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第二章
とんでもないスイーツ
しおりを挟む「マカロンってのはどうだ?」
『なるほど。あやつにはぴったりの名だな』
「っぽいだろ。なぁ、ミヤビもそう思うよな~」
全っ然!!? むしろなんでそんな可愛らしい名前を選択した!?
ゴリラがなに、お洒落なOLが生まれたばかりの子犬に付ける名前トップ5を選んでんだよ!! しかもドラゴンの雄ぅ!! 更に変態だぞっ
『人族の男よ、ミヤビ様はマカロンを知らないだろう。この森には生息しておらんしな』
「お、そうかぁ」
生息? マカロンが生息って言った??
「ミヤビは見たことねぇか~」
「何??」
「マカロンってなぁ料理の名前みてぇなもんだな。マカローっつー鹿の一種で、デカイ動物なんだけどな。それを外で丸焼きにして、引きちぎって食うのをマカロンってんだ」
とんでもねぇマカロン出てきたよ!?
可愛らしいスイーツどこいった!?
『あのドラゴンにはぴったりでしょう。非常識さと適当さが』
ヴェリーちゃんどんだけ変態ドラゴンにイラついているんだ。
「んじゃ、決まりな。おーい、オメェの名前決まったぜ~」
興奮中の変態ドラゴンを見上げてロードが叫べば、《え~?》としまりのない顔で振り向く。
コイツがマカロンか……。
「お前は今日からマカロンな」
有無を言わさないロードにコテンと首を傾げ、私達を見る変態ドラ…マカロン。
《あの、もしかして僕の名前ですか?》
《あら。いいじゃない。貴方にお似合いの名前だわ。私も主様に名付けてもらいたい…》
《ええ!! 本当に似合ってる!? 他でもない君にそんな風に言ってもらえるなんて嬉しいなぁ~》
デレデレと箱入りドラゴンに尻尾を振っているが、風と振動が凄いからやめて欲しい。
しかし箱入りドラゴンが名付けに興味を持っている。確かに名前が無いと不便だろうけど、契約はなぁ…私の持ってる力、魔力じゃなくて神力だってヴェリウスが言ってたし。
じっと期待した瞳で私を見つめてくる箱入りドラゴンに耐えられなくなって話し掛ける。
「貴女にも名前を付けた方が良いよね。パトロールも頑張ってもらってるし…」
私の言葉を聞いた瞬間、箱入りドラゴンの瞳はキラキラと輝きだし《主様が名付けしてくれるのですか!?》と嬉しそうに羽を広げた。
『ミヤビ様! 水色を契約竜にする気ですか!?』
私達の会話を聞き慌てて遮ってきたヴェリウスに首を傾げる。やっぱりまずかったのだろうか?
『神王様の契約竜などと…っ 水色に何が起こるか予想も出来ません! 危険ですのでそれはお止めくださいっ』
あー…うん。ゴメンナサイ。
箱入りドラゴンは期待した分だけ項垂れて、羽も尻尾も垂れている。
「契約はしないから名前だけつけてあげちゃダメかな?」
あまりにも可哀想なのでヴェリウスにそう提案すると、しばし思索してから顔を上げた。
『ミヤビ様の場合、名前を付ける行為でも影響があるやもしれません…何しろそばにいるだけで水色はドラゴンに変異しましたし』
ええぇぇぇ!? 名前も付けちゃダメなの!? うわっものすごく凹んでる。箱入りドラゴンしょぼんとして丸まっちゃったよ…。
「ん~なら、ミヤビが考えた名前を俺が付けてやりゃあ問題ねぇだろ」
ロード!! ナイスアイディーア!!
「それっ そうしよう。それで良いよね?」
丸まった箱入りドラゴンに聞けば、ゆっくり立ち上がり顔をこちらに近付けてきた。
《はい!! 嬉しいです!! 私、幸せですっ》
涙声でそんな事をいうので、鼻頭を撫でてやれば嬉しそうに手にすり寄ってくる。
『…仕方ありませんね』
ハァと溜め息を吐くワンちゃんに、犬の溜め息はシュールだなと思いながら苦笑いをした。
「で、何て名前にするんだ?」
「え!? そ、そうだなぁ…」
何も考えてなかったので考えていると、
『名前は水色には聞こえない声で人族の男へ伝えて下さい。水色に聞こえるとミヤビ様が名付けをした事になるので』
そう言われたのでうなずいておく。
私が箱入りドラゴンの名前を考えている間にロードがマカロンとの契約を済ませ、マカロンはロードの乗り物となったのだ。
「うーん…よしっ決まったよ!!」
「おっ遂に決めたか」
考えている間に頭や頬にキスしてきたり、身体を撫でたりされていたが今は気にしないでおく。
「ロード、耳かして」
箱入りドラゴンに聞こえないようにロードの耳に顔を近付ける。嬉しそうにデレッとしているがまぁいい。
「あのねー…」
『ミヤビ様!? ちょっと待…っっ』
ロードに箱入りドラゴンの名前を耳打ちした刹那、ヴェリウスの慌てた声と同時に夜の森は光に包まれたのだ。
その光の中心に居たのは……箱入りドラゴンだった。
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