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第二章
日常からの…
しおりを挟む結局自分がヴェリウスから子供扱いをされているのかどうか聞けなかった。そんな勇気はない。
38才にもなって子供扱い、しかも幼児扱いされてるかもしれないなんてとても受け入れられない。
トカゲ型魔獣のドラゴン化の話を聞いた後は、ただ黙々と薬を作ったり薄い本を妄想(創)作して読んだり、マンガをベッドに転がりながら見たりといつものように過ごした。
日も落ち、家の外は真っ暗で慣れたとはいえ、やはり森だけあって薄気味悪く外に出たいとは思えない。
「帰ったぞ~」
ソファに寝転び窓の外をチラッと見て、テレビを見つつお茶に手を伸ばしていたら、玄関の方からロードの声がした。
王都のロードの部屋とウチの玄関を繋げたので、帰って来るのは当然玄関からだ。靴も脱いでもらえるしね。
「雅、寂しかっただろ」
リビングの扉を開けた途端そんな事をのたまうゴリラに胡乱な目を向け、テレビに戻す。今一番いい所なのだ。暴れん坊な将軍様の悪者退治が山場を迎えているのだから。
「おい、テメェ俺というものがありながらまたそんなもん観てんのか。いい加減そのテレビとかいう奇っ怪なもん潰すぞ」
地を這うような声を出しながら抱き締めてくるのでテレビが見えない。せっかくの将軍様の勇姿が見えない!
「ご飯ーっ お腹空きましたー!! ロードの手料理が食べたいです!!」
テレビを壊されるのも困るので、出来るだけ穏便に離れるよう、甘えている風にご飯を要求する。
決して、お母さんご飯まだ~? という事ではない。
「仕方ねぇなぁ。俺の雅は」
ヤクザみたいな強面がデレると気持ち悪いデス。
「ならつがいの為に美味い飯作るかっ」
抱き込まれて散々匂いを嗅がれ、髪や額やらにキスをされてやっと解放される。
髪の毛がぐちゃぐちゃだ。
こんな事をされても何も言わないのには理由がある。
森に帰ってきて初日に同じような事をされ、人生初の額ちゅうに驚いて叫んだ上殴ったら、自殺でもするんじゃないかって位落ち込んだのだ。
その後慰めるのにどんだけ労力を使い、精神力を削ったか…。
そんなわけで後々面倒な事にならない為にも、嫌でなければ好きにさせている。
幸い嫌がる事はされないし、唇を食われたのはあの時の一回きりだ。
キッチンへ行ったロードを見送ると、DVDを早戻しして将軍様の勇姿を観賞する。
この殺陣とか本当に見惚れる。
そりゃロードの戦いは桁違いの大迫力だけど、将軍様の品のある刀さばきは特別なのだ。
『ミヤビ様、ただいま戻りました』
今度はヴェリウスの声が窓の外から聞こえ、ソファから腰をあげる。
「お帰りー」
ガラガラと窓を開ければ、ひょいっと中に入ってくるので尻尾を挟まないように閉める。
「お腹いっぱい食べた?」
晩御飯を狩りに行っていたヴェリウスに聞けば、フワフワの尻尾をブンブン振って『はい!』と答えるので、首の周りをわしゃわしゃと掴むように撫でる。
気持ち良さそうに喉をさらし、そのうちにドテンとお腹を見せるように倒れてブラッシングをねだり始める。
「ヴェリーちゃんは可愛いね~」
お腹を撫でて毛並みを整えながらしみじみつぶやく。
いつの間にかDVDは終わっていたのでプレイヤーとテレビ両方の電源を落とした。
ヴェリウスのお手入れ用BOXからブラシを取り出し、耳と耳の間からまずブラッシングしていく。
『人族の男は帰って来ているようですね』
伏せの体勢に変わり、ブラッシングにうっとりしつつキッチンの方を見てつぶやく。
背中にブラシをやると、前足をクロスさせその上に顎をのせてリラックスし始めた。
「ご飯作ってくれてるよ」
耳をピクピク動かして、細めていた目を開くので気持ち良くなかったかなと思いブラシを移動させた。
『ミヤビ様、お腹が空いているのでしたら私が狩ってきた獲物を差し上げます。すぐに召し上がれる新鮮なものですよ!』
「遠慮シマス…」
生肉だものね。
『固くて召し上がりにくいようでしたら、私が先に噛み砕いてからお渡ししますので大丈夫ですよ』
全く大丈夫じゃない。
「気持ちは嬉しいけど、まだそんなにお腹減ってないから」
丁重ににお断りをしてロードのご飯を待つ。
半ばご飯から話をそらすようにブラッシングを丁寧にやっていた為、ご飯が出来る頃にはいつもよりふわサラ艶々になっていた。
相変わらずの極上飯に舌鼓を打ちながら食し、デザートまで平らげたその時、
ドンッ
と大きな音がし、家が縦に揺れた。
地震か!? と思ったが揺れは一瞬で、何だったんだと向かいのロードを見れば、険しい顔で外を見ていた。
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