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第三章

村作り開始

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トントンカンカンと森に軽快な音が鳴り響いている。

結局、村作りは自分達でやると言い出した珍獣達に、ヴェリウスもトモコも笑顔で頷き、事前に用意していたらしい道具と材料を渡していた。
どうやらヴェリウスもトモコも最初からそのつもりだったようだ。

『自分達で村作りせぬようであれば、深淵の森ここから追い出しておりました』
「そうそう。自分達の住む村は自分達で作らないと大切に出来ないからね~」

成る程。2人とも考えていたようだ。

村の広場に机と椅子を並べ、ティーセットを出してお茶をしている私達は邪魔ではないだろうかと思うが、2人…1 人と1匹は気にせずお茶を楽しんでいる。

『ミヤビ様、我らが奴らにしてやる事は、補助魔法をかけてやったり、アドバイスをしてやる程度で十分なのです。すでに施設の設計図は渡してありますし、奴らは勉強熱心です。一部は獣人族の大工に弟子入りして技術を盗んできたと聞いております』

いつの間にそんな事をしていたのか…というか、技術を盗むの早くない!?

『ミヤビ様の眷族なのですから、優秀ですよ』

珍獣達はハイスペック集団だった…。
確かに天空神殿でのパーティーの時でも、習った事はすぐに覚えていたっけ。

「みーちゃん、みーちゃんの能力は確かに万能だけどね、やりたいって言ってる事を全部叶えてあげてたらやりがいがなくなっちゃうでしょ? そんな人生楽しくないよ。
だから、みーちゃんは、これがやりたいっていったら、まずは自分でやってごらんって機会を与えてあげるだけでいいの」

トモコがやはりまともな事を言うので、少々驚きながら珍獣達を見た。
皆大変そうだが、嬉しそうに、楽しそうに働いている。

「やりがい…か」
「そうそう。勿論力を使ったらダメってわけじゃないよ? 使えるものは使わないと損だし! 」

フンッと鼻息荒く力説するトモコを呆れた目で見るヴェリウス。

『大きすぎる力は、時に人々を不幸にします。その為に我らは人と住み分けて暮らしているのです。人族を伴侶としたミヤビ様は、これから人間との関わりも多くなる事でしょう。だからこそ、“力”の使い方に慎重になっていただきたいのです』

ヴェリウスの言っている事は分かる。私の“力”は世界の創造すら容易なのだ。こんな力が人間に利用されればどうなるかわからない。

「ま、大丈夫だよ! みーちゃんには私達が居るから、おかしな事にはならないよっ」
「主様にはショコラがいますっ」
「神王様にはオレらもいるっス!!」
「そうですよ神王様! 私達は神王様を御守りする為に生まれたのですから!」

トモコとショコラの後に続いて、作業しながら聞いていたであろう珍獣達が口々にそう言って笑っている。

1人で丸太を20本程まとめて抱え移動していたり、ロードより大きな岩を何個もお手玉するように運んでいるこの珍獣達なら、頼もしいなとつられて笑ってしまった。

『ゴホンッ 勿論私も御守りしますが、慎重になるにこしたことはありませんので』

ビタンッビタンッと尻尾を座っている椅子にぶつけ、面白くない、というような表情で良い募る、素直になれない所が可愛いワンちゃんだ。

「フフッ 分かってるよヴェリウス。ありがとう」
『っ私が一番、ミヤビ様を想っておりますので!!』

今度は尻尾をブンッブンッと左右に振り、耳をピーンと立てている。

「それは聞き捨てなりませんなぁ。我々とて、神王様への思いは一番と自負しておりますので」

ホホホッと珍獣達の中で一番年長のおじいちゃんが、朗らかに笑いながら言ったのを皮切りに、皆が我も我もと私への思いを口々に言い始めたのだ。
いや、嬉しいけどね…少し落ち着こうか。


◇◇◇


翌日には家が何棟も建っており、すでに牧歌的な村の様相が見えつつあった。

家は木で出来ており、立派な二階建てのログハウスでファンタジー感が出ていて可愛らしい。
玄関付近にはデフォルメされたフクロウらしき鳥のモニュメントが鎮座しており、可愛らしさが増しているのだ。
器用すぎる。

「いや、早くない?」

呆然とその様子を見ていれば、昨日朗らかに笑っていたおじいちゃんが声を掛けてきた。今日も朗らかさは変わらない。

「トモコ様に頂きました設計図と、道具や材料のおかげでございます。この森の木々も、神王様が我らの村作りをお認め下さっているので加工時も協力的なのです」

木が協力的ってどういう事? もしかして、この森の木はあの有名な木のモンスター“トレント”だったとか!?

「噂をすればですなぁ。神王様、あちらで木材の加工をしております。良かったら御覧になりませんか?」
「あ、見ます」

“トレント”の加工をするというので見学させてもらう事にした。

加工を担当するのは細マッチョのお兄さんだった。ニッカポッカを履き、かんなのような道具を持った出で立ちはまんま大工である。
すると、お兄さんは木材の面を、かんな擬きを滑らせるようにして削った。その瞬間木材が発光し、発光が止むと綺麗に加工された柱になっていた。

え゛ーーー…

「このように、面を削っただけで木材が我々の意図を汲み取り、変化してくれるのです」


私の能力も大概だが、森の木々の能力も大概のようだ。
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