
「な、今日は放課後暇なんだろ? 魔法の訓練してみるから付き合えよ!」
「あー……」
「お前、いい加減に夜遊びやめろって。若いし血気盛んなのは理解できるけどさー」
「そうよ? ロイ、たまにはあたしらと遊ぼうよ」
「うぐ」
ロイとしても遊びたい。だが……今、まさにこの瞬間、サリオスが『風のダンジョン』を攻略している。ロイとしては、援護しに行きたい気持ちが強い。
正直には言えないのが、なんとももどかしい。せっかくできた友人に『夜遊び』してると思われるのも、かなり嫌だ。
すると、ロイの頭にポンと手が乗せられた。
「魔法の訓練するなら、あたしが付き合ってもいいよ」
「え、エレノアちゃん!? マジで!?」
「ええ。二学期から魔法訓練始まるけど、みんな待ってられないみたいだしね」
「わたしも」
と、ユノも来た。
ユイカは「やったぁ!」と喜び、ユノを隣に座らせる。
エレノアは、オルカの隣に座る直前、ロイの手にメモを握らせた。
「魔法、あたしらも必要よね。使える手はいくらあってもいいし」
「同意」
「よっしゃ、今日の放課後は魔法訓練だぜ!」
エレノアを見ると、ロイを見て小さく頷く。
ロイは、パンを食べるふりをしながら、手に持ったメモを見た。
そこには『いつもの』とだけ書かれている。それだけでロイにはわかった。
◇◇◇◇◇◇
放課後、エレノアたちが魔法訓練をする前に、ロイは『見張り塔』へ。
上る時間が惜しいのか、ドアの前にエレノアがいた。
「魔界貴族、あんたがやったんでしょ?」
「まぁな。でっかいモグラだった」
「モグラ……? まぁいいや。それで、今日はどうする?」
「殿下のところ行く。明日も授業だし……まぁ、不眠不休で頑張るよ」
「そ……」
「それにしても、エレノアもユノも強くなったな。その炎聖剣、形代わってたよな」
「あんた、見てたの?」
「ああ。あの、ダンジョンの守護魔獣……俺の援護、いらなかったな」
「ま、あんたに頼りきるのもね。ふふ……見てて、もっともっと強くなるから」
『だが、油断するなよ。その聖剣の真の力は、未だに発揮されていない。あの女が作った怨念の力は、そんなものじゃないぞ』
「「……え?」」
怨念の力。
何やら、不穏な言葉だ。
「デスゲイズ、そういえばお前、聖剣を作った女神のこと知ってるんだよな」
『ああ。それと、何度か言ったが、あの女は女神ではない。まぁ、人間からすれば女神だろうがな』
「……なんか、興味あるかも」
『話せば長くなる。我輩も、一度しか会ったことがない……だが、あれほどの女は、初めてだった』
「「…………」」
『まぁいい。それよりロイ、風のダンジョンに行くのだろう?』
「あ、ああ」
「あたしも、ユイカたちのところに行くね。じゃあロイ、気を付けてね」
「ああ。な、エレノア……風のダンジョンをクリアしたら、最後のダンジョンに入るんだよな?」
「ええ。四つのダンジョンをクリアすると現れる、『魔のダンジョン』ね」
「……なんとなく、嫌な予感がする。気を付けようぜ」
「ええ」
ロイはエレノアと別れ、急いで『風のダンジョン』へ向かった。
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