148 / 587
第三章
村作り開始
しおりを挟むトントンカンカンと森に軽快な音が鳴り響いている。
結局、村作りは自分達でやると言い出した珍獣達に、ヴェリウスもトモコも笑顔で頷き、事前に用意していたらしい道具と材料を渡していた。
どうやらヴェリウスもトモコも最初からそのつもりだったようだ。
『自分達で村作りせぬようであれば、深淵の森から追い出しておりました』
「そうそう。自分達の住む村は自分達で作らないと大切に出来ないからね~」
成る程。2人とも考えていたようだ。
村の広場に机と椅子を並べ、ティーセットを出してお茶をしている私達は邪魔ではないだろうかと思うが、2人…1 人と1匹は気にせずお茶を楽しんでいる。
『ミヤビ様、我らが奴らにしてやる事は、補助魔法をかけてやったり、アドバイスをしてやる程度で十分なのです。すでに施設の設計図は渡してありますし、奴らは勉強熱心です。一部は獣人族の大工に弟子入りして技術を盗んできたと聞いております』
いつの間にそんな事をしていたのか…というか、技術を盗むの早くない!?
『ミヤビ様の眷族なのですから、優秀ですよ』
珍獣達はハイスペック集団だった…。
確かに天空神殿でのパーティーの時でも、習った事はすぐに覚えていたっけ。
「みーちゃん、みーちゃんの能力は確かに万能だけどね、やりたいって言ってる事を全部叶えてあげてたらやりがいがなくなっちゃうでしょ? そんな人生楽しくないよ。
だから、みーちゃんは、これがやりたいっていったら、まずは自分でやってごらんって機会を与えてあげるだけでいいの」
トモコがやはりまともな事を言うので、少々驚きながら珍獣達を見た。
皆大変そうだが、嬉しそうに、楽しそうに働いている。
「やりがい…か」
「そうそう。勿論力を使ったらダメってわけじゃないよ? 使えるものは使わないと損だし! 」
フンッと鼻息荒く力説するトモコを呆れた目で見るヴェリウス。
『大きすぎる力は、時に人々を不幸にします。その為に我らは人と住み分けて暮らしているのです。人族を伴侶としたミヤビ様は、これから人間との関わりも多くなる事でしょう。だからこそ、“力”の使い方に慎重になっていただきたいのです』
ヴェリウスの言っている事は分かる。私の“力”は世界の創造すら容易なのだ。こんな力が人間に利用されればどうなるかわからない。
「ま、大丈夫だよ! みーちゃんには私達が居るから、おかしな事にはならないよっ」
「主様にはショコラがいますっ」
「神王様にはオレらもいるっス!!」
「そうですよ神王様! 私達は神王様を御守りする為に生まれたのですから!」
トモコとショコラの後に続いて、作業しながら聞いていたであろう珍獣達が口々にそう言って笑っている。
1人で丸太を20本程まとめて抱え移動していたり、ロードより大きな岩を何個もお手玉するように運んでいるこの珍獣達なら、頼もしいなとつられて笑ってしまった。
『ゴホンッ 勿論私も御守りしますが、慎重になるにこしたことはありませんので』
ビタンッビタンッと尻尾を座っている椅子にぶつけ、面白くない、というような表情で良い募る、素直になれない所が可愛いワンちゃんだ。
「フフッ 分かってるよヴェリウス。ありがとう」
『っ私が一番、ミヤビ様を想っておりますので!!』
今度は尻尾をブンッブンッと左右に振り、耳をピーンと立てている。
「それは聞き捨てなりませんなぁ。我々とて、神王様への思いは一番と自負しておりますので」
ホホホッと珍獣達の中で一番年長のおじいちゃんが、朗らかに笑いながら言ったのを皮切りに、皆が我も我もと私への思いを口々に言い始めたのだ。
いや、嬉しいけどね…少し落ち着こうか。
◇◇◇
翌日には家が何棟も建っており、すでに牧歌的な村の様相が見えつつあった。
家は木で出来ており、立派な二階建てのログハウスでファンタジー感が出ていて可愛らしい。
玄関付近にはデフォルメされたフクロウらしき鳥のモニュメントが鎮座しており、可愛らしさが増しているのだ。
器用すぎる。
「いや、早くない?」
呆然とその様子を見ていれば、昨日朗らかに笑っていたおじいちゃんが声を掛けてきた。今日も朗らかさは変わらない。
「トモコ様に頂きました設計図と、道具や材料のおかげでございます。この森の木々も、神王様が我らの村作りをお認め下さっているので加工時も協力的なのです」
木が協力的ってどういう事? もしかして、この森の木はあの有名な木のモンスター“トレント”だったとか!?
「噂をすればですなぁ。神王様、あちらで木材の加工をしております。良かったら御覧になりませんか?」
「あ、見ます」
“トレント”の加工をするというので見学させてもらう事にした。
加工を担当するのは細マッチョのお兄さんだった。ニッカポッカを履き、かんなのような道具を持った出で立ちはまんま大工である。
すると、お兄さんは木材の面を、かんな擬きを滑らせるようにして削った。その瞬間木材が発光し、発光が止むと綺麗に加工された柱になっていた。
え゛ーーー…
「このように、面を削っただけで木材が我々の意図を汲み取り、変化してくれるのです」
私の能力も大概だが、森の木々の能力も大概のようだ。
21
お気に入りに追加
2,538
あなたにおすすめの小説
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。
異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜
くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。
いや、ちょっと待て。ここはどこ?
私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。
マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。
私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ!
だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの!
前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
これは未来に続く婚約破棄
茂栖 もす
恋愛
男爵令嬢ことインチキ令嬢と蔑まれている私、ミリア・ホーレンスと、そこそこ名門のレオナード・ロフィは婚約した。……1ヶ月という期間限定で。
1ヶ月後には、私は大っ嫌いな貴族社会を飛び出して、海外へ移住する。
レオンは、家督を弟に譲り長年片思いしている平民の女性と駆け落ちをする………予定だ。
そう、私達にとって、この婚約期間は、お互いの目的を達成させるための準備期間。
私達の間には、恋も愛もない。
あるのは共犯者という連帯意識と、互いの境遇を励まし合う友情があるだけ。
※別PNで他サイトにも重複投稿しています。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜
波間柏
恋愛
仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。
短編ではありませんが短めです。
別視点あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる