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番外編

ディーク10歳。鬼人族に遭遇する2

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頭上の角と、父さん以上のムッキムキの筋肉、そして3メートル近くあるデカさ。

「遠近法がおかしくない?」

母さんの緊張感のない呟きに、しかし同意してしまうほど森の木も草も小さく見える。

「すごい…ゲームに出てくるオーガだ……」

つい呟いてしまったが、怖い顔をしたソイツは表情を崩す事なくこっちを睨んでくる。
この世の全てか憎い!! といわんばかりの凶悪な顔だ。
顔にまで筋肉がついているのか筋が入り、眉間なんてシワなのか筋なのか、なんかもう北○の拳のラオ○のようだ。

口からは絶対黒い息を吐くに違いない。

父さんの顔も怖いが、この角の生えたヤツはそれを上回る。

ぎゅるるるる~~~っ

未だに鳴っているお腹の音は顔に合っておらず、まるで間違えてアテレコされた人のようで異様だ。

「どうやらあの人のお腹が鳴ったみたいね!」

疑いが晴れたロビンはどや顔で言い放つが、空気が読めないにも程があった。しかも、

「ねぇアナタ、お腹が空いているならパパのお弁当食べる?」

とまで言い出したのだ。

ロビンの言葉に答えるかのように、またお腹の音が大音量で鳴る。ロビンはそれに笑いながら「こっちに来て一緒にたべましょう」と誘い出した。なんて怖いもの知らずの妹なのだろう。

「ロビン、初対面の方に失礼でしょ。それじゃあ警戒されて来てくれないから」

母さんは若干まとも(?)な事を言いながら、お重の一つを持ってオーガに近づきはじめた。あの父さんが何故か止めない事に疑問を持ちつつ、母さんの行動を眺めていると、

「良かったらどうぞ。変なものは入ってないので」

と言って、オーガの1.5メートル手前の地面にそっとお重を置きこっちへ戻ってきた。


「母さんの経験上、これが一番間違いないからね!」

それ、野良猫の餌付け方法だろ。
ロビンよりも母さんが一番失礼だよ。




「ッ…“我等の神”よ…!! 御恵みかたじけなく!!」

え?

見た目にあった重低音の声音が、森に響き渡りついビクリと肩を揺らす。

「ほらぁ、この対応で間違いないでしょ!!」

どや顔の母さんの背後では、オーガが土下座して額を地面に擦りつけていた。
父さんの作ったお弁当を地面に置いただけなのに……

「母さんが神扱いされてる」
「な、何言ってるの!? 私が神なわけないでしょ!? ねぇロード!!」

何故か動揺している母さんの問い掛けに、父さんは何も言わずじっとオーガを見ている。

「ロード?」
「……ありゃ“鬼人族”だな」

父さんがポツリと言った事に驚く。
鬼人って…じゃあモンスターじゃなくて人間ってこと??


「“鬼人族”ってロードの…あっ ゴホンッゴホンッ」

オレ達の顔を見て母さんがわざとらしく咳をするので、なんだよと顔をしかめると、笑ってごまかされた。

“鬼人族”は、母さんが地面に置いたお弁当を恭しく受け取り、しかしぎゅるるるるとお腹をならしながらも食べようとはしていなかった。口の端からヨダレも垂れているというのに。

「お弁当を抱えてるのに、何で食べようとしないんだろう?」

オレの呟きに、「きっと仲間にも分けてあげたいんじゃないかなぁ?」と母さんが返してきたが、そうなのだろうか?



「俺は“聖雷の湖”の守役で“ガライ”と申します!! まさかが御出になるとは…ッ 夢のようです!!」

どうやらこのオーガ…じゃない。鬼人族の男はここにある泉を守っているらしい。
しかし気になるのは、明らかに母さんではなく、父さんに向けて喋っている事だ。
最初はお弁当をあげた母さんを神扱いしていると思っていたが、どうやら父さんの事を“我等の神”と呼んでいる。

まさか……父さんが作ったお弁当だと見抜いたのだろうか。


「あれ? “眷属”は“精霊”と違って自分達の神が誰なのかはわからないはずなのに…」
「オレとミヤビが●●●ズキューン!!したときに誕生した奇跡的な存在だから、特別なんじゃねぇか?」
「そういう事を恥ずかしげもなく言わないでもらえますぅ!!!?」

父さんと母さんがコソコソ言い合っているが、よく聞こえない。

「ねぇ、貴方何でそんなにお腹がなっているの?」

ここでまたロビンが口を開く。それはオレも思っていた事なので黙って見ていると、鬼人は少し目を伏せた後に語りだしたんだ。


「━━実は、この“聖雷の森”は、鬼人が生きていくにはあまりにも過酷な環境の森なのです」
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