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第三章

ようこそ、浮島の街へ

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微妙な空気が室内を支配する。
ルーベンスさんは何も言わずにロードと私を見ていて、何を考えているのか読めない。

「だ、大丈夫じゃないかなぁ。だって神々も人間を住まわせるのは許しているから候補者を出してきているわけだし」

反対なら候補者など出さないだろう。ヴェリウスだってランタンさんだって反対しなかったわけだし。

「それはが住むだけならという話だろう。神々の候補者でもない者が街を統治するのは他の神が許してもヴェリウス辺りは反対するんじゃねぇか」

もっともな事を言われるが、そこに関してはこっちにも考えがあるのだ。

「それなら、ルーベンスさんを私の候補者って事にすれば良いでしょ?」
「良いわけあるか!!」

自信満々にドヤ顔で伝えたら、ロードに怒鳴られた。

「オメェは自分の立場を分かってんのか!?」

予期せぬ言葉に首を傾げていれば、頬をムニッとつねられた。

「オメェが一人の人間に肩入れしたとなりゃどうなると思ってんだ」
「?それならロードも人間だったし…」
「俺ぁオメェのつがいだろうが」

優しい声と眼差しでつがいを協調され、手を握られるんだが、ルーベンスさんが目の前にいますけどぉ!? ルーベンスさんの眉がピクピク動いてて、今にも「不愉快極まりない」とか言い出しそうですからァァ!!

「それに…オメェがそんなにこの人に肩入れしたら、俺が不安になるんだが?」

おっさんのくたびれた感じの色気を放ちながらそんな事を言ってくるロードに、心の中で絶叫する。
ルーベンスさんの眉間のシワが一つ増えた。

「ロードさん、そういう話はまた後程お伺いシマスので…」

今度はロードの眉間にシワが寄る。
交互に眉間にシワを寄せている2人に、実は気が合うのでは? と思いながら動揺していると、ルーベンスさんがついに動いた。

ゴホンッ とわざとらしく咳払いをして、口を開く。

「すまないが、私も色々と忙しいのでね。考えがまとまっていないのなら、出ていってくれたまえ」

ごもっともな事を言われてますます動揺していると、ロードが私を抱き上げてソファから立ち上がったのだ。

「宰相閣下殿、すまねぇな。今回の話は忘れてくれ」

勝手に話を終わりにされて、そのまま扉に向かい始めたのでこのままではダメだと心の中で願った。
その刹那、私とロード、ルーベンスさんは、澄みわたる青空の下に立っていたのだ。

「!? な、何だ…っ」

今までいた執務室ではなく、外のしかも異様に空の近い場所に立っていたルーベンさんは驚愕で固まっている。

しかも、ゴウッと飛行機のような音がして突然巨大な影が私達を覆ったので上を見れば、真っ白なドラゴンが上空すれすれを飛んでいるではないか。「ひっ」と声を上げるルーベンスさんは、きっとドラゴンを見たことが無いのだろう。

しかし、遠くにも数匹のドラゴンが楽しそうにじゃれあいながら飛んでいる所を見ると、ドラゴンの為に創った浮島は気に入ってくれたらしいのでほっとした。

「おい、何で浮島にドラゴンが飛んでやがる」

さすがロードである。
“転移”した場所が即座にと理解するなんて。やはり来たことがある者は違うな。

そう。ここは浮島。しかも天空神殿のお膝元にある第1の浮島だ。

「ランタンさんから、ドラゴン達を保護して欲しいってお願いされたから、あっちの方角にドラゴン専用の浮島を創ったの」

じゃれあいながら飛んでいるドラゴンがいる方向を指差せば、大きな溜め息が返ってきた。

「…俺が居ない間は何もすんなって言ってあったはずだが?」

ギロリと睨まれるので縮こまりながらも反論する。

「だって…ドラゴン達が絶滅の危機に陥ってたから…」
「ぐ…上目遣いは卑怯だろうがっ」

何故か頬を赤く染めたロードがすり寄ってくるので小首を傾げる。

「っ君達は、よくこんな状況でちちくりあっていられるものだな!!」

ルーベンスさんの初めての怒鳴り声に驚き振り返ると、青筋をたててこちらを見ていたのだ。

「ヘヘッ ようこそ、第1の浮島へ!! 観光していきませんか~?」

笑って誤魔化し、街人Aのようにそう言えば、ますます引きつるその顔にどうしようもなくなって、私を抱き上げているロードに助けを求めたのだ。
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