はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう

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友達のために

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 学園は、数日間休みになった。
 ショッピングモールは通常営業、大聖堂は封鎖、学園内はガラティン王国の調査隊がスキルの痕跡などを調査していた。
 エルクたちは、学園から出された課題に手を付けていた。
 全員でリビングに集まり、ソフィアに聞きながら問題を解く。
 全員、真面目に問題を解いているが……エマだけ、やけに暗かった。

「はぁ……」
「もー、エマってばまだ気にしてるの?」
「うぅ……だって」

 フィーネがエマの肩をポンポン叩く。
 エマは、全員が戦っているのに一人だけ寝坊……部屋で爆睡し、起きたら全て終わっていたことに罪悪感と羞恥心を抱いていた。エルクたちからすれば、罪悪感など感じる必要がない。巻き込まれなくてよかったはずなのだが、エマからすると恥ずかしいらしい。
 
「発表会の準備をしてたんですけど」
「あ、その発表会だけどさ……オレの勘だけど、開催見送りとかになるかもな」
「え……?」

 エマは、思わずニッケスを見る。
 ニッケスはペンをクルクル回しながら解説した。

「だってよ、入学して間もないのに、女神聖教が二回も学園を襲撃してきたんだぜ? しかも、二回とも襲撃を防げなかったし、生徒の多くは誘拐されちまった。学園の警備強化は当然だけど……学園をダンジョン化するようなバケモノスキルを持つ連中相手に、どこまでできるか」
「…………」

 エマは黙ってしまう。
 エルクも同じ意見だった。チートスキルというピピーナが直接作り与えたスキル相手に、まともに立ち回れるとは思わない。
 せめて、ラピュセルだけでも討ち取っておけばよかった。エルクはそう思い、念動力でペンを高速回転させる。
 
「はぁ~……オレも発表会用の『計算機』を作ってたんだけど、無駄になっちまうのかなぁ」
「計算機? んだそりゃ」
「あ、やべ。ま、ガンボに言っても理解できないと思うぜ」
「あぁ!?」

 ガンボがニッケスを睨むが、ニッケスはケラケラ笑う……この二人の関係性も、だいぶ砕けてきた。
 すると、メリーがコホンと咳をする。

「静かに勉強できないのですか? それと兄さん、そこまで言ったならきちんと説明してください」
「えー?……わかったよ。オレが作ってんのは、二桁の計算を瞬時に出せる計算器具だよ。数字と数字を合わせると、その数字を合わせた数が出てくる仕組みなんだ。オレらみたいに学園通ってる連中には必要ないだろうけど、町の小さな店とか、平民の商店では役に立つかなーって」
「おおー……ニッケス、思ったより真面目じゃん」
「うるせえぞエルク。ま、そういうこった。無駄になるかもしれないけどな」

 エマもニッケスも、ずいぶんと発表会を楽しみにしている。
 なんとかできないか、エルクは悩む。だが、いち生徒であるエルクにできることなど、そうはない。
 すると、用事で空けていたソフィアが戻ってきた。

「皆さんに、お知らせがあります」

 全員、ペンを動かす手を止めてソフィアを見る。

「商業科の新入生による『発表会』ですが……予定通り、行われることになりました」
「マジで!? よっしゃぁ!!」
「やったぁ!!」

 ニッケスとエマが喜んだ。ソフィアも笑みを浮かべている。
 すると、ヤトが厳しく言う。

「でも……警備は? また狙われるんじゃない?」
「大丈夫です。ガラティン王国騎士団と、学園の三年生、上級冒険者、そしてポセイドン校長自ら警備に当たります」

 ガラティン王国騎士団。
 ガラティン王国最強の精鋭たち。ある分野に特化した『五星』と違い、純粋な戦闘に特化した精鋭たち。かつて、いくつもの危険組織を屠ってきた、王国最強戦闘集団である。
 そして、学園の三年生。
 騎士団ほどではないが、冒険者に混じり何度も実戦を経験している。
 そして、ソフィアはエルクを見た。

「そして、エルクくん」
「はい?」
「学園からの要請です。あなたには、発表会の間、警備部隊総隊長となっていただきます」
「は?」

 理解できなかった。
 警備部隊、総隊長。
 警備部隊のトップ。
 つまり、今言ったガラティン王国騎士団と、学園の三年生、上級冒険者を束ねる存在。
 エルクだけではない。全員がぽかんとしていた。

「ソフィア先生、冗談うまいっすね」
「ニッケスくん。私は至って真面目ですよ」
「はいはーい!! ソフィア先生は? 先生、滅茶苦茶強いじゃん!!」
「フィーネさん、私は監督教師ですので」

 ソフィアがサリッサや使徒たちを蹴散らしたことは、ガンボやフィーネが武勇伝のように語ったので全員が知っている。だがソフィアは興味がないのか淡々としていた。
 エルクは、こほんと咳払い。

「あの……マジなんですか?」
「はい。ポセイドン校長の推薦です……当然、反発はありました。なので、エルクくんの実力を確かめるため、騎士団、上級生、冒険者たちを招集して、実力を確かめるそうです」
「……俺の意志は?」
「ありません。それに……」

 ソフィアは、ニッケスとエマを見た。
 つられてエルクも見る。

「ご友人の活躍する舞台を守りたい気持ちがあるなら、お受けするべきだと私は思いますよ」
「…………」

 二人は、エルクの個人戦やチーム戦を必死に応援してくれた。
 確かに……二人が悲しむ顔は、見たくない。
 それに、女神聖教は二度も学園を襲った。三度目がないとも言い切れない。
 万全の状態で迎える。そして、神官が現れるなら今度こそ倒す。

「わかりました。お受けします」
「ありがとうございます。では、私から校長に伝えておきますね」
「はい」

 エルクは頷き、拳をパシッと打ち付けた。

 ◇◇◇◇◇

 それから数日後、ようやく学園が再開された。
 洗脳がかけられた生徒たちの回復処置が終わり、大聖堂や学園内の修復工事も終わった。
 ダンジョン内で死亡した生徒たちも生き返り、ようやく日常が戻ってきた。
 だが、二度目の誘拐で学園内にはガラティン王国騎士と冒険者が常駐するようになった。
 エルクは、Aクラス教室でガンボと話す。

「なんかさ、やっと学園が再開したのに重苦しいよな」
「そりゃ、二度も事件が起きたからな。オレとしては、王国騎士やベテラン冒険者を間近で見れて嬉しいぜ……にしても、お前が警備部隊の総隊長ねぇ」
「言うなよ……」
「ま、お前のバケモノみてーな力なら納得だ」
「なんだよバケモノって。あ、お前お昼は?」
「学食」
「さっきニッケスに聞いたけどさ、学食めちゃ混むってさ。今言った王国騎士だの冒険者だのも利用するから」
「マジか。ま、仕方ねぇな」

 ちらりと教室の後ろを見ると、王国騎士の女性が周囲を警戒していた。
 気配を殺し教室の風景と一体化しつつ、常に警戒をする。
 白を基調とした騎士服に、ガラティン王国の紋章が刻まれたマントを羽織っている。女性用の騎士服はスカートなのが意外だった。
 エルクが見ると、女性騎士はなぜか不満げにエルクを見た。

「へ、お前嫌われてんのか?」
「いや、心当たりないぞ」
「あるだろ。例えば……総隊長の件とか」
「うへぇ……」

 がっくり項垂れると、担任教師のシャカリキが入ってきた。
 生徒たちは自分の席に座り、シャカリキはニコニコしながら手をポンポン叩く。

「はいはい。久しぶりの授業に胸が躍りますねぇ……ククク。いやはや、今年の新入生は大変だ。二度の誘拐事件なんて、そうそう経験できることじゃない。クックック」

 朝からなんとも嫌な話だった。
 シャカリキはニコニコがニヤニヤに代わり、エルクを見る。

「エルクくん。二時間目から四時間目まで、きみは闘技場へ。理由は言わなくてもわかるね?」
「…………」
「フフフフフ。大勢の人たちが待ってますよ~? クックック」

 エルクは、機会があればシャカリキをブン殴りたい。そう思った。

 ◇◇◇◇◇

 戦闘服を着て闘技場へ。
 言われた通り、一時間目の授業が終わるとエルクは戦闘服に着替えて闘技場へ。ちなみに、戦闘服はラピュセルとの戦闘を終えた後、エマが修理をしてくれた。
 ブレードはニッケスが分解掃除した。手先が器用でガラクタ弄りが趣味のニッケスは、だいぶ使い込んだブレードを見てニヤニヤしていたとメリーが気持ち悪そうに言った。
 マスクとフードはまだ付けない。
 エルクは、やや重い足取りで闘技場内へ。

「来たか!!」
「ほっほっほ。エルクくん、腹減っとらんか? 飴ちゃん舐めるか?」

 体育教師のジャコブ、校長のポセイドンだ。
 ジャコブは何故か木刀片手に、ポセイドンはジャラジャラした装飾の付いた杖を持ち、エルクに飴玉を差し出してくる。
 他に、闘技場の観客席に騎士や冒険者、三年生たちがいる。
 すると、エルクの前に立つ三人の男女。

「きみがエルクくん? ふんふん……可愛いわねぇ?」
「え、えっと……」

 胸元が大きく開いたドレス、ウェーブがかったロングヘアにバラの髪飾り。浅黒い肌に化粧をし、唇には紅が差してある。くねくねと身体を揺らし、手には黄金の煙管。
 だが……きっちり整った髭、筋骨隆々の身体……どう見ても男性だった。
 そう、女性の格好をした筋骨隆々の男性がエルクの前に立っていた。
 初めて見る人種に、言葉が出ない。

「カリオストロ。エルクくんはきみの美しさに声が出ないようじゃな」
「あらやっだぁ!! もう、ポッちゃんってば恥ずかしいわぁ~♪ 今度店に来たらサービスしちゃう!!」
「うっひょい!! 楽しみにぶへぁ!?」

 ポセイドンの頭をエルシがぶっ叩く。
 エルシは咳払いをして、エルクに紹介した。

「こちら、ガラティン王国冒険者組合長、カリオストロ様です」
「はぁ~い♪ よろしくね、エルクちゃん」

 野太い声で腰を振りながらエルクに投げキッスをするカリオストロ。
 エルクは曖昧に会釈。そして、もう一人の男性へ。

「ふむ……細いな。だが、なかなかに鍛えられている」
「は、はい」

 こちらは、頑丈そうな鎧を着た五十代ほどの男性だった。
 なんとなく、見た目だけでわかった。

「こちらは、ガラティン王国騎士団総隊長、デミウルゴス様です」
「よろしくな、少年」

 デミウルゴスは力強く微笑む。
 そして、デミウルゴスを押しのけ女生徒が。

「お父さん、暑苦しい笑い方しないでって言ってるでしょ?」
「え、エミリア。暑苦しいとは何だ暑苦しいとは」

 長い赤髪の少女だった。
 三年生最強の生徒、『紅蓮の翼』エミリア。
 王国騎士団長の父デミウルゴスを押しのけ、エルクに握手を求める。
 
「エミリアよ。よろしくね、エルクくん」
「は、はい」

 握手をすると、エミリアはにっこり笑って言う。

「さっそくだけど───……私たちね、全員が納得していないの」
「……!」

 カリオストロ、デミウルゴス、エミリア。
 冒険者、騎士団、上級生のトップは笑っていた。
 笑って、エルクを認めていないと目が言っていた。
 エルクは手を離す。
 エルクが何かを言う前に、ポセイドンが割って入る。

「そういうことで、エルクくんの強さを知ってもらいたい。くっくっく、エルクくんは強いぞ~? エルクくんの相手は、相応しい者を用意した!! お~い、出番じゃぞ~!!」

 ポセイドンが叫ぶと───……闘技場の上空から、何かが落ちてきた。
 闘技場舞台の中心に何かが着地する。

「おうジジィ。ひっさしぶりに呼ばれたと思ったら、ガキの子守ってなんだぁ!?」
「悪い悪い。スカー、ちょっとだけちょっとだけ」
「チッ……まぁいい。で、オレのメシはどこだ?」
「その、戦う相手を『メシ』っていうクセ、なんとかせんか?」
「うっせぇ!!」

 満身創痍。そんな言葉が似合う男だった。
 上半身裸で、首にはゴツイ首輪が付いている。そして右腕が肩からねじ切られたように消失し、顔半分から頭にかけて巨大な傷が走っていた。
 カリオストロとデミウルゴスは目を見開き、エミリアは驚いたように言う。

「ご、『五星』最強の戦士───……『不死身ノスフェラトゥ』のスカー……」
「そういうことじゃ。彼なら相応しい相手じゃろ? ささ、エルクくん」
「わかりました。この人と戦えばいいんですね」
「なっ……」

 エルクは迷いなく舞台へ。
 スカーは、3メートル近い身長があり、エルクの倍ほど大きい。

「ちっこいなぁ……食いでがないぜ」
「よろしくお願いします」

 エルクは一礼し、眼帯マスクとフードを被る。
 両腕を静かに広げ、スカーを睨んだ。

「……訂正だ。くはは、ご馳走じゃねぇか」
「エルクくん、スカー、用意はいいかの?……じゃあ、始め」

 『死烏スケアクロウ』と『不死身ノスフェラトゥ』の戦いが始まった。
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