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第五章
ずっと聞きたかった事
しおりを挟むヴェリウスの毛並みを堪能して皆へ向き直ると、あの忌まわしき出来事を語って聞かせたのだ。
彼らは静かに耳を傾けてくれた。
「それは…何と言えば良いのか、」
話を聞き終わった皆は、それぞれ躊躇いがちに口をもごもごさせると目を逸らせた。誰も私を直視しようとしないのだ。
「災難でしたね…」という声は誰のものだったのか。トモコやロードでない事は確かだ。
「みーちゃんって毎回死に方がコントだよね~」
仰る通りだトモコさん!! って話を聞いた感想がそれ!? 他にないのか!?
『ミヤビ様、まさかそのような事でお命を散らされたとは…っ』
ヴェリウスは悔しそうに俯き前足で畳をパシパシ叩いている。可愛い仕草だが、畳がだめになるから止めなさい。
「そのふざけた“創造主”にゃ腹が立つが、雅と出会えたのはそいつのおかげでもあると思うと複雑だな」
ロードはそう言って腕の中へ私を抱き寄せ、ランタンさんは神王様が帰って来てくれただけでもアタクシは嬉しいわと、やはりクネクネしながら胸元のメロンを揺らしていた。
ジュリアス君もランタンさんの意見に頷き、神王様のそばにいられるなら良いと笑っている。
魔素が尽きかけた中、帰って来ない私を待っていた皆の姿を思うと胸が痛むが、この子達は責めもせずこうしてまた受け入れてくれたのだ。
「皆、ありがとう。…今まで辛い目に合わせてしまってすまなかった。恨まれて当然だというのに、待っていてくれたんだね」
『っ神王様!!』
ロードを蹴散らしてヴェリウスが突進してきた。
どうやら一番の甘えん坊は変わっていないようだ。
抱き付いては来なかったが、ランタンさんの瞳は潤み、ジュリアス君にいたっては抱きつこうとしてロードに阻止されていた。ヴェリウスに蹴散らされた後のロードの行動は早かったのだ。
「ヴェリウスはまだしも、男が俺のつがいに触れるんじゃねぇ」
ヤクザのように凄むロードのあの顔…貴族のお嬢様方から盗賊扱いされるはずである。
暫く我が子と戯れた後、まだ本調子ではないと皆を追い払ったロードに抱き込まれたまま30分。一向に離してもらえない。
「ロード、お腹も空いたしそろそろ離してくれないかな?」
「…嫌だ。飯なら収納してるもんがあんだろ」
それを出して食や良いだろうが。とぞんざいな言い様に、つがいになんて態度だと頭突きしたくなった。
前々から思っていたが、この男は私に対しての扱いがつがいのそれじゃないのだ。平気で睨んでくるし。
トリミーさんの旦那さんは、目の中に入れても痛くないくらいの溺愛っぷりでトリミーさんをお姫様扱いしていた。
他にも王都の人族のカップルは大概男性は女性をお姫様のように大切に扱っていたのだ。
しかしこの男はどうだ。神輿のように私を担ぎ移動し、舌打ちや睨み付けは当たり前。出会った当初は嘘をつき監視して薬を盗むという暴挙に出た事すらあった。
挙げ句このぞんざいな言い様。
誰かーー!! このゴリラにつがいとはなんたるかを説いてやって下さい!!
「うるせぇ。十分溺愛しているし、お姫様通り越して神様扱いしてやってんじゃねぇか。最高グレードだろ」
「これが最高グレードだと!?」
「これ以上って事なら、そりゃもう布団の上じゃねぇと不可能だな。お、丁度布団の上だし、最高グレードの更に上を今すぐ実感させてやろうか」
すいませんでしたーー!! もう文句は言いません。神様扱いありがとうございますーー!!
「ったく。俺の愛はどうやったらお前に届くんだ」
ぶつぶつ言いながらも離さないその愛は十分届いていますとも。と2人で軽口をたたき合っていた。
そんな中タイミングを見て、雰囲気が和んだ所でずっと気になっていた事をロードに聞いたのだ。
あのさ…と恐る恐る切り出すと、ロード何だよと私の肩に埋めていた顔をあげる。
「…ロードは、神王を恨んでないの?」
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