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第三章

村を創ろう!!

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翌日、ウチの裏手から少し距離をあけた場所にやって来た私とトモコとヴェリウスは、鬱蒼と茂る木々を見上げていた。

「みーちゃん、ここに“村”を創るの?」
『ここならばミヤビ様の家に近いので、奴らも喜ぶ事でしょう』

1人と1匹が心なしかウキウキしながら話しかけてくるので頷く。

「本当は開けた場所の方が良いんだけど、ウチの近くだと無いからね~」

大きな木々達は、昼間なのに不気味さすら感じさせるほど葉を生い茂らせて、空を覆っている。
ウチの周りは開けた場所なのでそんな事はないのだが、ここは影が差しジメジメしている。

「まずはこの木々達に村を創れるだけの空間を開けてもらおうかなぁ」
『木々を切るのですか?』

それでしたら、とばかデカイ氷の刃をパキパキという音と冷気を出して作っていくヴェリウス。

「あ、大丈夫だから。木は切らないよ」
『では…?』

私の言葉にパリン…と氷の刃を散らせ、首を傾げた。

「木々達に少し避けてもらうだけだよ」

そう言うやいなや、私の思った通りにそこが開けた場所となった。
別に木々を転移させたり無くしたりしたわけではない。ただ、村を創る空間を確保する分だけ森を拡張させて木々達がその分外側へ移動したのだ。つまりこの森が村一つ分広がった事になる。

実はこの森、というかこの世界、私の頭の中ではドローンで空の上から見たような映像が浮かび、土地を拡張したり移動したりを想像すれば現実でその通りになる。
ゲームのような感覚で色んなものを創ったり移動したりできるのだが、怖いのであまり使わないようにしていた能力の一つである。

『さすがは神王様…』

感心したような声で呟いたヴェリウスの瞳は、子供のようにキラキラと輝いていた。

「みーちゃんのステータスだけは見れないからなぁ。未だに能力の全容が見えないんだよね~」

トモコが勝手に人のステータスを見ようとしていた事が発覚した。

「トモコ、人のステータスを盗み見しようとするんじゃない」
「だって~“神王様”のステータスだよ。興味ない人いないでしょ」

大抵の人は興味ないんじゃないかなぁ?

「みーちゃんは他人に興味ないからそんな風に思うだけで、普通は興味津々だからね。
大体みーちゃんの事だから自分の能力も全部把握してないんでしょ。駄目だよ。強大な能力ほどきちんと把握してないと、恐ろしい事になるんだよ」

いや、ナチュラルに心を読むんじゃない。
しかも自分のステータスを見ていない事が何故バレた?

『ミヤビ様、トモコは阿呆ですが、一応言っている事は正しいです。今すぐではなくていいですが、近いうちに自身のステータスは確認しておきましょう』
「ヴェリーさん、みーちゃん1人で確認させたらよくわからない能力はスルーしちゃうからダメっ ヴェリーさんと私も一緒に確認作業した方が良いって」

トモコ…阿呆は認めてるんだな。

『確かにその通りだな。ではミヤビ様、近々ステータス確認をご一緒致しましょう』
「あ、ハイ。宜しくお願いシマス」

2人の押しの強さに負け、今まで面倒だと思ってしていなかったステータスの確認をする約束をさせられた。



『さて、次はどうしましょうか?』

目の前に開けた広場を眺めながら、尻尾をパタンパタンと鳴らし、上目遣いで伺ってくるウチのワンちゃんに笑みが漏れる。

「次はどんなイメージの村にするか、なんだよね」
「え? まだイメージ決めてなかったの?」

てっきりドラク○みたいな牧歌的な村にするかと思ってた~と話すトモコに、それでも良いんだけどね~と答えていると、

「主様ぁ~!!」

可愛らしい声がウチの方から聞こえてきた。
タタタッと軽快な足音と共に、お腹にタックルをかましてきた女の子。

「ショコラ、お帰り」

そう。ドラゴンの女の子、ショコラだ。

「ただいま戻りました~!」

今まで天空神殿で警備をしていたショコラを、今日の村創りの為にあらかじめ呼んでいたのだ。


「主様、言われた通り皆からどんな村にしたいか聞いて来ました!!」
「ありがとう」

あくまで珍獣達の村なので、ショコラにどんな村にしたいかを聞いてきてもらってきたのだ。
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