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ズボラライフ2 ~新章~
106.微妙な知り合いとプチ祝賀会
しおりを挟む???視点
「陛下! 王子方を里子に出されるとは、正気なのですか!?」
「……これ以上王族に割く予算も食料も無い。第1王子以外は全て外に出す」
「っしかし、獣王の血筋を受け継ぐ方々を外に出すなど、許される事ではありますまい……!!」
「ならばそなたは、このまま王宮に留め飢え死ぬのを待てというのか」
「!! そ、それは……」
「王子達は外に出す。これは王命だ。従えぬのならば職を辞し、去るがよい」
「陛下……ッ」
尊きお血筋が外に出ていく残酷な光景を黙って見ている事しか出来なかったあの日……。
そして第1王子のレオナルド様を残し、儚くなられた我が王。その後を継ぎ、王位を継承したレオナルド様が悪政を強いるとは、病に苦しむ我々には想像も出来なかった。
神王様が再臨され、再び世界に光が戻ったはずだった。しかし、レオナルド王は教育係であったダンブルによって傀儡にされ、悪政を強いるようになる。
民はまるで商品のように他国へ売られ、その金はダンブルの懐へと収められ、己の欲望の為だけに使われる毎日。
それを咎める者は王都から追放され秘密裏に殺される。見せしめの処刑も、もう何度も実行された。
かくいう私も追放され、暗殺者に追われる身の上であった。
そうして平民であるモーリスをリーダーとした反乱軍に身を寄せ、神々からいただいたチャンスを糧に、ダンブルとレオナルド王から、フォルプローム王国を、民を、解放したのだ。
現在フォルプローム王国は、反乱軍のリーダーであったモーリスが国民の代表となり政を行っている。
「あ~あ、今更王族だの獣王だのよぉ。出てきてもらっちゃ困るんだよなぁ」
フォルプロームの尊き血を理解出来ぬこの平民が、元反乱軍のリーダー、モーリスだ。
「おいバナン。リンっていう元王子、里子に出された時点で王族じゃねぇんだろ? 大体フォルプロームはもう王国じゃねぇし、今更出てきても俺らの邪魔になるだけなんだからさぁ、事故にでも見せかけて殺せないわけ?」
我が王の執務机に足を投げ出し、我が王の形見である正当な後継者のリンゼイ様を殺せと喚く下民めが。
「あの御方が獣王として覚醒された今、王政でなくなったとはいえ民衆の支持を集めているのも事実です」
「だ~か~ら~!! それを何とかしろって言ってんだよ!! お前一応国務大臣ってやつなんだから、邪魔なもん始末すんのもお前の仕事だろうがよ!!」
執務机を蹴りつける男は、この部屋にある者の価値も分からぬ愚鈍だ。コレと比べればダンブルの方がよほど目は肥えていただろう。
これ以上この男によって、由緒ある王家が荒らされる前になんとしてでもリンゼイ様をお迎えせねばなるまい。
王宮に、下民など不要だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雅視点
「まさか祝賀会自体しないなんて……っ」
「私はてっきり、みーちゃんがきちんとロードさんの許可を取ってるって思ってたよ~」
「ハァ……有り難いよ。有り難いけどな、オレを巻き込むの止めろって言ってんだろ」
他師団から大好評だった食堂のビュッフェは、レンメイさんの手により立入禁止になって幕を閉じた。
今はこれ以上食堂で問題を起こすのはマズいので、本来主役になるはずだったリンの部屋に場所を移して、ビュッフェからオードブルに変更し、小規模な祝賀会を開いているところなのだ。
ちなみに参加者は、レッサーパンダ獣人のスイ君、ヤコウ鳥の件で逮捕された私を取り調べた、毛根の死滅したお兄さん、門番から異例の出世とかで、リンの部隊に入隊する事になったカモシカ獣人のお兄さん、神生で初めてステータスを見せてもらった、皆のオカン的ポジションのギャレッドさんというメンバーである。
この中で初対面なのは元門番のお兄さんだ。話を聞いたら、王都の門周辺を湖に変えたあの事件の当事者であるらしい。
あれってウチのバカロンのせいじゃなかったっけ?
何でこのメンバーかって? 何かこのメンバーがリンの部隊の関係者なんだってさ。
リンは階級でいうと、小隊長って階級らしい。大体30~50人位の部隊の隊長で、レッサーパンダのスイ君はリンを補佐する役割なんだって。ギャレットさんと元門番のお兄さんは、新しくリンの小隊に入ったメンバーで階級は区隊長、毛根死滅兄さんはリンと同じ小隊長に昇進した同僚らしいよ。
リンの部屋にトモコと二人遊びに来たら彼らが居て、初対面じゃないし、なら一緒にプチ祝賀会だ! って事で飲み食いしてるんだ。
いや~皆うまいうまいって食べてくれるし、ご飯の差し入れ喜んでくれるのって楽しいね。
「あ、あの~……オレ、門番だったんで本隊の事あんま詳しくねぇんスけど、この女の子たちってどう見ても騎士じゃないっスよね?? 騎士寮に連れ込んでも良いんスか……?」
「アズマ君、この方達は良いんだよ。いや、師団長にバレるとある意味マズいかもしれないけど」
「ガトー第6部隊長、この子達が何者か知ってるんスか?」
「アズマ君も聞いた事あるだろう。王宮の精霊様の事を」
「はい。師団長のつがいの精霊様ですよね」
「そうだよ。今リン第8部隊長と話しているのがその精霊様なんだ。失礼のないようにね」
「は…………?」
「精霊様のお隣にいらっしゃる美しい女性は、僕は初めてお会いするけど、噂から女神様らしいと聞いたことがあるよ」
「いやいやいやいや………………は?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ギャレッドさんとは、雅さんが一番最初にステータスを見た騎士です。
名前: ギャレッド・ルーカス
年齢: 21(独身)
種族: 魔族
LV: 8
HP:20
MP:15
装備: 騎士の訓練着(支給品・効果: 防御力1)
騎士のブーツ(支給品・効果: 脚力向上1)
訓練用の剣(支給品・効果: 攻撃力3)
スキル: DIY
裁縫
掃除
オカン
そしてガトーさん。雅さんがヤコウ鳥事件で逮捕された時、取り調べを担当した優しい人族のお兄さんです。20代後半で前頭部の毛根が死滅していますが、エリートコースに乗った男です。
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