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ズボラライフ2 ~新章~
112.父親は娘に彼氏が出来ると駄々を捏ねがち
しおりを挟むヴェリウス視点
『ロビン様のつがいが見つかったとはな……』
「おい!! そんなに落ち着いていられる事じゃねぇだろ!?」
『誕生されたばかりで、もうつがいが見つかるなど喜ばしい事だろう。それともおぬしは、ロビン様につがいが見つからぬ方が良いとでも言うのか』
「ぐっ そりゃいずれは仕方ねぇかもしれねぇが、赤ん坊の時に出会うにゃ早すぎんだろ! しかも相手は50代のオッサンだぞ!?」
『どうせ番えば歳などとらぬ。ミヤビ様の若返りの薬もあるのだ。問題はないだろう』
「人間だぞ!?」
『フンッ 貴様も人間だったではないか。それこそ番えば神になる。一体何の問題があると言うのだ』
「問題しかねぇよ!! 俺ぁ生まれたばかりの愛娘を俺よりオッサンの男に渡したりしねぇぞ!!!」
『つまりおぬしは、わざわざ忙しく飛び回る私を呼び出しておいて、娘を取られたくないと駄々を捏ねているというのか』
「ぅ゛ぐ……っ」
異界から神王様が帰って来られてからというもの、人間達のゴタゴタから内輪揉め、御子様のご誕生とその教育方針に魔石や魔物の対処と今までになかったような仕事に忙殺されている私を呼び出したかと思えば、娘につがいが現れたと騒いでいるバカ弟子に怒りよりも溜め息しか出てこないのは、疲れているからだろうか。
しかしここにきてロビン様の“つがい”とはな。
『とはいえ、神王様の御子様であるロビン様のつがいが人間から出たとなると神々が騒ぎかねんな。次から次へと……ミヤビ様に関わる問題は絶えぬ』
「そんな事良いつつニヤけてんぞ」
『フンッ これはニヤけているのではなく、幸せを噛み締めておるのだ。騒々しい事も、神王様がそばに居て下さるのであれば嬉しいものよ』
「違いねぇ」
つい今しがた騒いでいたバカ弟子は、口の端を上げると「そういやぁ人間側の魔物の対処だが……」と本題であろうそれを話し始めた。
ロビン様の件は、つがいが現れたとなれば結果は決まっているのだ。今更どうこう言っても仕方のない事だからな。
『ふむ。前に話した通り神側は、ジュリアスが中心になり人間の手に負えぬ魔物の対処をしている最中だ』
「ああ。人間側はギルドや城の騎士団を含め、今んとこ魔物と相対できるのはリンやカルロ、レンメイに冒険者の“焔の鳥”とSSランクのバードぐれぇだ。だもんで、人間がある程度魔法を使えるようになるまではその少人数だけで対処するしかねぇ。後10年はもらえねぇと人間側での対処は難しいのが現状だ」
『うむ。10年程度ならば神々も文句は言うまい』
「ああ。で、陛下や宰相を交えて話し合いを行ったが、まずは魔物の情報を民に発布し注意喚起を促した後、10年後に改めてドロップアイテムについて発表し、魔物退治は冒険者の生業とする事で話がまとまった」
『やり方は昔と変わらんな。むろん騎士団も魔物を倒せるレベルに強化するのだろう』
「勿論だ。俺がそうなるよう騎士団のレベル上げを図る」
『ふむ……おぬしが魔力の扱いを指導するのか』
この世の生きとし生けるものには大なり小なり魔力がある。魔力はうまく扱えば魔法の使用の有無だけでなく、体力や知力を上昇させる。
こやつは騎士団の底上げにまず、魔力コントロールを身に着けさせるのだろう。
「まぁな。魔力コントロールはオメェにさんざんやらされたから、人間に教えてやるぐれぇは出来んだろ」
『まぁおぬし程度でも人間ごときには充分であろう』
「程度とか言うんじゃねぇよっ」
『フンッ おぬしの魔力コントロールは結局雑なままだならな。言っておくが、おぬしとてまだ新神だということを忘れるでないぞ』
「わ、分かってるって!」
未熟者のバカ弟子はいい加減な返事をして気まずそうに目を逸らした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雅視点
御前試合から数ヶ月が過ぎ、あれほど王都に溢れていた獣人もただの旅行者だったのか国に帰ったのだろう、程良い人混みに落ち着いて街歩きしやすくなった。
「移民かと思ってたけど、観光客だったんだなぁ」
獣王ブームは過ぎ去ったのか。
「今のブームは湖にピクニックだよね」
街歩きしやすく感じたのは、皆が湖に集まっているからかもしれない。
「アタシも湖行ったよ! すっごく綺麗だった!!」
「コリーちゃんも見に行ったんだね」
今日は、先日待望の弟が生まれたばかりのコリーちゃん宅にお呼ばれしているのだ。
コリーちゃんの弟君は勿論、双子の友人候補である。
「うんっ “ドラゴン湖”って『一生に一度は行きたい地上観光地ベスト5』に入ったんだよ!」
「ん? 何その観光ブックの文言みたいなの」
「浮島の街に地上観光ブックを配布している所があるんですよ。そこで先日コリーが貰ってきたみたいで……」
ニコニコと特製薬草パンケーキを出してくれるコリーちゃんのお母さんが、そう教えてくれる。
出産祝いであげた抱っこ紐が活躍しているようで何よりだ。
「浮島の観光ブック……」
エルフ達はそんな事までやり始めたのか。
「でもエルフのお友達はまだ地上が怖いからって、誘っても断られるんだよ」
「そっか~。エルフは美人さん揃いだから拐われる可能性があるもんね~」
一緒に来ていたトモコが頷きつつ薬草パンケーキを口に含んで「ぅぐッ」と変な声を上げている。
「うん。だからいつもは学校が終わった後に浮島で遊んでるんだぁ。でもせっかく綺麗なドラゴン湖が出来たから、一度は見せてあげたいの!」
コリーちゃんはそう言うが、元々エルフは臆病な性格の上、長い歴史の中でずっと虐げられてきた……。子供が地上に来るのは少し難しいのかもしれない。
「そういえば、お二人は知ってらっしゃいます? 今度この王都で大規模な工事を始めるらしいですよ」
少し神妙な雰囲気に、気を遣ったコリーママが話題を変える。するとトモコがその話に食いつき、驚きの言葉を発したのだ。
「あ、それ知ってるっていうか、私がその工事の監修頼まれました~」
「あらあら、神様が工事の監修をされるんです?」
「表立っては問題になるので、一応内緒って体なんですけどね~」
おい、それ初めて知ったんですけど?
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