113 / 587
第三章
告白3 ~ロードside~
しおりを挟むロード視点です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「入るぜぇ」
王宮の無駄に長い廊下を足早に通り過ぎ、陛下の執務室の扉をノックして返事がある前に開き入る。
扉の前にいる護衛騎士はいつもの事だからと特に気にしてねぇ。
「お前ねぇ…俺国王なんだけど。わかってる? 返事の前に入って来ちゃうとか結構不敬だからね?」
いつも通り阿保丸出しのピンク色の髪をなびかせ、椅子に腰掛けたままキャンキャン吠える陛下のそばに大股で歩いていけば、事前に知らせてから来いだのなんだのとまだブツブツ言ってやがる。
「報告だ。フォルプローム国とバイリン国の動きがキナ臭ぇ」
話を切り出すと、今まで引っさげていた阿保面を真面目な表情に戻し俺を見上げた。
「反乱でも起きそうとか?」
「…まだ想定でしかねぇが、フォルプローム国はその反乱をおさえる為に戦争を起こそうとしている。バイリン国はそれに便乗する形で手を組んだ事が推測される」
「バカな!? 戦争!?」
身を乗り出してきた陛下の頭を鷲掴みにして、椅子に押し返し話を続ける。
「もし戦争が起これば、グリッドアーデン国は両国から挟み撃ちに合いそう遠くない内に侵略されるだろう。そうなれば次はこのルマンド王国だ」
「っ…人口の減少が著しい中、フォルプローム国とバイリン国を相手に戦争なんて出来るわけがない!! ただでさえ復興に精一杯だというのにっ」
例え戦争になったとしても今なら俺1人で殺れるだろうが、普通に考えれば人手不足の今、民をも兵として徴集しなければならない。
「それにグリッドアーデンは母上の故郷だ…侵略させるわけにはいかない」
「…さっきも言ったが、これはまだ想定の域を出ねぇ」
「ロード、この情報は一体……まさか君のつがいの…?」
陛下の言葉に頷くと、今入団テストを受けている青年の話を伝える。その青年が今の話の情報を持って来た事、人身売買の件等も話せば悪かった顔色がさらに悪くなっていく。
「ねぇ…その話、戦争云々の前に話すべき内容じゃないかな?」
「最重要事項から話すべきだろうが」
深い溜め息を吐いた陛下は、その青年とミヤビに会って話が聞きたいというが、ミヤビに会わせるのは断った。アイツをまた人間のゴタゴタに巻き込みたくはない。
青年と会う事も、俺が詳しく話を聞いてからの方が良いだろうと陛下の執務室を後にして訓練所へとやって来たのだが…。
「どうやって切り出そうか?」
「トモコが話すとかどうかな?」
「止めてよぉ!? ロードさんみーちゃんにしか甘くないんだから、みーちゃんが話して!」
「ロードが甘い!? あんなヤクザか鬼みたいな顔で睨んでくる男が甘い!?」
訓練所の入り口付近に何故かミヤビ達が居り、何やら俺に話さなければならない事があるらしく、どっちが話すのかで押し問答している。
しかし俺ぁミヤビに鬼みたいな顔で睨んだ事ぁねぇぞ。いつも甘やかしてんだろ。
「みーちゃん…」
トモコがこっちに気付きヤバイという顔で、俺の存在をミヤビに伝えようとしているが、ミヤビは全く気付いていない。
「もういっそのこと、黙っておくのはどうかな?」
俺に話さなければならない事を、ミヤビが黙っておくという選択肢を取った事にショックがでかかった。
俺はミヤビに信頼されてはいなかったのだろうか…。
「誰に何を黙っておくって?」
「いや、だからロードにリンの…ん? トモコいつから声変わりした?」
リン…ミヤビが気にしているあの男の事で、俺に言えない事があるのか?
何でだ…? 俺ぁオメェのつがいだろう。信頼してくれてねぇのか? それとも……リンって野郎に惹かれてんのか…っ
「俺に、何を、黙っておくって?」
俺の中で怒りなのか、絶望なのか、それとも嫉妬なのか、その全てなのか…ぐるぐると渦巻いて、目の前がどす黒く染まっていく気がする。
「と、トモコさん…もしかして私の後ろに、ろ、ろ、ロードさんとかいないデスよね!? いないと言って! お願いだから!!」
「居るよーーー!!!!」
「!? 離せみーちゃん!! 1人で大人しく逝ってくれよォォォ」
「ふざけんなぁ!! 死なばもろともじゃあぁぁぁ!! 離さんぞっ」
「ギャアーッ みーちゃんの後ろに鬼がァァァ!!!」
何でこっちを見てくれない?
何で俺から逃げようとする?
なぁ、
「ミヤビぃ、オメェは俺に黙って何をしようとしてんだぁ」
「何もしようとしてません」
俺を見てくれ。
「ほぅ……ならまずは、黙っていようと思った事を一字一句もらさず答えてもらおうか」
ミヤビ、
俺だけが、お前をこんなにも愛してんのか?
「さて、どっちが素直に答えてくれるかねぇ」
俺だけが……
「ハイ!! みーちゃんが、ステータスを見れるようになりました!!」
「ステータスだぁ? 何だそりゃあ」
「ハイ! ステータスとは、名前や年齢、さらにレベルやスキル、装備等の状態を数値化して表す事を言います!!」
「ほぅ、それがミヤビには見れるんだな」
「ハイであります!!」
「…で、そのステータスからあのガキの重要な何かが分かり、俺に黙っておこうとした、と?」
「そうであります!! さすがボス!! 理解が早い!!」
ステータスとかいうものが見れるようになったらしいミヤビは、リンという野郎の何かを俺に黙っているようだ。
「何がわかった?」
「え゛っと…」
トモコは答え辛いのか、ミヤビをチラリと見る。するとミヤビの口が開いた。
「リンが…」
こんな、無理矢理聞き出すような真似なんぞしたくねぇ。
俺は、こんな真似しなくてもすすんで頼ってもらえるようになりてぇんだ。
オメェが困ってるなら助けてやりてぇ…っ
オメェの為なら何でもしてやりてぇのに、なのにオメェは他の男を見てんのか…っ
「っ…お、怒ってらっしゃる?」
「怒ってねぇと思ってたのか?」
俺を見て欲しくて、ミヤビをこちらに向けたのが悪かったのか…。
「何でそんなに怒ってるのか分からない…」
「……」
怯えたように、不安そうに俺を見てくる彼女の表情に心が凍りついていく気がした。
0
お気に入りに追加
2,526
あなたにおすすめの小説
幼女公爵令嬢、魔王城に連行される
けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。
「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。
しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。
これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。
私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。
乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!
美月一乃
恋愛
前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ!
でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら
偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!
瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。
「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」
と思いながら
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。
乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ
弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は、たった今をもって解消させてもらう!!』
国のこれからを背負う若者たちが学院を卒業することを祝って開かれた舞踏会の日、めでたい筈のその席に響いた第一皇子の声を聞いた瞬間、私の頭にこの場面と全く同じ“ゲーム”の場面が再生された。
これ、もしかしなくても前世でやり込んでた乙女ゲームの終盤最大の山場、“断罪イベント”って奴じゃないですか!?やり方間違ったら大惨事のやつ!!
しかし、私セレスティア・スチュアートは貧乏領地の伯爵令嬢。容姿も社交も慎ましく、趣味は手芸のみでゲームにも名前すら出てこないザ・モブ of the モブ!!
何でよりによってこのタイミングで記憶が戻ったのか謎だけど、とにかく主要キャラじゃなくてよかったぁ。……なんて安心して傍観者気取ってたら、ヒロインとメインヒーローからいきなり悪役令嬢がヒロインをいじめているのを知る目撃者としていきなり巻き込まれちゃった!?
更には、何でかメインヒーロー以外のイケメン達は悪役令嬢にぞっこんで私が彼等に睨まれる始末!
しかも前世を思い出した反動で肝心の私の過去の記憶まで曖昧になっちゃって、どっちの言い分が正しいのか証言したくても出来なくなっちゃった!
そんなわけで、私の記憶が戻り、ヒロイン達と悪役令嬢達とどちらが正しいのかハッキリするまで、私には逃げられないよう監視がつくことになったのですが……それでやって来たのが既に悪役令嬢に攻略され済みのイケメン騎士様でしかも私の初恋の相手って、神様……これモブに与える人生のキャパオーバーしてませんか?
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜
くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。
いや、ちょっと待て。ここはどこ?
私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。
マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。
私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ!
だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの!
前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる