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ズボラライフ2 ~新章~

95.そのギャップ求めてませんから

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「この子を保護したのが10日前で、魔物が姿を見せ始めたのが8日くらい前なんです。だからこの子の親が探してるのかもって……」

少年の言うとおり今港を騒がせている魔物がこの“うみねこ”の親だとしたら、この子を返せば問題は解決するんじゃないか?

リンとアナさんの顔を見れば、2人共難しい表情をしているではないか。何故だ。

「もし君の言うとおり魔物がそのうみねこの親だとしたら、その子を返すだけでは終わらないかもしれません」

え? どういう事??

「人間が自分の子供に怪我をさせて、その上拐っていったんだ。返したとしても親の怒りが収まるかどうか分からないって副師団長は言ってるんだ」

私が首をかしげていた為か、リンが説明してくれた。
確かに手当てする目的でも10日も戻って来なかったら拐われたと思うよね。

「そんなっ」

少年は真っ青な顔色で腕の中のうみねこを見る。

「僕のせいで町の人たちが危ない目に合うかもしれないなんて……っ」
「ミィ」

うみねこは少年に話しかけるように鳴いている。何を言ってるのか興味をそそられた私は、うみねこが何を話してるのか理解出来るよう願ってみた。

「ミィ。ミィ(今戻ったらおかんに怒られんべ。ほとぼりが冷めてから戻してくれや)」

おいィィィ!!!! 可愛い鳴き声で勝手な事言ってんぞォォォ!!

「どうしたら……っ」
「ミィ~!! ミッ(人間の獲った魚を盗み食いしようとして怪我したとかバレたらおかんに殺される!! ここは助けると思って頼んべッ)」

少年は青い顔で涙目なのに、このうみねこ……。でも可愛い。茶トラの子にゃんこ可愛い。

「ねぇ少年。私がそのうみねこの親に話をつけてあげるよ」
「え……?」

呆気にとられたような顔で此方を見る少年の横で、リンが眦を吊り上げる。

「ミヤビ! お前何で毎回首突っ込むんだよ!!」
「リン、ここにうみねこと話が出来る人はいる?」
「はぁ?」
「私はうみねこと話せる。だから私がやるしかないんだよ」

またおかしな事を言い出したという目は見飽きたぞ。だからその目を止めようねリン君。




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ロード視点


あ゛~……ミヤビと釣りデートしたかった。

騎士だってのに毎日、毎日事務作業に追われ、帰宅できるのは深夜。さらに休日は子供中心に1日が終わる。勿論ミヤビと俺の子を可愛がるのに不満なんぞねぇが、二人きりになれるのは夜だけだってのにミヤビは眠る事が好きだからなぁ。子供が産まれて以来デートなんて一度もできてねぇ。俺ぁなんつー不甲斐ねぇ男なんだ。
さっきのチャンスもみすみす逃しちまうなんてよぉ。

「それもこれも、あのオッサンが大規模な治水工事を始めやがったからだ!」

見慣れた扉の前で恨み言をつぶやいていれば、オッサンの私兵である護衛騎士が訝しげにうかがってくる。
あのオッサンに護衛なんていらねぇだろうがとは思うが、貴族は体面ってのもあるらしいからな。

「扉の前で何をしているのだね。入るのならさっさと入ってくることだ」

チッ 相変わらず、このスカした態度が気に入らねぇ。

「邪魔するぜ」
「邪魔をする気なら出ていってもらおう」

この野郎……っ

「宰相サマが考案した上下水道に関する、移民雇用に対しての王都住民との問題をまとめた報告書を持ってきた」
「ふんっ やっと出来たのかね。早くこちらへ渡してもらおうか」

んだその偉そうな態度はよぉ! このクソ宰相が!! コイツがミヤビの親父代わりじゃなかったらすぐボコッてたぞ!

「……ところで、ろくでもねぇ噂を聞いたんだがなぁ」

嫌々ながらも書類を渡し、確認している間は部屋を出ていけない為ソファに腰を下ろして例の噂について口にする。

「ああ、私が国王に成り代わろうとしているという馬鹿馬鹿しいあれかね」
「それもだが、俺のつがいのこの部屋への出入りの話だ」
「ふんっ 今更だがね。まぁ私もミヤビ殿の存在自体の非常識さに貴族の常識を失念していたようだ。反省はしているがね」
「反省の欠片も見えねぇよ。あれに関しちゃミヤビが悪ぃからな。責めはしねぇさ。個人的にはここに来てほしくねぇから、あの噂も悪かねぇ」
「ミヤビ殿の事だ。噂など関係なくまたやって来るだろうがね」

そうだろうが、俺のつがいだぞ。そのミヤビの事は何でも知ってるって顔止めろや。

「ふむ。稚拙な報告書だがミスはなさそうだ。問題点も想定内のようだし、移民からも警ら隊を幾人か募集すれば治安維持に問題はないだろう」
「なら当初の予定通り、警ら隊の編成は王都民と移民で募集すんぞ。都内に割く騎士も予定通りで良いんだな」
「そうしてくれたまえ。それと、フォルプロームから入って来ている獣人の様子はどうなっているのかね」
「ああ、奴ら間違いなくフォルプロームの元反乱軍だな。を探している事を隠そうともしてねぇ様子だ」
「(元)反乱軍も現王派と旧王派に二分化しているようだが、リンが獣王に覚醒してからは旧王派の力が増している。王宮の馬鹿貴族がいつ奴らと接触し厄介な事になるかわからんのでね。引き続き監視を怠らないようにしてくれたまえ」




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※補足

フォルプロームはリンのお兄さんが国王でしたが、反乱軍に淘汰され、現在は反乱軍のリーダーが国王になっていますがリンが生きている事が発覚した事で、フォルプロームの王族の血を引くリンを王にしたい旧王派と、反乱軍のリーダーが国王のままが良い現王派に二分化されています。 
さらにリンが獣王に覚醒した事で旧王派の力が増している状態です。

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