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ズボラライフ2 ~新章~

97.労せずして得る

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気が付けば水の中に沈んでおり、海に落ちた時にたった泡で周りがよく見えない。ゴポゴポと沈んでいくうちに泡はかき消えたが、すぐ水の粒が雨のように降りそそいできた。多分さっき盛り上がった海面から何かが出てきて、海水が舞い上がった際の水滴だろう。
自分の口から、ゴポっと空気の泡が出て海面へ上がっていく。だんだんと沈んでいく体に危機感は生まれないが、気付いた事がある。

私、ちゃんと水泳を習った記憶がないんだけど。

小学生の頃のプールの授業は25メートルを自由形で泳ぎきったら合格! みたいな試験で、犬かきで泳ぎきって合格をもらった。だって泳ぎ方なんて教えてもらってないから。中学ではプールの授業自体が無く高校もしかり。友人とプールや海に行っても浮き輪やボートに乗って遊んだ記憶しかない。

つまり、私は犬かきしか出来ない。

犬かきで浮上したとして、この透明度だ。皆からは泳ぎ方も見えてるだろう。リンやアンさんだけなら良いが、ショコラや少年は子供。大人の女性が犬かきで戻ってきたとか格好悪い様を見せつければ、「えー……」って、幻滅しちゃうと思う。せめて子供の前だけではそれなりな大人でいたい。
え? お前神王だろうって? いやいや、仮に神王の力を使って宙を浮く感じで戻ったとして、怖くない? 下からぶわーっと浮いてくる女。トモコなら爆笑で済むかもしれないけど、少年は絶対トラウマだよ。

などと思っていたら何かが海に落ちたのか、大量の泡と大きな水の揺れがやってきて周りが見えなくなった。

え、うわっ 何かが背中を押してる!? ━━━……

「━━━……って、あれ? 水の中から出た……」
「ミヤビ様!! ご無事ですか!?」

からアナさんの声が聞こえる。

「ど、ドラゴン……っ!!!?」

ドラゴン? 目下に見える少年がクルーザーのデッキでこちらを見ながら腰を抜かしていた。

『主様~大丈夫ですか~?』

お尻の下から聞こえてくる声にギョッとして見れば、真っ白に輝く鱗が目に入る。これは、

「もしかしてショコラが助けてくれたの?」
『はい~!! ショコラは主様の護衛ですから~』

どうやら私はドラゴン化したショコラの背中の上にいらしい。だから少年はドラゴンって言ってたのか。
水竜でもないのに海に潜れたんだね。

「ンナァ~~~~~ン」

海に落ちる前に聞こえたあの声がすぐそばで聞こえ、ショコラに気を取られていた皆が声の主を見た。

そこにいたのは予想どおり、うみねこである。

「とはいえ、この大きさは予想外かな」

引きつる顔を両手で覆い、軽く押し揉みその巨体を見上げる。
10メートル以上あるんじゃないだろうか。

「ミ、ミィ……ッ(お、おかん……っ)」

どうやらうみねこジュニアの母親らしい。子供は茶トラだが、母親はまだら模様の愛らしい巨大猫だった。

「ンナァ~~ン!! (今までどこで何をやってたんだい!! このバカ息子!!)」
「ミミミミ、ミィ!! (すすすす、すんませんっしたぁ!!)」
「ンナ゛ァァァァ!!!! (すまんで済むと思ってんのかぃ!!!!)」

おおぅ……母うみねこ、毛が逆立ってるよ。

「ミヤビっ あのデカいうみねこかなり怒ってるみたいだけど大丈夫なのか!?」
「あ~、あれはうみねこの子供に怒ってるのであって、私達は眼中にないみたい」
「は……? どういう事だよ」

不可解な面持ちをするリンに、うみねこの子供がどういった経緯で少年に保護されたのか説明すると、リンは勿論の事、周りにいたアナさんと少年までスンっとした表情でうみねこの親子を眺めていた。

「ンナァ~ゴ? ナァ? ……ンナァ!? ンナァ~ン!! (それで、この人間達はなんなんだい? ん? も、もしかして、し、し、し、神王様ぁ!? ごごごご、ご無礼をお許し下さいィィ!!)」
「ミィ? (おかん、どうしたんだべ?)」
「ンナァ!! ンナァ~ン!!(おバカ!! 神王様の御前だよ!! 失礼な態度を取るんじゃないよ!!)」
「ミィ~? (神王様?)」
「ンナァーゴ!! ンナァ~ (神王様っ バカ息子がご無礼を!! どうか命だけはお助けを~っ)」

私は恐怖政治をしく独裁者か。
前にもジュリアス君にそんな事言われた記憶があるけど、無礼者は手打ちじゃ!! なんて言った事もやった事もないんですけど!?



その後落ち着いたうみねこ母に息子のおバカな行動を切羽詰まってしたら、平身低頭してわびられた。それはもう可哀想になるくらいだった。

「ンナァ~!! (誠に申し訳ございません!!)」
「町の人が安心して漁に出れるようになるならもう大丈夫だから」
「ンナァ……(ですが、多大なご迷惑をおかけしてしまいました……)」
「う~ん……あ、だったら町の人に漁に出れなかった間の海産物を持っていってあげればいいんじゃないかな。ついでに私にも貰えると嬉しいかな!」
「ナァ~ゴ!! (そのような事でよろしければいくらでも獲ってきます!!)」

ラッキー!! 労せず海産物ゲットだぜ!!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




明けましておめでとうございます。
今年も皆様に良いことが沢山訪れますように!!



雅: 皆様に祝福を~!! シャンシャン!!

トモコ: みーちゃん、その“シャンシャン”ってなに~??

雅: シャンシャンは、神社のアレだよ。あのシャンシャンっていうやつ

トモコ: あ~!! アレね~。私もやる~。皆に祝福を~!! シャンシャン

ショコラ: シャンシャン!

マカロン: シャンシャン~

ロード: いや、だから“シャンシャン”って何だ
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