上 下
40 / 587
第二章

とんでもないスイーツ

しおりを挟む


「マカロンってのはどうだ?」
『なるほど。あやつにはぴったりの名だな』
「っぽいだろ。なぁ、ミヤビもそう思うよな~」

全っ然!!? むしろなんでそんな可愛らしい名前を選択した!?
ゴリラがなに、お洒落なOLが生まれたばかりの子犬に付ける名前トップ5を選んでんだよ!! しかもドラゴンの雄ぅ!! 更に変態だぞっ

『人族の男よ、ミヤビ様はマカロンを知らないだろう。この森には生息しておらんしな』
「お、そうかぁ」

生息? マカロンが生息って言った?? 

「ミヤビは見たことねぇか~」
「何??」
「マカロンってなぁ料理の名前みてぇなもんだな。マカローっつー鹿の一種で、デカイ動物なんだけどな。それを外で丸焼きにして、引きちぎって食うのをマカロンってんだ」

とんでもねぇマカロン出てきたよ!?
可愛らしいスイーツどこいった!?

『あのドラゴンにはぴったりでしょう。非常識さと適当さが』

ヴェリーちゃんどんだけ変態ドラゴンにイラついているんだ。

「んじゃ、決まりな。おーい、オメェの名前決まったぜ~」

興奮中の変態ドラゴンを見上げてロードが叫べば、《え~?》としまりのない顔で振り向く。
コイツがマカロンか……。

「お前は今日からマカロンな」

有無を言わさないロードにコテンと首を傾げ、私達を見る変態ドラ…マカロン。

《あの、もしかして僕の名前ですか?》
《あら。いいじゃない。貴方にお似合いの名前だわ。私も主様に名付けてもらいたい…》
《ええ!! 本当に似合ってる!? 他でもない君にそんな風に言ってもらえるなんて嬉しいなぁ~》

デレデレと箱入りドラゴンに尻尾を振っているが、風と振動が凄いからやめて欲しい。

しかし箱入りドラゴンが名付けに興味を持っている。確かに名前が無いと不便だろうけど、契約はなぁ…私の持ってる力、魔力じゃなくて神力だってヴェリウスが言ってたし。

じっと期待した瞳で私を見つめてくる箱入りドラゴンに耐えられなくなって話し掛ける。

「貴女にも名前を付けた方が良いよね。パトロールも頑張ってもらってるし…」

私の言葉を聞いた瞬間、箱入りドラゴンの瞳はキラキラと輝きだし《主様が名付けしてくれるのですか!?》と嬉しそうに羽を広げた。

『ミヤビ様! 水色を契約竜にする気ですか!?』

私達の会話を聞き慌てて遮ってきたヴェリウスに首を傾げる。やっぱりまずかったのだろうか?

『神王様の契約竜などと…っ 水色に何が起こるか予想も出来ません! 危険ですのでそれはお止めくださいっ』

あー…うん。ゴメンナサイ。

箱入りドラゴンは期待した分だけ項垂れて、羽も尻尾も垂れている。

「契約はしないから名前だけつけてあげちゃダメかな?」

あまりにも可哀想なのでヴェリウスにそう提案すると、しばし思索してから顔を上げた。

『ミヤビ様の場合、名前を付ける行為でも影響があるやもしれません…何しろそばにいるだけで水色はドラゴンに変異しましたし』

ええぇぇぇ!? 名前も付けちゃダメなの!? うわっものすごく凹んでる。箱入りドラゴンしょぼんとして丸まっちゃったよ…。

「ん~なら、ミヤビが考えた名前を俺が付けてやりゃあ問題ねぇだろ」

ロード!! ナイスアイディーア!!

「それっ そうしよう。それで良いよね?」

丸まった箱入りドラゴンに聞けば、ゆっくり立ち上がり顔をこちらに近付けてきた。

《はい!! 嬉しいです!! 私、幸せですっ》

涙声でそんな事をいうので、鼻頭を撫でてやれば嬉しそうに手にすり寄ってくる。

『…仕方ありませんね』

ハァと溜め息を吐くワンちゃんに、犬の溜め息はシュールだなと思いながら苦笑いをした。

「で、何て名前にするんだ?」
「え!? そ、そうだなぁ…」

何も考えてなかったので考えていると、

『名前は水色には聞こえない声で人族の男へ伝えて下さい。水色に聞こえるとミヤビ様が名付けをした事になるので』

そう言われたのでうなずいておく。
私が箱入りドラゴンの名前を考えている間にロードがマカロンとの契約を済ませ、マカロンはロードの乗り物となったのだ。



「うーん…よしっ決まったよ!!」
「おっ遂に決めたか」

考えている間に頭や頬にキスしてきたり、身体を撫でたりされていたが今は気にしないでおく。

「ロード、耳かして」

箱入りドラゴンに聞こえないようにロードの耳に顔を近付ける。嬉しそうにデレッとしているがまぁいい。

「あのねー…」
『ミヤビ様!? ちょっと待…っっ』


ロードに箱入りドラゴンの名前を耳打ちした刹那、ヴェリウスの慌てた声と同時に夜の森は光に包まれたのだ。

その光の中心に居たのは……箱入りドラゴンだった。
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。 「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。 しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。 これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。

乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ

弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は、たった今をもって解消させてもらう!!』  国のこれからを背負う若者たちが学院を卒業することを祝って開かれた舞踏会の日、めでたい筈のその席に響いた第一皇子の声を聞いた瞬間、私の頭にこの場面と全く同じ“ゲーム”の場面が再生された。 これ、もしかしなくても前世でやり込んでた乙女ゲームの終盤最大の山場、“断罪イベント”って奴じゃないですか!?やり方間違ったら大惨事のやつ!!  しかし、私セレスティア・スチュアートは貧乏領地の伯爵令嬢。容姿も社交も慎ましく、趣味は手芸のみでゲームにも名前すら出てこないザ・モブ of the モブ!!  何でよりによってこのタイミングで記憶が戻ったのか謎だけど、とにかく主要キャラじゃなくてよかったぁ。……なんて安心して傍観者気取ってたら、ヒロインとメインヒーローからいきなり悪役令嬢がヒロインをいじめているのを知る目撃者としていきなり巻き込まれちゃった!? 更には、何でかメインヒーロー以外のイケメン達は悪役令嬢にぞっこんで私が彼等に睨まれる始末! しかも前世を思い出した反動で肝心の私の過去の記憶まで曖昧になっちゃって、どっちの言い分が正しいのか証言したくても出来なくなっちゃった! そんなわけで、私の記憶が戻り、ヒロイン達と悪役令嬢達とどちらが正しいのかハッキリするまで、私には逃げられないよう監視がつくことになったのですが……それでやって来たのが既に悪役令嬢に攻略され済みのイケメン騎士様でしかも私の初恋の相手って、神様……これモブに与える人生のキャパオーバーしてませんか?

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ
恋愛
 女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。  大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。  親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。 「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」  その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。  召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。 「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」  今回は無事に帰れるのか…?  ご都合主義です。  誤字脱字お許しください。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

処理中です...