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第二章 麗水の国ハルワタート

ドラグネイズ公爵にて③

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 首都ハウゼンにあるドラグネイズ公爵邸にて、当主であり『六滅竜』の筆頭であるバルトロメイは、アミュアとシャルネから受け取った『依頼書』を読み、深くため息を吐いた。

「それで、クシャスラ王国での仕事を終えハルワタート王国に向かったのは、六滅竜『水』のリーンベルによる指示であった……ということか」
「「はい」」

 アミュア、シャルネははっきり言う。
 手紙には確かに「この件は極秘だった」と書かれている。
 六滅竜筆頭であるバルトロメイだが、六滅竜という立場は同格……リーンベルが極秘で二人に命令し、二人はそれに従っただけ。
 バルトロメイはため息を吐きつつも納得し、手紙をテーブルに置いた。

「まあ、いい……お前たちがハルワタート王国に行ったと報告が入り驚いたが、『水』の元にいたとはな。そもそも……幼馴染だったか。フン、懐かしさでも感じたのか」

 バルトロメイはそれ以上言わなかった。
 そして、アミュアに聞く。

「『水』の元にいたのなら……ヤツから何か聞いておらぬか?」
「何か、とは?」

 質問の意図が不明で、アミュアは首を傾げた。
 すると、バルトロメイは忌々しそうに言う。

「『水』のヤツめ。しばし休暇を取ると手紙を寄越しおった。しかも……レヴィアタンに何を言わせたのか、『風』と『炎』のヤツに口添えを頼みおった」
「え、じゃあ……」
「『水』め、国の守護を放って観光遊びとはな……やはり、子供に六滅竜の肩書は重い」

 リーンベルの出した手紙の答えだった。
 出した三通の手紙。一つは休暇申請、そして二つは『炎』と『風』の六滅竜に……正確には、六滅竜のドラゴンにレヴィアタンが充てた手紙。
 その手紙には、「私のリーンベルがお休み取るから、あんたら賛成なさい」という内容だった。
 その手紙を見て、『炎』と『風』のドラゴンが直訴したのだ。
 こうして、リーンベルの休暇が認められ、今に至る。

(リーンベル、そこまでしてレクスと……)

 アミュアが思う。
 間違いなく……リーンベルも、レクスを想っているだろう。
 
「はあ……まあいい。問題ばかり起きる」
「問題? お父さん、じゃなくて父上……何かあったんですか?」

 バルトロメイは、シャルネを見て再びため息を吐く。

「『地』……奴め、とんでもないことをしている可能性が出てきた」

 ◇◇◇◇◇◇

 アミュアとシャルネは、屋敷にあるシャルネの部屋で、お茶とお菓子を楽しんでいた。

「あーよかった。お父さん、けっこう単純なところあるから、バレなかったみたい」
「フリードリヒ様だったら怪しまれてたかもね」
「うん。お兄様、今は遠征に行ってるからしばらく帰らないみたい」
「そっか。でも……当主様、何を怪しんでたんだろ?」
「『地』って、ヘレイア様だよね? そういえばお父さん、ヘレイア様のこと大嫌いなんだよね……」
「とんでもないことって言ってたけど」
「ん~……なんだろ? ヘレイア様って特例で、地の国アールマティに住んでるんだよね? 何か怪しいことしてるって……なんだろうね?」
「さあ? でもまあ、六滅竜だし……」
「そだね。というか、お兄ちゃんたちが向かったところだよね……」
「リーンベルもいるし、大丈夫じゃない?」

 と、二人は楽しく会話。
 そして、これからのことに話は変わる。
 シャルネはため息を吐く。

「明日から訓練だねぇ……」
「うん。こうして二人でお茶する時間も、あまりとれないかもね」
「ん……まあ、仕方ないね。あたしたち、まだまだ弱いし」
「ええ。ハルワタート王国では、けっこう動けたと思うけど」
「……ね、アミュア。あのタルウィを消し去ったドラゴンブレス……なんだかんだでみんな忘れてるけど、あれってお兄ちゃんがやったんだよね」
「……まあ、そうだよね」
「ムサシだっけ……なんなんだろ、あの子」
「……さあ」

 ムサシ。
 今更だが、不思議なドラゴンだった。
 そもそも、レクスによると属性も形態も自在に切り替えることができるという。
 バルトロメイには内緒にしてと言われたので報告はしていないが……あまりにも奇妙だった。

「ま、下手に気にすると厄介なことになりそうだし、今はいいかな」
「そうね。レクスなら、大丈夫」
「とりあえず、今はもっと強くならないとね!! あたしもアミュアも、竜滅士として弱いもん!!」
「ふふ、そうね……今は、できることをしっかりやらないと」

 二人は改めて、竜滅士として強くなる決意をする。
 レクスたちの旅の無事を祈り、ハルワタート王国での思い出を振り返りながら、二人のお茶会は遅くまで続くのだった。
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