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第五章
浮島の住人、ゲットしました!!
しおりを挟むロードの執務室でゴロゴロ転がって居れば、部屋の外が騒がしいことに気付いた。
窓の外を見ると、数台の豪奢な馬車が王宮から出て行き、空には伝書鳥が飛び交っている。
何かあったのだろうか?
首を傾げていれば、キラキラと氷の結晶が舞い、執務室にヴェリウスが現れたのだ。
相変わらず美しい登場である。
『ミヤビ様、世界中の王と代表者に教会の取り潰しと背信者捕縛の件を一斉に周知致しました』
「あ、うん。ありがと…一斉って言った?」
『はい。世界会議とはいえ、ルマンド王国に集まったのは一部の国の代表者のみ。他の国にもランタンやジュリアスが赴き私と同じ内容を伝えております故』
当然ですと胸を張るヴェリウスに、さすがだねぇと褒めれば尻尾をブンブン振って喜んでいた。
「まぁこれで教会を消したら一件落着だね」
『それですが、国民への周知にひと月の時間を与えましたのでお取り潰しはひと月後でお願いします』
「そっか。いきなり教会が無くなったら皆びっくりするしね。分かった」
ヴェリウスの話に頷いてはみたものの、私はひと月後に教会を消す事を覚えているだろうか。
『ミヤビ様、ひと月後に教会が消滅するよう今願っておけばお忘れになる事もないかと』
「そうしておきマス…」
顔に出ていたのだろうか。そんなアドバイスをいただいてしまった。
ヴェリウスの言うように願ってから、そういえば…と彼女を見る。
「お嬢様…聖女のベルーナちゃんはどうしてる? イアンさんも」
王都の教会はロードが破壊してしまったので、お嬢様は居場所が無くなってしまう。家に帰ったのだろうかと思うがどうなのだろう。そしてイアンさん…彼は今回の主犯の息子という事で肩身の狭い思いをしているかもしれない。
『聖女と呼ばれているあの少女は、大司教の捕縛に協力したとして国王より感謝状が贈られました。現在は親元に戻っているようです。
人間にとって聖魔法の使い手は貴重。少女の親もぞんざいには扱わないでしょう』
「そっか…元々家に帰りたいようだったし、大事にしてもらえるなら良かったよ」
『はい。イアンはやはり首謀者の家族です。捕縛に協力したといっても処罰対象になるでしょう。減刑されたとしても国外追放、さらに世界中の教会が取り潰しになる事の責任を考えれば、聖人の称号は剥奪され受け入れる国もないかと』
「…成る程、ならイアンさんは浮島の街の住人としてもらっちゃおうか」
『…そう仰られると思い、すでにエルフ達には準備を進めさせております』
ウチの子何て優秀なの!!
ぎゅうっと抱きつくと尻尾の動きが激しくなり、ブンブンと音が聞こえる程になった。
どさくさに紛れてふわっふわの毛に顔を埋め、その感触を堪能していると突然身体が浮き、もふもふから引き剥がされたのだ。
「なぁに俺以外にくっついてんだ」
耳に響く低い声にぞくりとする。
「っロード!」
手足をばたつかせるが、抱き上げられた身体が地に下ろされる事はなかった。
『仕事はどうした』
ムッとした声でヴェリウスがロードに話しかければ、誰かさんのお陰で予定が変更になったので呼び戻されたとぶつぶつ言っている。
王宮の外に出ていたらしいのだが帰ってきてまたすぐ出るらしい。
『さっさと行くが良い。私とミヤビ様の戯れの邪魔をするな』
「ふざけんなよ。そんな羨ましい事許せるわけねぇだろ。俺がミヤビと戯れてぇわ」
ヴェリウスはバカにしたように鼻を鳴らし、ツンとすましている。
「ねぇ、ロード。ヴェリウスと一緒にお嬢様とイアンさんの様子を見に行きたいんだけど良い?」
「あ゛?」
険しい顔で見られるが、私とヴェリウスを見て少し考え、ヴェリウスと一緒ならと許してくれた。
「その変わり夜にはここに戻って来んだぞ。いいな」
そんな事を言いながら渋々仕事に戻ったロードに、私はほくそ笑んだのである。
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