上 下
587 / 587
ズボラライフ2 ~新章~

136.魔法騎士団

しおりを挟む


「あーあ、せっかく魔石を取ってきたのに、買い取ってもらえないなんて……」
『ミヤビ様は何故、魔石を買い取ってもらおうなどという行動をされるのですか? 人間のお金なら、ミヤビ様が望めばいくらでも手に入れられます』

ヴェリウスが心底理解出来ないという目で見てくるので、ヘラリと笑って答える。

久々に家でヴェリウスとゆっくり出来ているのだ。しっかりブラッシングしてあげよう。などと思いながら話を続ける。

「確かに望めば何でも出せるけど、そんなのつまらないでしょ」
『つまらない……?』
「うん。こうやって人間のお金よ出てこい! って願えば、ほら、出てくるよね」

ジャラジャラと手から溢れるお金に、ヴェリウスが頷く。

「私にとって、お金を創る事なんて簡単な事だけど、何もせずに手に入るって、全然面白くないよ」
『つまり、ミヤビ様はお金を手に入れる過程に重点を置いているのですね』
「そう! 楽しい冒険をした後に手に入るお金、頑張って働いた後に手に入るお金、そんな風にお金を得るから、面白いんだよ」
『私にはよく分かりませんが、ミヤビ様が楽しいのでしたら、それで良いと思います』

ヴェリウスはやっぱり分からないという顔をするが、私の顔を見て頷いた。

「でも……せっかく取ってきた魔石、どうしようか」
『ルーベンスにでもくれてやれば良いのです』
「それじゃあいつもと同じだよ。もっと変わった事したいな」
『変わった事ですか?』

横腹をブラッシングしてやると、リラックスした状態で目だけ動かすズボラさに、飼い主わたしに似てきたなと思う。

「う~ん、魔石で何か作ってみるとか?」
『何か……、前にアクセサリーを作りましたが? またアクセサリーを作るのですか?』
「そういえばそうだよね。あ、宝石みたいに加工した魔石をふんだんに付けたドレスとかどう?」
『そんなものを一体誰が身に着けるのですか?』
「え~、トモコとか?」
『ミヤビ様は、トモコに道化師の役割を求めているのでしょうか? それでしたら止めはいたしませんが』

そんなものを求めるつもりはない。
まぁ、トモコが魔石ドレスなんて着たら、何を始めるんだってなっちゃうか。

「えー、じゃあ何しよう? ヴェリウスはこの魔石でしたい事ない?」
『特にありません』

即答された。

じゃあ、もうロードにでもあげようかな……。

『ロードも貰っても困ると思いますよ』

ヴェリーちゃん、いつもながらに思考を読まないでもらえます?

「あ!! じゃあ、騎士団の魔法訓練に役立ててもらおう!」


◇◇◇


「───で、どうせ買い取ってももらえないし、でも捨てるのも勿体ないでしょ。それに、ロード達に手伝ってもらって手に入れたから、騎士団の中で魔法が上手な人に、ブローチとかにしてあげちゃうのはどうかなって思って!」
「それは……、面白そうだね」

王宮のロードの執務室で、師団長とアナさんを集め、話を聞いてもらっていたのだが、カルロさんが思ったよりもノリノリで驚いた。

「悪くないですね。現在4師団の“魔法師”はパッとしない存在ですから、ここで話題づくりの為に魔石を与えるというのは良い案かもしれません」

レンメイさんも珍しく賛成してくれた。というか、“魔法師”?

「どうやって魔石を与える者を決めるか、という事が問題だけど、また大会でも開く気かい?」
「大会はこの間開催したばかりですし、どうでしょうか……」

カルロさんの言葉に、この間の大会を思い出す。
結局中止になっちゃったけど、なかなか楽しかった。

「確かに、続けて大会ってのも予算を出し渋りされそうだよなぁ。誰かさんに」

ロードの頭の中にはルーベンスさんの姿が浮かんでいるんだろう。嫌そうな顔をして呟いた。

「では、“魔法師”の4師団合同訓練という体をとり、対戦形式としてはいかがでしょうか」

さすがアナさん。即座に解決方法を提案してくる所はさすがだ。が、ただ小規模になっただけのような気もする。

「はい! それなら、魔法使える人達皆に魔石を渡してもいいと思います!」

私の提案に、ロードが「ああ、各々が魔物を倒して、自分の魔石を手に入れろって事か」と言い始め、ギョッとした。

いやいや、それはまだ早いのでは? 魔物って、普通の人間じゃあまだ倒せないよ?

「実戦経験を積ませるという事ですね……」
「俺ぁ構わねぇぞ。ちょうど“魔法師”共がどこまで戦えるのか知っておきてぇと思ってたしよぉ」
「私もだ」
「では、そのように手配しておきましょう」

クイッと眼鏡を上げるレンメイさんに、皆が頷いた。

「あの……」
「どうした? ミヤビ」
「さっきから“魔法師”って言ってるけど、それ何?」
「ああ、魔法を使って戦う騎士の事を“魔法師”と呼ぶ事にしたんだよ」

カルロさんがにっこり笑って教えてくれるが、

「それなら、魔法師より、“魔法騎士”の方がらしくないですか?」

私の一言に、その場にいた皆が「確かに」と同意したのは言うまでもないだろう。

こうして、魔法師団改め、ルマンド王国魔法騎士団の面々は、各々で魔石を手に入れる為に魔物と戦う事となったのだ。

将来、自分の魔石を手に入れるという事が、正式な魔法騎士になる為の試験になるのだが、そんな事になろうとは、思ってもみなかったのだ。

しおりを挟む
感想 1,620

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1620件)

しゅけ
2024.03.14 しゅけ

いつも楽しく読ませていただいてます!
なんなら寝ずに読み続けるほどハマりました(笑)
更新楽しみに待ってます!

トール
2024.03.15 トール

しゅけ様、感想ありがとうございます(⁠人⁠*⁠´⁠∀⁠`⁠)⁠。⁠*゚⁠+
そのように仰っていただき、大変嬉しく思います✨

解除
狼怒
2023.01.29 狼怒

いやいや、雅の持ってる魔石をあげるって話じゃなかった❓それが何故魔物を倒して魔石を手に入れるとなる❓結局雅の持つ魔石は残るやんw( ゚д゚)ハッ!最終的にトールさんの魔石は誰が取るって事❓w

そういや、昨年末位からPC の方でコメ書いても送信するとページがありませんってなってコメ出来なくてスマホからとゆうめんどい状態なんだよなぁ~これってうちだけなんだろうか❓PC 再起動したり色々やったけど全然かわらない。
あ、トールさん明けましておめでとう❗w今年も尻尾食べてますか❓w
こっちはめっちゃ寒くて毎朝-の世界ですw

トール
2023.01.29 トール

明けましておめでとうございます!
今年も尻尾を食べ……てないですよぉ!? 去年も食べてないですからね!?w
そして狼怒様、毎朝マイナスの世界とは、寒すぎです!
体調にはくれぐれも気をつけて下さいませ!

雅さんの一言で、魔物と戦うはめになった魔法騎士団ですw

雅: 私の魔石、どうしよう……

え!? わたくし魔物だった((((;゚Д゚))))!?

そうなんですか?? わたくしスマホで作業しているので、PCの方はよく分からないのですが、PCからコメ出来なくなってしまったのでしょうか??

解除
天丼
2022.12.11 天丼

お疲れ様です!
トールさんいつも面白い小説有り難うございます!
ゆっくりでもいいのでミヤビ&トモコの珍道中を永遠に読みたいくらいズボラ好きになってしまいました!これはトールさんが面白い小説を書くせいですね!w
アルファポリスやなろうでいろんな小説読みましたが、私の最推し作家さんはトールさんなのでいつまでも心待ちにしております!
もちろん他の作品全部最高です!(*´艸`*)
今は朝5時に目が覚めるようになりましたw

トール
2022.12.11 トール

天丼様、ありがとうございます(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
ズボラはワタクシの原点で、ズボラを読んでコメントを下さる皆様に支えられてここまで書いてこれました!
大切な作品なので、頭の中を整理して、改めて向き合えれたらと思っています✧⁠◝⁠(⁠⁰⁠▿⁠⁰⁠)⁠◜⁠✧


他の作品も読んでいただきありがとうございます(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
新しく作品を出すと、すぐに天丼様がコメント下さる事、本当に嬉しく思っています!!✨

早起きして見ていただけるなんて光栄ですが、くれぐれも体調に気をつけて、早寝もして下さいませ(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)

来年にはズボラを再開しますので、その時はお付き合いいただけると嬉しいです!!

解除

あなたにおすすめの小説

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。 沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。 だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。 モブなのに魔法チート。 転生者なのにモブのド素人。 ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。 異世界転生書いてみたくて書いてみました。 投稿はゆっくりになると思います。 本当のタイトルは 乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜 文字数オーバーで少しだけ変えています。 なろう様、ツギクル様にも掲載しています。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜

くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。 いや、ちょっと待て。ここはどこ? 私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。 マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。 私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ! だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの! 前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。