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A級冒険者
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新クラスになった夜。
エルクたちはマーマの作った絶品夕食を終え、談話室でお茶を飲んでいた。
冷たいオレンジジュースを飲みながらエルクは言う。
「まさか、エルウッド殿下と同じチームになるとはなぁ。なんか俺に責任感じてるみたいだし、ボコボコに叩きのめしたこと忘れてるのか、すごい笑顔で接してくるし……やりにくい」
ニッケスは「ははは」と笑い、ガンボを見た。
「な、お前のチームは?」
「フィーネと一緒だ」
「そうそう! ガンボとアタシ、あと初対面の子三人のチーム! ヤトは?」
「メリーと……知らない子たち三人。みんな大したことないわね」
それだけ言うとヤトは立ち上がり部屋へ戻った。
同席していたソフィアが言う。
「明日は上級冒険者が来ます。みんな、ダンジョンのベテランばかりですので、お話を聞くだけでも勉強になると思いますよ」
「いいなー……オレらは相変わらず座学だぜ。商業科のイベントはまだまだ先だし、しばらくはお前らの話題で盛り上がらせてもらうわ」
ニッケスは肩をすくめた。
エルクはジュースを飲み干すと、ちょうどエマが階段から下りてきた。
「あ、エルクさん。よかったぁ……あの、これ」
「これは……」
エマが持っていたのは、見覚えのある箱。
それをエルクに差し出し、満足そうに微笑んだ。
「改良した戦闘服、できました」
「お、おお……」
「ニッケスさんが取り寄せた新装備も取り付けましたので」
「へへっ」
「兄さん、実家に連絡してたの、エルクさんのためだったんですね……」
メリーが呆れていた。
エルクは何となくニッケスをジト目で見るが、エマがワクワクしていたのに気付く。
すると、ソフィアが何かを察した。
「エルクくん。着てみたらどうですか?」
「え、今ですか?」
そう言うと、エマがキラキラした目で見てくる。
もう断れない。
エルクは曖昧に笑い、男子浴場にある脱衣所へ。
箱を開けて戦闘服を確認すると、少しデザインが変わっていた。
黒いコート、ズボン、ブーツ、手袋にも刺繍が入っており、服の素材も柔軟かつ頑丈な素材に変わっている。眼帯付きマスクのデザインも変わっていた。右目を黒いレンズで覆い、左目だけが露出している。さらに、マスク部分が呼吸しやすいように防塵マスクのようになっている。眼帯マスクを付けると、皮膚が露出しているのは左目部分、顔の四分の一だけになる。
ズボン、コート、眼帯マスク、ロングブーツを履き、気付いた。
「これ、籠手か? なるほど。コートと一体化させるんじゃなくて、籠手そのものにブレードを取り付けたのか……」
籠手を両手にはめて手首を反らすと、隠し武器であるブレードが手首の下から飛び出した。
さらに今回は、籠手の上部にもギミックがある。
手首を下に反らすと、カシャンと音を立てチタン製クローが展開。なんと短弓へ変わる。
そして、たった今気付いたが、コートの内側に短矢が収められていた。
「マジで暗器だな……エマ、俺を暗殺者にしたいのか?」
短弓があるのは右手だけで、左手にはチタンパネルが取り付けられている。この左手は防御に使えそうだ。もちろん、エルクにはあまり必要ないが。
装備を確認し、脱衣所から出た。
「どうかな……」
「すっごく似合っています!!」
「……マジで暗殺者だな」
「……マスク、こわいね」
「…………」
「…………」
エマが興奮し、ニッケスが苦笑し、フィーネは正直な感想を述べ、ガンボとメリーは無言。
「か……かっこいい」
と、ソフィアがぽつりとつぶやいた。
エマがすかさず反応し、ソフィアに詰め寄る。
「ですよね!! ソフィア先生、かっこいいですよね!!」
「ええ!! これ、ヤマト国のアサシンね? 文献で読んだことあるわ!!」
「はい!! ヤトさんから借りた資料に載ってまして、わたしなりにアレンジしてみたんです!! 両手のブレード、短弓はニッケスさんが手配してくれまして」
「ふむふむ。ね、いろいろ質問していいかしら?」
「もちろんです!!」
「あの……俺、脱いじゃダメか?」
「「駄目です!!」」
エルクは興奮するエマとソフィアに、深夜まで付き合わされた。
◇◇◇◇◇
翌日。
やや寝不足のエルクは、戦闘服を着て第七訓練場へやってきた。
今日の授業は「ダンジョン実習の講義」で、上級冒険者を呼んでチームごとに講義する。
教室で講義をするチームもあれば、エルクたちのように訓練場で講義するチームもある。
訓練場は貸し切りのようだ。
エルクたちのチームは、すでに揃っている。
エルウッドは、腰に双剣を装備し、腕組みをしている。
「そろそろ、講師の冒険者が来る……エルク、眠いのか?」
「ちょっとな……」
興奮するエマとソフィアが戦闘服について熱く語っていたなど言えない。
エルクは適当に返事をして、チームメイトを見た。
「……ふん!」
まず、ジャネット。
ジャネットは、エルウッドが好きなようだ。なので、個人戦でエルウッドをボコボコにしたエルクが嫌いなようで、ずいぶんとわかりやすい。
ウェーブのかかった栗色のロングヘアにリボンを結び、貴族令嬢のドレスのような戦闘服、腰には矢筒、背中には折りたたんだ弓を背負っていた。
「ふぁぁぁ……ん」
二人目、ソアラ。
水色のショートヘアを揺らし……正確には、頭が左右に揺れている。
眠いのだろうか。だぼだぼのパジャマみたいな戦闘服に、こちらもフードをかぶっている。武器らしい武器は何も持っていない。
「…………」
そして、カヤ。
刃の長い槍? とエルクは考えたが、正確には『薙刀』という武器を背負っている。ヤマト国出身だからなのか、ヤトと似たような戦闘服を着て腕組みしている。
カヤは、エルクをチラリと見て言う。
「暗殺者の衣装……あなた、アサシンなの?」
「だから俺は暗殺者じゃないっての……はぁ」
エルク=暗殺者、どうもそんな風にクラスから見られ始めている。
肩を落としていると、こちらに向かって来る男性がいた。
「お、きみらがチームブラックか」
「えっと……あなたは?」
エルウッドが上品に聞くと、男性は言う。
「オレはボブ。チームブラックを任された、A級冒険者だ。よろしくな」
「……チーム、ブラック?」
「ああ、黒い棒を引いたチームだろ? 便宜上、そういうチーム名にしてるらしいぜ」
「なるほど」
エルウッドが納得する。
ボブと名乗った冒険者。
肌が黒く、髪の毛はドレッドヘア、タンクトップにジャケットを着て、背には斧を背負っていた。
人懐っこそうな笑みを浮かべ、エルクたちに挨拶する。
「改めて、オレはボブ。お前らの指導をするA級冒険者だ。よろしくな」
こうして、本格的に『ダンジョン実習』が始まった。
エルクたちはマーマの作った絶品夕食を終え、談話室でお茶を飲んでいた。
冷たいオレンジジュースを飲みながらエルクは言う。
「まさか、エルウッド殿下と同じチームになるとはなぁ。なんか俺に責任感じてるみたいだし、ボコボコに叩きのめしたこと忘れてるのか、すごい笑顔で接してくるし……やりにくい」
ニッケスは「ははは」と笑い、ガンボを見た。
「な、お前のチームは?」
「フィーネと一緒だ」
「そうそう! ガンボとアタシ、あと初対面の子三人のチーム! ヤトは?」
「メリーと……知らない子たち三人。みんな大したことないわね」
それだけ言うとヤトは立ち上がり部屋へ戻った。
同席していたソフィアが言う。
「明日は上級冒険者が来ます。みんな、ダンジョンのベテランばかりですので、お話を聞くだけでも勉強になると思いますよ」
「いいなー……オレらは相変わらず座学だぜ。商業科のイベントはまだまだ先だし、しばらくはお前らの話題で盛り上がらせてもらうわ」
ニッケスは肩をすくめた。
エルクはジュースを飲み干すと、ちょうどエマが階段から下りてきた。
「あ、エルクさん。よかったぁ……あの、これ」
「これは……」
エマが持っていたのは、見覚えのある箱。
それをエルクに差し出し、満足そうに微笑んだ。
「改良した戦闘服、できました」
「お、おお……」
「ニッケスさんが取り寄せた新装備も取り付けましたので」
「へへっ」
「兄さん、実家に連絡してたの、エルクさんのためだったんですね……」
メリーが呆れていた。
エルクは何となくニッケスをジト目で見るが、エマがワクワクしていたのに気付く。
すると、ソフィアが何かを察した。
「エルクくん。着てみたらどうですか?」
「え、今ですか?」
そう言うと、エマがキラキラした目で見てくる。
もう断れない。
エルクは曖昧に笑い、男子浴場にある脱衣所へ。
箱を開けて戦闘服を確認すると、少しデザインが変わっていた。
黒いコート、ズボン、ブーツ、手袋にも刺繍が入っており、服の素材も柔軟かつ頑丈な素材に変わっている。眼帯付きマスクのデザインも変わっていた。右目を黒いレンズで覆い、左目だけが露出している。さらに、マスク部分が呼吸しやすいように防塵マスクのようになっている。眼帯マスクを付けると、皮膚が露出しているのは左目部分、顔の四分の一だけになる。
ズボン、コート、眼帯マスク、ロングブーツを履き、気付いた。
「これ、籠手か? なるほど。コートと一体化させるんじゃなくて、籠手そのものにブレードを取り付けたのか……」
籠手を両手にはめて手首を反らすと、隠し武器であるブレードが手首の下から飛び出した。
さらに今回は、籠手の上部にもギミックがある。
手首を下に反らすと、カシャンと音を立てチタン製クローが展開。なんと短弓へ変わる。
そして、たった今気付いたが、コートの内側に短矢が収められていた。
「マジで暗器だな……エマ、俺を暗殺者にしたいのか?」
短弓があるのは右手だけで、左手にはチタンパネルが取り付けられている。この左手は防御に使えそうだ。もちろん、エルクにはあまり必要ないが。
装備を確認し、脱衣所から出た。
「どうかな……」
「すっごく似合っています!!」
「……マジで暗殺者だな」
「……マスク、こわいね」
「…………」
「…………」
エマが興奮し、ニッケスが苦笑し、フィーネは正直な感想を述べ、ガンボとメリーは無言。
「か……かっこいい」
と、ソフィアがぽつりとつぶやいた。
エマがすかさず反応し、ソフィアに詰め寄る。
「ですよね!! ソフィア先生、かっこいいですよね!!」
「ええ!! これ、ヤマト国のアサシンね? 文献で読んだことあるわ!!」
「はい!! ヤトさんから借りた資料に載ってまして、わたしなりにアレンジしてみたんです!! 両手のブレード、短弓はニッケスさんが手配してくれまして」
「ふむふむ。ね、いろいろ質問していいかしら?」
「もちろんです!!」
「あの……俺、脱いじゃダメか?」
「「駄目です!!」」
エルクは興奮するエマとソフィアに、深夜まで付き合わされた。
◇◇◇◇◇
翌日。
やや寝不足のエルクは、戦闘服を着て第七訓練場へやってきた。
今日の授業は「ダンジョン実習の講義」で、上級冒険者を呼んでチームごとに講義する。
教室で講義をするチームもあれば、エルクたちのように訓練場で講義するチームもある。
訓練場は貸し切りのようだ。
エルクたちのチームは、すでに揃っている。
エルウッドは、腰に双剣を装備し、腕組みをしている。
「そろそろ、講師の冒険者が来る……エルク、眠いのか?」
「ちょっとな……」
興奮するエマとソフィアが戦闘服について熱く語っていたなど言えない。
エルクは適当に返事をして、チームメイトを見た。
「……ふん!」
まず、ジャネット。
ジャネットは、エルウッドが好きなようだ。なので、個人戦でエルウッドをボコボコにしたエルクが嫌いなようで、ずいぶんとわかりやすい。
ウェーブのかかった栗色のロングヘアにリボンを結び、貴族令嬢のドレスのような戦闘服、腰には矢筒、背中には折りたたんだ弓を背負っていた。
「ふぁぁぁ……ん」
二人目、ソアラ。
水色のショートヘアを揺らし……正確には、頭が左右に揺れている。
眠いのだろうか。だぼだぼのパジャマみたいな戦闘服に、こちらもフードをかぶっている。武器らしい武器は何も持っていない。
「…………」
そして、カヤ。
刃の長い槍? とエルクは考えたが、正確には『薙刀』という武器を背負っている。ヤマト国出身だからなのか、ヤトと似たような戦闘服を着て腕組みしている。
カヤは、エルクをチラリと見て言う。
「暗殺者の衣装……あなた、アサシンなの?」
「だから俺は暗殺者じゃないっての……はぁ」
エルク=暗殺者、どうもそんな風にクラスから見られ始めている。
肩を落としていると、こちらに向かって来る男性がいた。
「お、きみらがチームブラックか」
「えっと……あなたは?」
エルウッドが上品に聞くと、男性は言う。
「オレはボブ。チームブラックを任された、A級冒険者だ。よろしくな」
「……チーム、ブラック?」
「ああ、黒い棒を引いたチームだろ? 便宜上、そういうチーム名にしてるらしいぜ」
「なるほど」
エルウッドが納得する。
ボブと名乗った冒険者。
肌が黒く、髪の毛はドレッドヘア、タンクトップにジャケットを着て、背には斧を背負っていた。
人懐っこそうな笑みを浮かべ、エルクたちに挨拶する。
「改めて、オレはボブ。お前らの指導をするA級冒険者だ。よろしくな」
こうして、本格的に『ダンジョン実習』が始まった。
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