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第二章 麗水の国ハルワタート
水棲亜人
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ミュランさんに会った翌日。
今日は港町テーゼレの観光と、明日乗る予定の遊覧船のチケットを予約しに行く。
宿屋で朝食を食べて外へ出ると、すでに町は賑わっていた。
エルサの手には、もはやおなじみとなった町のパンフレット。
「レクス。旅の買い出しって何かありますか?」
「そーだな……そういえば、クシャスラ王国を出てから野営してないし、物資は減ってないな。むしろ土産とか名産品で増えたかも」
山キクラゲも野営で使ってないし……まあ悪くなるモンじゃないしいいけど。
強いて言えば、剣を研ぎたい。
油で手入れはしてるけど、切れ味は微妙に落ちてる。
「とりあえず、武器屋に行っていいかな。剣を研いでもらいたい」
「わかりました。えーっと……じゃあ、案内しますね」
『きゅいい~』
ムサシはエルサの肩に移動し、頬にスリスリする。
「ふふ、きもちいい……甘えちゃって、かわいいなあ。わたしも獣魔が欲しいかも……モフモフした子」
「あはは。旅は長くなるし、気の合うやつがいたら仲間にしてみるか」
「それいいですね。よーし」
エルサの獣魔か。
リスとか小鳥が似合いそう。シマエナガみたいのだったら大歓迎。
それから、エルサに続いて武器屋へ。
剣が交差した看板があったので中に入り、店員さんに剣の手入れを依頼。
「では、半日ほどかかりますので。支払いは先払いになります」
「じゃ、冒険者カードで」
専用の魔道具にカードをスキャン……支払い完了。
宿屋とか土産屋で使ってるけど、電子マネーって便利。電子じゃないけど。
さて、用事も済んだし次は。
「じゃ、チケットを予約しに港へ行きましょう!!」
「おう。面白そうなモンあったら見学もするか」
こうして、俺とエルサは港町テーゼレを観光するのだった。
◇◇◇◇◇◇
最初に向かったのは港だ。
港町テーゼレのメイン。看板と言っても過言じゃない。
「おお~……すっげぇ。こんな間近で船を見たの初めてだ」
「わたしもです……」
船はとにかくデカい。
豪華客船と言えばいいのか、大中小さまざまな大きさのがある。
小さいのはボートで、大きいのは豪華客船。
異世界風豪華客船って言えばいいのかな。俺が本やテレビで観たような豪華客船とは微妙に形が違う……そもそも、バリスタみたいなのくっついてるし。
あのでかい弓、やっぱ武器として使うんだろうか。
「レクス、あのイカダでもハルワタート王国に行けるんでしょうか……」
「いや、一生知らなくていいことだと思う」
俺が豪華客船に見惚れている間、エルサは丸太を四つ並べて紐で結んだようなイカダに興味を示していた……まあ、豪華客船の隣がイカダってのはちょっと笑える。
港には、屈強な船乗りや冒険者たち、観光客でいっぱいだ。
すると、俺が見ていた豪華客船が動き出した。
そしてエルサが気付く。
「あれ? レクス、あそこにいるの……ミュランさんです!!」
「え? あ、ほんとだ」
今気づいたが、豪華客船の向こう側に水路が伸びており、そこを船が走っていた。
船にはミュランさんが乗っており、柵に寄りかかっている。
俺たちに気付くと、軽く手を振ってくれた。
手を振り返すと……船はすぐに行ってしまった。
「あれが水路船か……けっこう速いな」
「パンフレットによると、歓楽領地ササンまで半日かからないそうです。移動だけなら水路船ですね」
「なるほどなあ……お、見ろあそこ、フェリー乗り場……じゃなくて、案内所みたいだ。あそこで豪華客船のチケット買えるか聞いてみよう」
さっそく案内所へ。
カウンターには受付嬢……なんで受付嬢ってみんな美少女なんだろうか。異世界あるあるって感じだ。
「こんにちは、何か御用でしょうか?」
「えーっと、ハルワタート王国に行く遊覧船のチケットが欲しいんですけど」
「はい!! 現在ですと……明日の早朝出発で、翌日の夕方到着の便が空いてます。お部屋は……『彼方』と『永久』が一部屋ずつ空いてますが、如何なさいますか?」
「えーっと、彼方、永久ってのは?」
「お部屋のランクですね。知っていますか? 竜滅士の使役するドラゴンの等級になぞらえたランクとなっています」
嫌ってほど知ってます、とは言わない。
今気づいたが、豪華客船の千首がドラゴンの顔になっていた。
それに、部屋のランクが『彼方』と『永久』ってかなりいい部屋だ。一番安いのは『天』で次が『天空』、『彼方』と『永久』と続き『幻想』……そして、豪華客船のワンフロアを丸々使った『神話』だ。
俺はエルサに確認。
「じゃあ、『彼方』と『永久』を一部屋ずつ。彼女の方を『永久』で」
「かしこまりました。では、お支払いをお願い致します。あ、冒険者の方でしたらカードでお支払い頂くと、そのままカードが部屋のカギになるので便利ですよ!!」
「なるほど……冒険者カード、マジで便利だな」
それぞれ支払いをして、部屋の番号を確認。
当日、冒険者カードでそのまま船に乗れるそうだ。
「はい、支払い確認しました。それでは明日の早朝出航になりますので、出発の三十分前にはご乗船手続きをお願いいたします。それと……現在、ハルワタート海域はやや不安定になっていますので、不測の事態が起きる可能性もございます」
「不測の事態……?」
「はい。ですが、ハルワタート王国所属の『水麗騎士団』が常に護衛していますのでご安心ください」
「……水麗騎士?」
「あ、ご存じないですか? 水麗騎士は水棲亜人によって結成された『海中の騎士団』です。陸上では人間が、海中では水棲亜人が、それぞれ治安を守っているんですよ」
「へぇ~……水の騎士かあ」
すごいカッコいいな。
水棲亜人……どんな人たちなんだろう?
「水棲亜人について知りたいのでしたら、水中都市アルメニアか、水棲領地メルティジェミニに行くといいですよ。ハルワタート王国から行くルートがオスクール商会によって敷かれていますので」
「水の中もオスクール商会が……すげえ」
おっと、長話してしまった。
後ろで受付を待ってる人もいるし、受付さんにお礼を言ってその場を離れる。
近くにベンチがあったので座り、俺たちは確認する。
「とりあえず、明日の早朝か」
「今日は早く寝ないといけませんね。あ、こういうこともあるなら、目覚ましの魔道具を買ったほうがいいかもしれませんね。道具屋さんに行きませんか?」
「行く行く。と……なあエルサ、水棲亜人ってどんな人たちなんだろうな」
「わたしが知ってるのは、水中で呼吸ができるのと、水棲亜人さんたちにもいろんな種類がいるってことぐらいです。それと……水棲亜人さんたちは、わたし以上の水魔法の使い手みたいです」
「そ、そうなのか?」
「はい。授業で習いましたけど、水棲亜人さんたちは『海魔法』っていう独自の魔法を使うみたいです」
なんかすごそうだ。
二人で話をしながら海を眺めていた時だった。
「──っぷは」
突如、上半身裸の男性が海から上がってきた。
さすがに仰天した。そりゃ港だし目の前が海だけど……まさか、水中からジャンプして男の人が現れるなんて思わなかったわ。
しかもその人、人間じゃない。
青白い肌、肘までサメ肌のような鱗に包まれ、耳が魚の『ヒレ』みたいな形をしている。
髪は水色で、なんと下半身は『タコ』の足。
唖然としていると、もう一人海から飛び上がってきた。
もう一人は人間っぽい身体をしているが、顔が完全に『魚』の顔だった。
「っぷは。あーしんど、このエラ呼吸から肺呼吸に切り替えんのだるいよな」
「仕方ねえよ。さ、仕事終わったし飲みに行くか」
「おう、今日は何呑む?」
談笑しながら去って行った……え、今のがまさか。
「今のが、水棲亜人さん……ですよね」
「あ、ああ。びっくりした……あ、よく見ると看板ある。『水棲亜人出入口』だって」
どうやら、水棲亜人の出入口のようだ……あーびっくりした。
「と、とりあえず道具屋行くか」
「は、はい」
いやはや、異世界ってまだまだ広い……だからこそ面白いわ。
今日は港町テーゼレの観光と、明日乗る予定の遊覧船のチケットを予約しに行く。
宿屋で朝食を食べて外へ出ると、すでに町は賑わっていた。
エルサの手には、もはやおなじみとなった町のパンフレット。
「レクス。旅の買い出しって何かありますか?」
「そーだな……そういえば、クシャスラ王国を出てから野営してないし、物資は減ってないな。むしろ土産とか名産品で増えたかも」
山キクラゲも野営で使ってないし……まあ悪くなるモンじゃないしいいけど。
強いて言えば、剣を研ぎたい。
油で手入れはしてるけど、切れ味は微妙に落ちてる。
「とりあえず、武器屋に行っていいかな。剣を研いでもらいたい」
「わかりました。えーっと……じゃあ、案内しますね」
『きゅいい~』
ムサシはエルサの肩に移動し、頬にスリスリする。
「ふふ、きもちいい……甘えちゃって、かわいいなあ。わたしも獣魔が欲しいかも……モフモフした子」
「あはは。旅は長くなるし、気の合うやつがいたら仲間にしてみるか」
「それいいですね。よーし」
エルサの獣魔か。
リスとか小鳥が似合いそう。シマエナガみたいのだったら大歓迎。
それから、エルサに続いて武器屋へ。
剣が交差した看板があったので中に入り、店員さんに剣の手入れを依頼。
「では、半日ほどかかりますので。支払いは先払いになります」
「じゃ、冒険者カードで」
専用の魔道具にカードをスキャン……支払い完了。
宿屋とか土産屋で使ってるけど、電子マネーって便利。電子じゃないけど。
さて、用事も済んだし次は。
「じゃ、チケットを予約しに港へ行きましょう!!」
「おう。面白そうなモンあったら見学もするか」
こうして、俺とエルサは港町テーゼレを観光するのだった。
◇◇◇◇◇◇
最初に向かったのは港だ。
港町テーゼレのメイン。看板と言っても過言じゃない。
「おお~……すっげぇ。こんな間近で船を見たの初めてだ」
「わたしもです……」
船はとにかくデカい。
豪華客船と言えばいいのか、大中小さまざまな大きさのがある。
小さいのはボートで、大きいのは豪華客船。
異世界風豪華客船って言えばいいのかな。俺が本やテレビで観たような豪華客船とは微妙に形が違う……そもそも、バリスタみたいなのくっついてるし。
あのでかい弓、やっぱ武器として使うんだろうか。
「レクス、あのイカダでもハルワタート王国に行けるんでしょうか……」
「いや、一生知らなくていいことだと思う」
俺が豪華客船に見惚れている間、エルサは丸太を四つ並べて紐で結んだようなイカダに興味を示していた……まあ、豪華客船の隣がイカダってのはちょっと笑える。
港には、屈強な船乗りや冒険者たち、観光客でいっぱいだ。
すると、俺が見ていた豪華客船が動き出した。
そしてエルサが気付く。
「あれ? レクス、あそこにいるの……ミュランさんです!!」
「え? あ、ほんとだ」
今気づいたが、豪華客船の向こう側に水路が伸びており、そこを船が走っていた。
船にはミュランさんが乗っており、柵に寄りかかっている。
俺たちに気付くと、軽く手を振ってくれた。
手を振り返すと……船はすぐに行ってしまった。
「あれが水路船か……けっこう速いな」
「パンフレットによると、歓楽領地ササンまで半日かからないそうです。移動だけなら水路船ですね」
「なるほどなあ……お、見ろあそこ、フェリー乗り場……じゃなくて、案内所みたいだ。あそこで豪華客船のチケット買えるか聞いてみよう」
さっそく案内所へ。
カウンターには受付嬢……なんで受付嬢ってみんな美少女なんだろうか。異世界あるあるって感じだ。
「こんにちは、何か御用でしょうか?」
「えーっと、ハルワタート王国に行く遊覧船のチケットが欲しいんですけど」
「はい!! 現在ですと……明日の早朝出発で、翌日の夕方到着の便が空いてます。お部屋は……『彼方』と『永久』が一部屋ずつ空いてますが、如何なさいますか?」
「えーっと、彼方、永久ってのは?」
「お部屋のランクですね。知っていますか? 竜滅士の使役するドラゴンの等級になぞらえたランクとなっています」
嫌ってほど知ってます、とは言わない。
今気づいたが、豪華客船の千首がドラゴンの顔になっていた。
それに、部屋のランクが『彼方』と『永久』ってかなりいい部屋だ。一番安いのは『天』で次が『天空』、『彼方』と『永久』と続き『幻想』……そして、豪華客船のワンフロアを丸々使った『神話』だ。
俺はエルサに確認。
「じゃあ、『彼方』と『永久』を一部屋ずつ。彼女の方を『永久』で」
「かしこまりました。では、お支払いをお願い致します。あ、冒険者の方でしたらカードでお支払い頂くと、そのままカードが部屋のカギになるので便利ですよ!!」
「なるほど……冒険者カード、マジで便利だな」
それぞれ支払いをして、部屋の番号を確認。
当日、冒険者カードでそのまま船に乗れるそうだ。
「はい、支払い確認しました。それでは明日の早朝出航になりますので、出発の三十分前にはご乗船手続きをお願いいたします。それと……現在、ハルワタート海域はやや不安定になっていますので、不測の事態が起きる可能性もございます」
「不測の事態……?」
「はい。ですが、ハルワタート王国所属の『水麗騎士団』が常に護衛していますのでご安心ください」
「……水麗騎士?」
「あ、ご存じないですか? 水麗騎士は水棲亜人によって結成された『海中の騎士団』です。陸上では人間が、海中では水棲亜人が、それぞれ治安を守っているんですよ」
「へぇ~……水の騎士かあ」
すごいカッコいいな。
水棲亜人……どんな人たちなんだろう?
「水棲亜人について知りたいのでしたら、水中都市アルメニアか、水棲領地メルティジェミニに行くといいですよ。ハルワタート王国から行くルートがオスクール商会によって敷かれていますので」
「水の中もオスクール商会が……すげえ」
おっと、長話してしまった。
後ろで受付を待ってる人もいるし、受付さんにお礼を言ってその場を離れる。
近くにベンチがあったので座り、俺たちは確認する。
「とりあえず、明日の早朝か」
「今日は早く寝ないといけませんね。あ、こういうこともあるなら、目覚ましの魔道具を買ったほうがいいかもしれませんね。道具屋さんに行きませんか?」
「行く行く。と……なあエルサ、水棲亜人ってどんな人たちなんだろうな」
「わたしが知ってるのは、水中で呼吸ができるのと、水棲亜人さんたちにもいろんな種類がいるってことぐらいです。それと……水棲亜人さんたちは、わたし以上の水魔法の使い手みたいです」
「そ、そうなのか?」
「はい。授業で習いましたけど、水棲亜人さんたちは『海魔法』っていう独自の魔法を使うみたいです」
なんかすごそうだ。
二人で話をしながら海を眺めていた時だった。
「──っぷは」
突如、上半身裸の男性が海から上がってきた。
さすがに仰天した。そりゃ港だし目の前が海だけど……まさか、水中からジャンプして男の人が現れるなんて思わなかったわ。
しかもその人、人間じゃない。
青白い肌、肘までサメ肌のような鱗に包まれ、耳が魚の『ヒレ』みたいな形をしている。
髪は水色で、なんと下半身は『タコ』の足。
唖然としていると、もう一人海から飛び上がってきた。
もう一人は人間っぽい身体をしているが、顔が完全に『魚』の顔だった。
「っぷは。あーしんど、このエラ呼吸から肺呼吸に切り替えんのだるいよな」
「仕方ねえよ。さ、仕事終わったし飲みに行くか」
「おう、今日は何呑む?」
談笑しながら去って行った……え、今のがまさか。
「今のが、水棲亜人さん……ですよね」
「あ、ああ。びっくりした……あ、よく見ると看板ある。『水棲亜人出入口』だって」
どうやら、水棲亜人の出入口のようだ……あーびっくりした。
「と、とりあえず道具屋行くか」
「は、はい」
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