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チーム戦トーナメント①
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「ん~…………???」
エルクはベッドから起き上がり、首をひねっていた。
夢見が悪かった。いや、よかったのか。
不思議と、夢の内容が気になり、部屋に運ばれてきた朝食を食べながら考える。
「ピピーナ、だよな?……今思うと、おかしい」
最初は気にしていなかった。
チーム戦のことばかり考えていたが、なぜか今気になり出した。
「七人のヤバいスキル持ち。ピピーナを崇める集団。う~ん……?」
だが、考えても答えはでない。
それよりも大事なことがある。
「ま、いいや。それより……今日はチーム戦の最終日。ロシュオたちに負けるわけにはいかない。気合入れなおさないとな」
不正がないように、会場までは一人で向かわなければならない。
ガンボ、フィーネも一人で朝食を食べているのだろうか。
エルクは食事を終え、顔を洗い、戦闘服に着替える。
そして、部屋のドアがノックされ、案内役の上級生が「そろそろ会場入りしますよ」と声をかけてきた。
「マスク、眼帯……俺の正体は、まだバラしたくない」
口元を覆うマスクを付け、右目を覆う眼帯を付けると、顔の四分の三が隠れてしまう。さらにフードをかぶれば、エルクだと初見ではバレないだろう。
エルクは気合を入れ、部屋を出る。
すると、案内役の上級生(女生徒)が待っていた。
「間もなく、チーム戦のトーナメント発表が行われます。はいこれ」
「……何ですか、これ?」
手のひらサイズの水晶玉を渡された。
「魔法の込められた『転移球』よ。ここではわからないけど、外ではチーム紹介やあなたたちの簡単な紹介が行われてるの。そして、チーム発表が終わったら、自動で闘技場に転移するようになってるわ」
「え、チームメンバーと話せないんですか?」
「ええ。不正があってから、チームの接触は最後の最後までできないの。チーム戦のトーナメントは総当たり戦だから、戦う相手も教師陣が決めるのよ」
「なんだって!?」
想定外だった。
もしかしたら、ロシュオとサリッサの二人と戦えない可能性がある。
さらに、これから戦うチームがロシュオたちとも限らない。
エルクは歯を食いしばる……すると、エルクの持つ『転移球』が淡く輝きだした。
「ついてるわね。チーム戦、一回戦第一試合に選ばれたみたいよ?」
「お、俺が戦うの?」
「そうよ。どのチームの、どのメンバーに当たるかわからない。不正のしようがない、完全な実力勝負……がんばってね」
「……やるしかない、か」
エルクの『転移球』が輝き───エルクは転移した。
◇◇◇◇◇
『チームガンボVSチームパプリコ!! 第一試合、チームガンボからはエルク!! チームパプリコからはライオスだ!! さぁ、相手の情報も何もわからない、完全に平等、正々堂々、公平な戦い!! 二人とも、準備はいいかぁ!!』
いきなりだった。
闘技場に転移したエルクと、十メートルほど先に立っている男子生徒。
男子生徒の両手には鞭が握られており、よく見ると手に持っている鞭が身体に巻き付いていた。
「なるほどな……」
エルクは構える。
わかったことはいくつかある。
相手の名前はライオス。チームパプリコ。武器は鞭……つまり、対戦相手はロシュオのチームではない。それだけで少し安心したエルク。
相手のライオスも、鞭をブンブン振り回して戦闘態勢に入った。
『では……試合開始っ!!』
そして、試合が始まった。
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
「念動力の訓練、その1258。投石回避~」
「……え?」
『生と死のはざまの世界』
エルクは、ピピーナと訓練に励んでいた。
念動力の訓練は死ぬほど辛い。ピピーナが課題を出し、それをクリアすれば次の課題となるのだが……この課題クリア、最低でも一つにつき一年はかかる。
念動力で無茶苦茶な訓練を続けたおかげで、少しは自信がついたが……エルクは、首を傾げた。
「投石回避?」
「そ。念動力でモノを動かしたりする訓練も大事だけど、それと同じくらい体力と体術は重要! まぁ、本職のスキル持ちには敵わないと思うけど、それでもある程度は強くなきゃ!」
「で、投石回避って?」
「簡単。わたしが石を投げるから避けて」
ふわりと、ピピーナの念動力で石が浮かぶ。
「ほい」
「え」
そして───とんでもない速度で発射され、エルクの頭に命中した。
この世界では死ぬことがない。でも、今の石を頭に喰らえば、間違いなく頭は吹っ飛ばされていただろう……そんな威力、速度の投石だった。
「…………え?」
「あらら、見えなかった? ほら立って、もう一回」
「ままま、待った!! み。見えなかった、見えなかったぞ!?」
「そりゃ見えたら訓練にならないでしょ? そうだなぁ……連続で十発避けたらおしまいにしてあげる。だから、がんばってね!!」
「…………」
エルクの投石回避訓練が終わったのは、この時から700日後のことだった。
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
「っしゃぁ!!」
ライオスの鞭がしなり、蛇のようにニョロニョロ動く。
生物的な動き。さらに、鞭の先端が蛇の頭のような加工をされていた。
鞭を操作するスキル───エルクは構えを取る。
「行くぜッッ!!」
「───」
ライオスの鞭がエルクに襲い掛かる。
二本の鞭が、弧を描きつつ上から、もう一本は横から迫ってきた。
上に注意を反らしつつ、横から。
ライオスはさらに鞭を操作。よけにくいように複雑にしならせる。
「───見える」
「なッ!?」
エルクは前に飛び込むように転がり鞭を回避した。
ライオスは「チッ」と舌打ちし、二本の鞭を交互に操作してエルクを攻撃する。
エルクは両手を反らし、ブレードを展開。鞭の先端を切り落とした。
「なっ!? 見えてやがんのか!?」
「回避訓練、しまくったからな!!」
まだ、目立ちたくない。
エルクは念動力を最小限に使ってライオスを倒すことにした。
鞭を躱し、ブレードで切り落とし接近。あと数歩でライオスに触れられる。そこまで近づき、右手をライオスの胸に添え────念動力を発動。
「ゴバッ!?」
ドン!! と、掌底がライオスを弾き飛ばす。
念動力を使い、ライオスの身体全体に衝撃を与え吹き飛ばしたのだ。
ぱっと見、エルクの掌底がライオスを吹き飛ばしたように見えるだろう。
ライオスは場外へ、観客席の壁に激突して気絶した。
『勝者、エルク!!』
「うっし」
観客席が湧く。
エルクは軽く手を振り応えると───ポケットに入れてあった『転移球』が発動。
再び、案内役の上級生がいる控室へ。
「あれ……?」
「お疲れさま。そして、おめでとう」
「あ、どうも」
「第一試合はあなたの勝ち。次は、あなたのチームメイトのどちらかの試合ね。この勝負に勝てば、あなたのチームが決勝へ進出するわ」
「決勝かぁ……」
「決勝は午後からよ」
「え……今日やっちゃうんですか?」
「そりゃそうよ。四チームしかいないし、次は個人戦もあるしね」
「個人戦……」
「個人戦は明日からよ。あなた、個人戦も出るの?」
「ええ、出ます。でも……チーム戦出る生徒にはハンデですね。今日思いっきり戦って、明日から個人戦なんて」
「それなら大丈夫。試合が終わったら、ナイチンゲール様が治療してくれるから。怪我はもちろん、体力も回復するわ」
「おお、そりゃいい」
「ふふ。新入生武道大会の個人戦、懐かし────あら」
と、ここで案内役の上級生が耳を押さえた。
そして、エルクに向かってニッコリ笑う。
「おめでとう。あなたのチームが勝利……決勝進出よ」
「え、勝ったんですか?」
「ええ。チームリーダーのガンボくんが、ラリアット一発で相手を失神させたようね」
「あいつらしいな……」
エルクは苦笑した。
だが……これで決勝進出。
「でも、大丈夫? あまりえこひいきしたくないけど……決勝には間違いなく、一学年最強と噂高い、王太子エルウッドのチームよ」
「大丈夫です」
「そう。なら、がんばってね」
望むところ────そう思い、エルクは気合を入れなおした。
エルクはベッドから起き上がり、首をひねっていた。
夢見が悪かった。いや、よかったのか。
不思議と、夢の内容が気になり、部屋に運ばれてきた朝食を食べながら考える。
「ピピーナ、だよな?……今思うと、おかしい」
最初は気にしていなかった。
チーム戦のことばかり考えていたが、なぜか今気になり出した。
「七人のヤバいスキル持ち。ピピーナを崇める集団。う~ん……?」
だが、考えても答えはでない。
それよりも大事なことがある。
「ま、いいや。それより……今日はチーム戦の最終日。ロシュオたちに負けるわけにはいかない。気合入れなおさないとな」
不正がないように、会場までは一人で向かわなければならない。
ガンボ、フィーネも一人で朝食を食べているのだろうか。
エルクは食事を終え、顔を洗い、戦闘服に着替える。
そして、部屋のドアがノックされ、案内役の上級生が「そろそろ会場入りしますよ」と声をかけてきた。
「マスク、眼帯……俺の正体は、まだバラしたくない」
口元を覆うマスクを付け、右目を覆う眼帯を付けると、顔の四分の三が隠れてしまう。さらにフードをかぶれば、エルクだと初見ではバレないだろう。
エルクは気合を入れ、部屋を出る。
すると、案内役の上級生(女生徒)が待っていた。
「間もなく、チーム戦のトーナメント発表が行われます。はいこれ」
「……何ですか、これ?」
手のひらサイズの水晶玉を渡された。
「魔法の込められた『転移球』よ。ここではわからないけど、外ではチーム紹介やあなたたちの簡単な紹介が行われてるの。そして、チーム発表が終わったら、自動で闘技場に転移するようになってるわ」
「え、チームメンバーと話せないんですか?」
「ええ。不正があってから、チームの接触は最後の最後までできないの。チーム戦のトーナメントは総当たり戦だから、戦う相手も教師陣が決めるのよ」
「なんだって!?」
想定外だった。
もしかしたら、ロシュオとサリッサの二人と戦えない可能性がある。
さらに、これから戦うチームがロシュオたちとも限らない。
エルクは歯を食いしばる……すると、エルクの持つ『転移球』が淡く輝きだした。
「ついてるわね。チーム戦、一回戦第一試合に選ばれたみたいよ?」
「お、俺が戦うの?」
「そうよ。どのチームの、どのメンバーに当たるかわからない。不正のしようがない、完全な実力勝負……がんばってね」
「……やるしかない、か」
エルクの『転移球』が輝き───エルクは転移した。
◇◇◇◇◇
『チームガンボVSチームパプリコ!! 第一試合、チームガンボからはエルク!! チームパプリコからはライオスだ!! さぁ、相手の情報も何もわからない、完全に平等、正々堂々、公平な戦い!! 二人とも、準備はいいかぁ!!』
いきなりだった。
闘技場に転移したエルクと、十メートルほど先に立っている男子生徒。
男子生徒の両手には鞭が握られており、よく見ると手に持っている鞭が身体に巻き付いていた。
「なるほどな……」
エルクは構える。
わかったことはいくつかある。
相手の名前はライオス。チームパプリコ。武器は鞭……つまり、対戦相手はロシュオのチームではない。それだけで少し安心したエルク。
相手のライオスも、鞭をブンブン振り回して戦闘態勢に入った。
『では……試合開始っ!!』
そして、試合が始まった。
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
「念動力の訓練、その1258。投石回避~」
「……え?」
『生と死のはざまの世界』
エルクは、ピピーナと訓練に励んでいた。
念動力の訓練は死ぬほど辛い。ピピーナが課題を出し、それをクリアすれば次の課題となるのだが……この課題クリア、最低でも一つにつき一年はかかる。
念動力で無茶苦茶な訓練を続けたおかげで、少しは自信がついたが……エルクは、首を傾げた。
「投石回避?」
「そ。念動力でモノを動かしたりする訓練も大事だけど、それと同じくらい体力と体術は重要! まぁ、本職のスキル持ちには敵わないと思うけど、それでもある程度は強くなきゃ!」
「で、投石回避って?」
「簡単。わたしが石を投げるから避けて」
ふわりと、ピピーナの念動力で石が浮かぶ。
「ほい」
「え」
そして───とんでもない速度で発射され、エルクの頭に命中した。
この世界では死ぬことがない。でも、今の石を頭に喰らえば、間違いなく頭は吹っ飛ばされていただろう……そんな威力、速度の投石だった。
「…………え?」
「あらら、見えなかった? ほら立って、もう一回」
「ままま、待った!! み。見えなかった、見えなかったぞ!?」
「そりゃ見えたら訓練にならないでしょ? そうだなぁ……連続で十発避けたらおしまいにしてあげる。だから、がんばってね!!」
「…………」
エルクの投石回避訓練が終わったのは、この時から700日後のことだった。
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
「っしゃぁ!!」
ライオスの鞭がしなり、蛇のようにニョロニョロ動く。
生物的な動き。さらに、鞭の先端が蛇の頭のような加工をされていた。
鞭を操作するスキル───エルクは構えを取る。
「行くぜッッ!!」
「───」
ライオスの鞭がエルクに襲い掛かる。
二本の鞭が、弧を描きつつ上から、もう一本は横から迫ってきた。
上に注意を反らしつつ、横から。
ライオスはさらに鞭を操作。よけにくいように複雑にしならせる。
「───見える」
「なッ!?」
エルクは前に飛び込むように転がり鞭を回避した。
ライオスは「チッ」と舌打ちし、二本の鞭を交互に操作してエルクを攻撃する。
エルクは両手を反らし、ブレードを展開。鞭の先端を切り落とした。
「なっ!? 見えてやがんのか!?」
「回避訓練、しまくったからな!!」
まだ、目立ちたくない。
エルクは念動力を最小限に使ってライオスを倒すことにした。
鞭を躱し、ブレードで切り落とし接近。あと数歩でライオスに触れられる。そこまで近づき、右手をライオスの胸に添え────念動力を発動。
「ゴバッ!?」
ドン!! と、掌底がライオスを弾き飛ばす。
念動力を使い、ライオスの身体全体に衝撃を与え吹き飛ばしたのだ。
ぱっと見、エルクの掌底がライオスを吹き飛ばしたように見えるだろう。
ライオスは場外へ、観客席の壁に激突して気絶した。
『勝者、エルク!!』
「うっし」
観客席が湧く。
エルクは軽く手を振り応えると───ポケットに入れてあった『転移球』が発動。
再び、案内役の上級生がいる控室へ。
「あれ……?」
「お疲れさま。そして、おめでとう」
「あ、どうも」
「第一試合はあなたの勝ち。次は、あなたのチームメイトのどちらかの試合ね。この勝負に勝てば、あなたのチームが決勝へ進出するわ」
「決勝かぁ……」
「決勝は午後からよ」
「え……今日やっちゃうんですか?」
「そりゃそうよ。四チームしかいないし、次は個人戦もあるしね」
「個人戦……」
「個人戦は明日からよ。あなた、個人戦も出るの?」
「ええ、出ます。でも……チーム戦出る生徒にはハンデですね。今日思いっきり戦って、明日から個人戦なんて」
「それなら大丈夫。試合が終わったら、ナイチンゲール様が治療してくれるから。怪我はもちろん、体力も回復するわ」
「おお、そりゃいい」
「ふふ。新入生武道大会の個人戦、懐かし────あら」
と、ここで案内役の上級生が耳を押さえた。
そして、エルクに向かってニッコリ笑う。
「おめでとう。あなたのチームが勝利……決勝進出よ」
「え、勝ったんですか?」
「ええ。チームリーダーのガンボくんが、ラリアット一発で相手を失神させたようね」
「あいつらしいな……」
エルクは苦笑した。
だが……これで決勝進出。
「でも、大丈夫? あまりえこひいきしたくないけど……決勝には間違いなく、一学年最強と噂高い、王太子エルウッドのチームよ」
「大丈夫です」
「そう。なら、がんばってね」
望むところ────そう思い、エルクは気合を入れなおした。
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