26 / 39
学園長
しおりを挟む
ジェノバ王立学園の学園長。
齢七十を超えた老人だが、その眼力と活力は二十代としか思えないほど若々しい。生徒からはもちろん、教師からも好かれている人格者だ。
名前は、デミウルゴス。
閃光騎士団第二十八代目【王冠】であり、ジェノバ王国を閃光騎士団の拠点、そして王国にしようとしている。
学園長に戻ったデミウルゴスは、柔らかな肘掛け椅子に座り、写真を取り出す。
「もうすぐだ……【王国】よ」
そこに写っていた女性は、デミウルゴスに笑いかけているようだった。
だが、デミウルゴスは辛そうに顔を歪める。
「騎士団の真なる故郷。このジェノバ王国が手に入るのは時間の問題。【王国】よ……どれだけ血が流れようとも、私はやるぞ」
写真を懐にしまい、デミウルゴスは目を閉じる。
写真の女性はデミウルゴスの妻。閃光騎士団『十傑』の【王国】だ。今はもう永久欠番となっており、十傑は九人しかいない。
デミウルゴスは、何を想い何を考えているのか。
◇◇◇◇◇◇
クリード、レオンハルト、ルーシアの三人は、地下秘密部屋に集まっていた。
ここに集まれる時間は十分。クリードはさっさと話をする。
「学園祭……面倒だが、仕方ない。お前たち、いつも以上に気を配れよ」
「わかってるさ。オレは演劇のこともあるし、ラスピルには常についている」
「あたしも。それより、当日だけど……」
ルーシアの懸念。それは、やはり閃光騎士団の介入だろうか。
だが、クリードは言う。
「いつも通りだ。とにかく、第三王女ラスピルの周囲に気を配れ。生徒会役員が近づくようなら警戒しろ」
「言うと思った……やっぱり。生徒会が《十傑》ってのは?」
「真実だろうな。だが、あちらはまだ俺たちの正体まで掴めていないだろう。掴めていたとしても、三十~四十名のうちにアサシンが数人いる、くらいのはず」
「つまり、オレらのクラスに何人かアサシンがいる、ってくらいか」
「ああ。残りの十傑を始末して、最後に第一王女リステルを事故死させる。そうすれば第三王女ラスピルが次期女王だ」
「……ねぇ、第二王女は安心なの?」
「……恐らくな」
クリードは、やや確信に欠けたが《安心》だと言った。
第二王女ラミエル。もしかしたら、リステル暗殺後に動くかもしれない。第二王女はレオンハルトとクリードの存在を知られている。
念のため、ルーシアの存在は隠しておいた。いざという時の切り札だ。
「第二王女は保留。まずは、第三王女ラスピルの護衛と生徒会への警戒を。それと、自然な学生としてふるまえるように、学園祭の準備も気を抜くな」
「それ、そのまま返すわ」
「うんうん。オレら、クリードよりしっかりと学生やってるしな」
「…………」
クリードは、なぜか言い返せなかった。
齢七十を超えた老人だが、その眼力と活力は二十代としか思えないほど若々しい。生徒からはもちろん、教師からも好かれている人格者だ。
名前は、デミウルゴス。
閃光騎士団第二十八代目【王冠】であり、ジェノバ王国を閃光騎士団の拠点、そして王国にしようとしている。
学園長に戻ったデミウルゴスは、柔らかな肘掛け椅子に座り、写真を取り出す。
「もうすぐだ……【王国】よ」
そこに写っていた女性は、デミウルゴスに笑いかけているようだった。
だが、デミウルゴスは辛そうに顔を歪める。
「騎士団の真なる故郷。このジェノバ王国が手に入るのは時間の問題。【王国】よ……どれだけ血が流れようとも、私はやるぞ」
写真を懐にしまい、デミウルゴスは目を閉じる。
写真の女性はデミウルゴスの妻。閃光騎士団『十傑』の【王国】だ。今はもう永久欠番となっており、十傑は九人しかいない。
デミウルゴスは、何を想い何を考えているのか。
◇◇◇◇◇◇
クリード、レオンハルト、ルーシアの三人は、地下秘密部屋に集まっていた。
ここに集まれる時間は十分。クリードはさっさと話をする。
「学園祭……面倒だが、仕方ない。お前たち、いつも以上に気を配れよ」
「わかってるさ。オレは演劇のこともあるし、ラスピルには常についている」
「あたしも。それより、当日だけど……」
ルーシアの懸念。それは、やはり閃光騎士団の介入だろうか。
だが、クリードは言う。
「いつも通りだ。とにかく、第三王女ラスピルの周囲に気を配れ。生徒会役員が近づくようなら警戒しろ」
「言うと思った……やっぱり。生徒会が《十傑》ってのは?」
「真実だろうな。だが、あちらはまだ俺たちの正体まで掴めていないだろう。掴めていたとしても、三十~四十名のうちにアサシンが数人いる、くらいのはず」
「つまり、オレらのクラスに何人かアサシンがいる、ってくらいか」
「ああ。残りの十傑を始末して、最後に第一王女リステルを事故死させる。そうすれば第三王女ラスピルが次期女王だ」
「……ねぇ、第二王女は安心なの?」
「……恐らくな」
クリードは、やや確信に欠けたが《安心》だと言った。
第二王女ラミエル。もしかしたら、リステル暗殺後に動くかもしれない。第二王女はレオンハルトとクリードの存在を知られている。
念のため、ルーシアの存在は隠しておいた。いざという時の切り札だ。
「第二王女は保留。まずは、第三王女ラスピルの護衛と生徒会への警戒を。それと、自然な学生としてふるまえるように、学園祭の準備も気を抜くな」
「それ、そのまま返すわ」
「うんうん。オレら、クリードよりしっかりと学生やってるしな」
「…………」
クリードは、なぜか言い返せなかった。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる