177 / 189
番外編 〜 ミーシャ 〜
番外編 〜 ミーシャの日常 授業参観編3 〜
しおりを挟むミーシャ視点
「馬車で来る親御さんには、出来るだけご家族で乗り合わせて、少ない台数で、出来れば1台で来ていただくようお願いしてもらいたい。当日は保護者が入れる場所は制限させていただくので───」
ウチはウォルトやミランダも来るだろうけど、お父様は私とお母様以外の女性とは、例え使用人であっても絶対同乗しないのだ。馬車は1台でというが、難しいかもしれない。
「また、馬車を2台以上使用する場合は、予め申請すること。わかったかな、ロペス君」
「承知いたしました。後ほど申請させていただきます」
「では、後で職員室に申請用紙を取りに来ること」
申請用紙をもらいに行かないといけないのか。
お昼休みに職員室に行かなければ……。
と、ランチ前に職員室に向かったのだけど……、
「ではロペス君、この申請用紙は必ず保護者のサインを貰ってから、参観日の前日までには提出するように」
「はい。ありがとう存じます」
ロペス侯爵令嬢が先に先生と話していた。
申請書には保護者のサインがいる……? それ、提出したらディバインだって先生にバレるんじゃ……。
「ん? アボット君、どうした。授業でわからない所でもあったのかね?」
ロペス侯爵令嬢がチラリと私を見た後、会釈をして職員室から出ていくと、先生が私に気付きどうしたと話しかけてきた。
先生の言うアボットとは、アカデミーで男爵令嬢の家名として使っている。
「先生、馬車の台数の申請書をいただきに来ました」
「君が?」
確かに貧乏男爵家の設定だけど、そんなもの必要ないだろうという感情が露骨に伝わってきすぎではないだろうか。
「アボット君、申請用紙は遊びで使用するものではないのだよ。先生をからかいに来たのなら、出て行きたまえ」
「からかいに来たわけではなく、私の両親とは別の馬車に、使用人が乗って来ると思うので、2台になりそうなんです」
「アボット男爵家はそれほど裕福ではないと、君から聞いたと思うのだが?」
先生は落ち着いた声で、どういう事なのだろうかと私を見る。
「それが、馬車を2台も所有し、さらには使用人も連れて来るなど、到底信じらることではない。君は、私が平民出身だから何もわからないと思って、からかっているのか……??」
そんなことは思ってないのに……。
「アボット君は真面目だと思っていたが、このような冗談も言うのだね。私も楽しい冗談には付き合ってやりたいが、すまないね。参観日の準備で忙しくてね。君の冗談に付き合っている暇がないのだよ」
結局、申請用紙はもらえず追い出されてしまった。
「───それで、用紙を貰えなかったの!?」
「それは先生ともう一度話す必要がありそうだけど……」
「そんな風に言われたら、担任にはもう話せないよね」
お弁当を持って、中庭のガゼボに集まっていた三人に先ほどあったことを言えば、うーん、と一緒に考えてくれる。頼もしい友人たちだ。
「お父様とお母様には変装して来てもらう予定だけど、馬車は絶対2台必要だし……」
「ん? ねぇミーシャ……、変装って何!? 聞き捨てならないことを言ってない!?」
「氷の大公様と、女神様を変装させる!?」
「ミーちゃんったら、冗談ばっかり~」
「?」
冗談など一言も言っていないが、コニーは引きつったように笑っているし、クロエもナツィーもぎょっとしている。
「ミーシャ、ディバイン公爵家にある馬車って、最新型しかなさそうだけど?」
「そういえば、最近変えたばっかり……」
「でしょうね!」
「家紋が入っていないタイプを使用するとしても、最新型なんて乗ってるのは、皇族と公爵家くらいのものだと思うよ……」
「限定モデルだもんね」
コニーの言葉に動揺する。
「え、ウチの馬車、限定モデルなの……?」
「なんなら、馬からして違うよ……。気付いてなかったの?」
今度はナツィーが苦笑いしているではないか。
「じゃあ……変装しても、馬車でバレるってこと……?」
「「「そうだね」」」
えぇ……
「だからね、変装して来るにしても、学校側には連絡しておいた方が良いと思うの」
「クロエ、それは学校側に伝えた時点で大事になりそうだけど……」
「ナツィー、どっちみち大事になるんだから、先に伝えるべきだわ!」
友人たちは、そう提案してくれるが、ディバイン公爵が来ますなんて言う方が信じてもらえない気がする……。
お父様から、学校側に言ってもらうしかないのかな……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「皆、大変だ! 今度の参観日に、皇帝陛下と皇后陛下が、アカデミーに来られるらしい!! 職員はこれから、緊急会議をするからミーティングルームに集合するようにと、学長からの伝言だ!」
「「「「エェーーーー!?」」」」
707
お気に入りに追加
6,331
あなたにおすすめの小説
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 11/22ノベル5巻、コミックス1巻刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロが苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?
のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。
両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。
そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった…
本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;)
本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。
ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
異世界で狼に捕まりました。〜シングルマザーになったけど、子供たちが可愛いので幸せです〜
雪成
恋愛
そういえば、昔から男運が悪かった。
モラハラ彼氏から精神的に痛めつけられて、ちょっとだけ現実逃避したかっただけなんだ。現実逃避……のはずなのに、気付けばそこは獣人ありのファンタジーな異世界。
よくわからないけどモラハラ男からの解放万歳!むしろ戻るもんかと新たな世界で生き直すことを決めた私は、美形の狼獣人と恋に落ちた。
ーーなのに、信じていた相手の男が消えた‼︎ 身元も仕事も全部嘘⁉︎ しかもちょっと待って、私、彼の子を妊娠したかもしれない……。
まさか異世界転移した先で、また男で痛い目を見るとは思わなかった。
※不快に思う描写があるかもしれませんので、閲覧は自己責任でお願いします。
※『小説家になろう』にも掲載しています。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
【完結】わたしはお飾りの妻らしい。 〜16歳で継母になりました〜
たろ
恋愛
結婚して半年。
わたしはこの家には必要がない。
政略結婚。
愛は何処にもない。
要らないわたしを家から追い出したくて無理矢理結婚させたお義母様。
お義母様のご機嫌を悪くさせたくなくて、わたしを嫁に出したお父様。
とりあえず「嫁」という立場が欲しかった旦那様。
そうしてわたしは旦那様の「嫁」になった。
旦那様には愛する人がいる。
わたしはお飾りの妻。
せっかくのんびり暮らすのだから、好きなことだけさせてもらいますね。
地味薬師令嬢はもう契約更新いたしません。~ざまぁ? 没落? 私には関係ないことです~
鏑木 うりこ
恋愛
旧題:地味薬師令嬢はもう契約更新致しません。先に破ったのはそちらです、ざまぁ?没落?私には関係ない事です。
家族の中で一人だけはしばみ色の髪と緑の瞳の冴えない色合いで地味なマーガレッタは婚約者であったはずの王子に婚約破棄されてしまう。
「お前は地味な上に姉で聖女のロゼラインに嫌がらせばかりして、もう我慢ならん」
「もうこの国から出て行って!」
姉や兄、そして実の両親にまで冷たくあしらわれ、マーガレッタは泣く泣く国を離れることになる。しかし、マーガレッタと結んでいた契約が切れ、彼女を冷遇していた者達は思い出すのだった。
そしてマーガレッタは隣国で暮らし始める。
★隣国ヘーラクレール編
アーサーの兄であるイグリス王太子が体調を崩した。
「私が母上の大好物のシュー・ア・ラ・クレームを食べてしまったから……シューの呪いを受けている」
そんな訳の分からない妄言まで出るようになってしまい心配するマーガレッタとアーサー。しかしどうやらその理由は「みなさま」が知っているらしいーー。
ちょっぴり強くなったマーガレッタを見ていただけると嬉しいです!
継母ができました。弟もできました。弟は父の子ではなくクズ国王の子らしいですが気にしないでください( ´_ゝ`)
てん
恋愛
タイトル詐欺になってしまっています。
転生・悪役令嬢・ざまぁ・婚約破棄すべてなしです。
起承転結すらありません。
普通ならシリアスになってしまうところですが、本作主人公エレン・テオドアールにかかればシリアスさんは長居できません。
☆顔文字が苦手な方には読みにくいと思います。
☆スマホで書いていて、作者が長文が読めないので変な改行があります。すみません。
☆若干無理やりの描写があります。
☆誤字脱字誤用などお見苦しい点もあると思いますがすみません。
☆投稿再開しましたが隔日亀更新です。生暖かい目で見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる