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第三章

記憶力って大切なんだよ

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結局騎士4人は、額を思いっきり床にぶつけて記憶の一部が飛んでいた。
私の事はさっぱりと忘れ、「俺達はここで一体何をしているんだ??」と混乱し、ロードをみて余計混乱したあげくに敬礼して帰っていった。

「ロードって偉い人だったんだねぇ」

王宮を歩けば皆から敬われ慕われているロードを何度も見て、そんな感想をもらせば、

「神王が何言ってんだ」

と呆れられた。
私は神王と呼ばれる種族の一般人だと言えば、そんな種族はねぇと言い切られた。

『“神王”様はこの世でただお一人。ミヤビ様だけです。例えミヤビ様に御子が出来ようと、御子は“神王”にはなり得ません』

ヴェリウスがそう言って私を見た。可愛すぎる様子に悶えそうになる。やはり犬は可愛い。

「“神王”ってのは人間の王族と違って世襲制じゃねぇんだな」

ヴェリウスの話にロードが加わった。興味を持ったようだ。

『その通り、“神王”とはその魂を持つ者にしかなれぬ。故に唯一無二なのだ』
「んじゃ、俺とミヤビの子は神族って扱いになんのか?」
『それは…今まで神王様が御子を作られた事は無いのでな…生まれてみねば分からぬ。恐らくはお主の種族…鬼神を継ぐだろうと考えられるが』

ヴェリウスとロードの会話が、私の子供が生まれる前提で話している為動揺してしまう。
王妃様の所でも子供の話が出たが、今まで自分が子供を生むなんて考えた事もなかった。
相手がいなかったからというのもあるが。

チラリとロードを盗み見れば、視線を感じたのかロードもこちらを見て目が合った。

「俺達の子供ガキの事は後々考えれば良いだろ。それより今は、その過程の事を考えねぇとな」

ニヤニヤしながらバカな事を言うエロゴリラに胡乱な目を向けていれば、「みーちゃん達みぃつけたーー!!」と言う声に脱力しかけた。


『馬鹿者。時間がかかり過ぎだ』

見た目だけは極上美少女のトモコに近づくと、尻尾でトモコのお尻をベシンッベシンッと叩き、師匠らしく説教を始めたヴェリウス。
制限時間ギリギリとはいえ、時間内に見つけたのに何で怒られるの!? という顔で助けを求めてくるトモコから目をそらす。

かくれんぼをしていた事をすっかり忘れていた。

『お主は気配察知能力をもっと向上させねば、守れるものも守れぬぞ!』

ガミガミと説教を続け、尻尾でお尻を百叩きする光景に薄目になってしまったのは言うまでもない。

「そういやぁ、明日っから忙しくなりそうでな…飯が作れそうにねぇんだ」

説教中にロードがそんな事を言い出したので驚いた。
普段は忙しくても、朝昼晩のご飯を作ってくれていたロードが、ご飯も作れない忙しさとは、家に帰れないと言っているのと同義なのだ。

「王宮に泊まり込み?」
「ちぃとばかしやる事があってな。寂しい思いをさせちまうな…」

それは大丈夫だが、師団長は大変だなぁと思う。

「(ロードはゴリラだから体力は大丈夫だと思うけど、)無理しないでね?」

その一言でロードは歓喜に震えているようだ。

「何か新婚夫婦の会話みてぇでいいな。ソレ」

新婚夫婦!? 何言ってんだ!! まだ結婚してないしっ こ、こ、恋人になったばかりだし!!

「ククッ 可愛い反応だなぁ。ミヤビ」
「っロードだってさっきから赤くなったりしてたでしょ!」

そんな言い合いをしていると、いつの間にか説教が終了していたらしいヴェリウスとトモコが呆れたような目でこっちを見ていた。

「このバカ夫婦、どうにかしてほしいんですけど」
『無理だな。人族のつがいとは一重にこのようなものだと理解する他ない』

スイマセンデシタ。


◇◇◇


明日といいながら、今日から王宮に泊まり込む事になったロードと別れ、深淵の森ウチへと帰って来た私達3人は、小さな家の小さなリビングでリラックスしながら明日の事を話していた。
当然明日は一日中ゴロゴロする気満々の私だったが、ランタンさんと魔神の少年が来るとの念話がヴェリウスに入ったらしく、ゴロゴロも諦めざるをえなくなった。

そういえば、ランタンさんに関して何か話題があった気がするが、何だっただろうか? トモコがキーワードだった気が…う~ん…思い出せない。
思い出せないという事は、そんなに重要な事じゃないんだろう。


そんな風に軽く流していたのだが、その翌日…あんな惨劇が起ころうとは、この時の私は思いもよらなかったのだ。
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